脳転移を有するHER2遺伝子変異陽性肺癌に対するヘルネクシオス®の有用性(静止画)

サイトへ公開:2026年03月19日 (木)

ご監修:上月 稔幸 先生(高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 教授)

HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)では、脳転移の発生率が高いことが報告されています1)
本コンテンツでは、ドライバー遺伝子変異/転座陽性のIV期非小細胞肺癌の脳転移を有する症例に対する治療の考え方及びBeamion LUNG-1試験の第Ib相2,3)における脳転移症例のデータについて、高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 教授 上月 稔幸 先生にご解説いただきました。

1)Offin M. et al.: Cancer 2019; 125(24): 4380-4387.
2)社内資料:国際共同第I相試験(Beamion LUNG-1)[承認時評価資料]
3)Heymach JV. et al.: N Engl J Med 2025; 392(23): 2321-2333. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われた。

脳転移を有する症例に対する治療の考え方

ガイドライン4-6)では、ドライバー遺伝子変異/転座陽性のIV期非小細胞肺癌に対する全身治療として、最適な分子標的療法を選択し、脳転移に対しては定位放射線照射(SRSなど)や全脳照射、外科治療といった局所療法を行う旨が記載されています。
肺癌診療ガイドライン2025年版では、脳転移の個数、症状の有無にかかわらず、放射線治療(定位放射線照射、全脳照射)が推奨されていますが、無症候性の場合には薬物療法も推奨されています7)
また、EANO-ESMO Clinical Practice Guidelinesでは、「CNS病変での奏効は、TKIの効力に加え、血液脳関門の透過性やP糖タンパク(P-gp)との相互作用などの影響を受ける。また、TKIの中では、EGFR-TKIやALK-TKIなどはCNS活性を有する」と記載されています5)。 

4)日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン2025年版
https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/(2026年2月現在)
5)EANO-ESMO Clinical Practice Guidelines. Rhun EL. et al.: Ann Oncol. 2021; 32(11): 1332-1347.
6)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Non-Small Cell Lung Cancer.
7)日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン2025年版 IV. 転移など各病態に対する治療 2. 脳転移
https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/1/4/250104020100.html(2026年2月現在)

ヘルネクシオス®の効能又は効果、用法及び用量

ヘルネクシオス®は、Beamion LUNG-1試験において有効性と安全性が検討され、日本では2025年9月に承認を取得しました。 

ヘルネクシオス®の作用機序

ヘルネクシオス®は、経口投与可能な新規のHER2チロシンキナーゼ阻害剤です3)
エクソン20挿入変異等を有するHER2のチロシンキナーゼ活性を阻害し、下流のシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています8)
HER2選択性を高めた特性により、ヘルネクシオス®は、臨床においてもHER2遺伝子変異陽性NSCLCの腫瘍増殖及び疾患進行を抑制することが可能となります。

3)Heymach JV. et al.: N Engl J Med 2025; 392(23): 2321-2333.   本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われた。
8)ヘルネクシオス®錠60mg 電子添文 2025年11月改訂(第2版)    

ここからは、ヘルネクシオス®の有効性と安全性を評価した「国際共同第I相試験Beamion LUNG-1試験」をご紹介します。

試験概要

Beamion LUNG-1試験の第Ib相(用量拡大パート)では、進行/転移性のHER2変異陽性NSCLC患者を対象に、ヘルネクシオス®の有効性と安全性を評価しました。
同試験では、日本を含む18ヵ国で241例が登録され、そのうち日本人患者は26例でした。
同試験の第Ib相用量拡大パートのうちコホート1では、まず初めに用量最適化相として、治療歴のあるHER2変異陽性NSCLC患者を、ヘルネクシオス®120mg群又は240mg群にランダムに割り付け、治療を実施しました。

その後、用量最適化相のデータを踏まえて、120mgを推奨用量とし、コホート1を含むすべてのコホートで240mg群への組入れは中止となりました。 

患者背景

年齢中央値は62歳で、スクリーニング時に脳転移を有する患者は75例中28例(37.3%)、二次治療の患者は46例(61.3%)含まれていました。 

 

試験結果

主要評価項目である客観的奏効率(ORR※1)は66.7%(50/75例、97.5%CI:53.8-77.5)と事前に規定された基準(ORR 30%)を上回りました(片側p<0.0001、検証的な解析結果、1標本z検定)。
また、副次評価項目である病勢コントロール率(DCR※2)は92.0%でした。
※1:ORR=CR+PR、※2:DCR=CR+PR+SD

FDAの指示に基づき、コホート1の全患者の6ヵ月以上の奏効期間フォローアップデータ及び3ヵ月安全性データを更新するため、追加解析が実施されました。
追加解析の結果、客観的奏効率(ORR)は70.7%(53/75例、95%CI:59.6-79.8)でした。 

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は12.4ヵ月でした。

スクリーニング時にCNS領域の病変がRANO-BMで評価可能な安定した脳転移を有する患者27例のCNS病変での客観的奏効率(ORR)は40.7%(11/27例、95%CI:24.5-59.3)でした。
※:非標的病変又は測定不能病変を含めて、RANO-BMで評価した病変を有する。

RANO-BM(Response Assessment in Neuro-Oncology brain metastases)とは、脳転移における腫瘍の奏効及び進行を評価するための基準です。 

スクリーニング時に脳転移ありの患者28例のRECISTに基づく客観的奏効率(ORR)(CNS病変及び非CNS病変の両方を考慮に入れる)は64.3%(18/28例、95%CI:45.8-79.3)、脳転移なしの患者47例のORRは74.5%(35/47例、95%CI:60.5-84.7)でした。

ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された有害事象は75例中73例(97.3%)に認められました。
主な有害事象は下痢(54.7%)、AST増加(24.0%)、発疹(22.7%)、ALT増加(21.3%)などでした。

ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された重篤な有害事象は3例(4.0%)に認められ、ALT増加、AST増加が報告されました。
ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された死亡に至った有害事象は報告がありませんでした。

中止に至った有害事象は2例(2.7%)に認められ、ALT増加、AST増加、血中ALP増加、GGT増加及び発熱が報告されました。
休薬に至った有害事象は25例(33.3%)に認められ、2例以上にみられた有害事象はAST増加、駆出率減少、発疹、ALT増加及び嘔吐が報告されました。
減量に至った有害事象は5例(6.7%)に認められ、AST増加、ALT増加、好中球数減少、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、GGT増加、高トランスアミナーゼ血症及び薬物性肝障害の疑いが報告されました。 

【上月先生のお⾔葉】

脳転移に対しては、定位放射線照射(SRSなど)や全脳照射、外科治療といった局所療法が治療の基本となります。肺癌診療ガイドライン2025年版では、脳転移の個数、症状の有無にかかわらず、放射線治療(定位放射線照射、全脳照射)が推奨されていますが、無症候性の場合には薬物療法も推奨されており、これらは脳転移巣のサイズ・個数・部位、医療状況などをもとに放射線腫瘍医と十分検討のうえで判断されるべきと記載されています7)
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の薬物療法においては、適切な分子標的療法を選択することが重要です。Beamion LUNG-1試験の第Ib相の結果から、ヘルネクシオス®は脳転移症例に対する治療選択肢の一つとして期待されます。
本コンテンツが、先生方の日常診療における治療方針決定の一助となれば幸いです。

7)日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン  2025年版 IV. 転移など各病態に対する治療 2. 脳転移
https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/1/4/250104020100.html(2026年2月現在)

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