代謝性疾患

代謝性疾患とは

サイトへ公開:2026年06月10日 (水)

代謝性疾患は、全身のさまざまな臓器や組織に影響を及ぼしうる疾患です1)。本コンテンツでは、代謝性疾患の基本概念や代表的な疾患、肝疾患との関係についてご紹介します。

1.代謝性疾患の基本概念

 代謝性疾患とは生体内の代謝機能に異常や障害をきたす疾患の総称であり、さまざまな臓器や組織に影響を及ぼす可能性があります1)。全身の臓器や組織は相互に連関しており一部の臓器の異常が全身へ影響を及ぼす恐れがあるため2)、単一の疾患のみに注目するのではなく、代謝性疾患についてしっかりと理解したうえで一つひとつの疾患の診療に臨むことが重要です。

2.代表的な疾患

 代表的な代謝性疾患として、肥満症、2型糖尿病、脂質異常症などが挙げられます。

1)肥満症

 わが国では、20歳以上の男性のおよそ31.5%、女性のおよそ21.1%が肥満者であると報告されています3)。「肥満」と「肥満症」は同一視されがちですが、「肥満」は「脂肪が過剰に蓄積した状態」を指し、BMI≧25kg/m2と定義されています4)。一方で、「肥満症」は「医学的に減量が必要な状態」を指し、BMI≧25kg/m2かつ肥満に起因ないしは関連する健康障害を合併するか、合併が予測される状態と定義されています4)

2)2型糖尿病

 2型糖尿病のある人は、わが国でおよそ363万9,000人いると報告されています5)。空腹時血糖値≧126mg/dL、ブドウ糖負荷試験2時間値≧200mg/dL、随時血糖値≧200mg/dLのいずれかに該当し、かつHbA1c≧6.5%の場合に2型糖尿病と診断され、症状としては喉の渇きや頻尿などがみられます6)

3)脂質異常症

 脂質異常症はわが国でおよそ458万7,000人の患者がいると報告されており5)、LDLコレステロール≧140mg/dL、HDLコレステロール<40mg/dL、トリグリセリド≧150mg/dL(空腹時採血)のいずれかに該当する場合に脂質異常症と診断されます7)。一般的に自覚症状はみられないものの、重症化すると心血管疾患(CVD)を発症するリスクがあり、CVDはわが国において悪性新生物に次ぐ死因第2位の疾患でもあるため、脂質異常症の管理にあたっては十分な注意が必要です8)

3.脂肪性肝疾患と代謝性疾患の相互連関

1)肝臓の役割

 肝臓の主な役割の一つに、食物などから摂取した糖質やタンパク質、脂質などを貯蔵したり、分解して身体活動に必要なエネルギー源をつくり出したりするはたらきがあり、代謝機能の中枢機関といえます910)。このような役割を担う肝臓が何らかの原因で正常に働かなくなると、エネルギーへ変換できなくなった過剰な脂肪が肝臓内に蓄積して、脂肪性肝疾患につながるリスクがあります11)

2)脂肪性肝疾患が全身の代謝性疾患へ与える影響

 脂肪性肝疾患はさまざまな要素により全身の代謝性疾患へ影響を及ぼします。たとえば、肝臓への脂肪蓄積により肝細胞内でインスリンの正常なシグナル伝達を妨げる脂質が増加してしまい12)、通常よりも多くの遊離脂肪酸(free fatty acid:FFA)が血液中へ放出されます。この状態が続くとFFAが筋肉細胞などへ取り込まれ、全身でインスリン抵抗性を生じ、2型糖尿病の発症リスクにつながります12)

3)全身の代謝性疾患が脂肪性肝疾患へ与える影響

 逆に、代謝性疾患を罹患している患者は全身におけるインスリン抵抗性を生じるため、全身の脂肪組織におけるインスリンがもつ脂肪分解抑制効果が低下してしまいます1314)。その結果、脂肪組織から血中へ多くのFFAが流入し、エネルギー源として利用しきれないものは肝臓内に中性脂肪として蓄積されるため、脂肪性肝疾患につながるリスクがあります1314)
 実際に2型糖尿病のある人の非アルコール性脂肪性肝疾患の有病率はおよそ30~75%と報告されており15)、肝硬変や肝がんへの進行リスクも高いことから15)、脂肪性肝疾患と代謝性疾患の相互関係をしっかりと理解し、肝臓に目を向けたうえで代謝性疾患の診療にあたることが重要といえます。

図 脂肪性肝疾患と代謝性疾患の相互連関(例:2型糖尿病)

 なお、以下のコンテンツでは肝疾患と代謝性疾患との関わりについて、関連するデータなどを提示してより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
 代謝性疾患における新しい視点 肝臓を考える
 データでみる 代謝疾患と肝臓の関係性

【参考文献】

  1. 吉村芳弘. 日本リハビリテーション医学会誌. 2023; 60: 871-9.​
  2. 片桐秀樹. 日本内科学会雑誌. 2019; 108: 416-21.
  3. 厚生労働省. 令和5年国民健康・栄養調査結果の概要.
  4. 日本肥満学会 編. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版. 2022.
  5. 厚生労働省. 令和5年患者調査の概況.
  6. 日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024.
  7. 日本動脈硬化学会 編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. レタープレス株式会社. 2022.
  8. 厚生労働省. 令和5年度人口動態統計特殊報告. 令和2年都道府県別年齢調整死亡率の概況.
  9. Rui L. Compr Physiol. 2014; 4: 177-97.
  10. Kalra A, et al. Physiology, Liver. 2024. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK535438/
  11. Lujan PV, et al. Nutrients. 2021; 13: 1442.
  12. 横山裕一. 慶應保健研究. 2024 ; 42 : 7-18.
  13. 山縣和也. 医学のあゆみ. 2019; 269: 921-3.
  14. 太田嗣人. 日内会誌. 2020; 109: 19-26.
  15. Rinella ME et al, Hepatology. 2023; 77(5): 1797-835.

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