代謝性疾患

代謝性疾患における新しい視点 肝臓を考える

サイトへ公開:2026年03月16日 (月)

肥満症、2型糖尿病、脂質異常症をはじめとする代謝性疾患患者さんの多くで、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の合併がみられます1)
本コンテンツでは、“肝臓の健康”に着目することが、代謝性疾患の管理において重要である理由をご紹介します。
 

本コンテンツでご紹介すること

● 世界的な代謝性疾患の今
 ・ 肥満症
 ・ 2型糖尿病
 ・ 脂質異常症
● 代謝性疾患と肝臓の関連性
● 代謝機能の鍵を握るホルモン
● “肝臓の健康”の予防的管理

世界的な代謝性疾患の今

肥満症

現在、世界中で10億人以上が肥満症を抱えており、この数は今後も増加することが予測されます2)

肥満症は体重増加にとどまらないさまざまな健康障害を引き起こす慢性疾患であり、個人の生活習慣のみに起因するものではありません3)

肥満症を放置すると、心血管疾患(CVD)や2型糖尿病、MASLDなどの他の代謝性疾患、および高血圧のリスクが増大する可能性があります4,5)

このように、肥満症は生活の質(QOL)を低下させるとともに、病的状態や死亡をもたらす主要な要因でもあります。
しかしながら、プライマリケアの場では肥満症に対して十分な治療介入がなされていない場合があります6)

肥満症は、単なる体重の問題ではなく、深刻な合併症を引き起こしうる慢性疾患です。

2型糖尿病

世界中で糖尿病を罹患する成人は5億8870万人に及び、2050年には8億5250万人まで増加すると予測されています7)

2型糖尿病では、脳卒中や虚血性心疾患などの大血管症に加え、失明や透析導入に至る可能性のある糖尿病網膜症や糖尿病性腎症などの合併症を伴います7)

また、発症する年齢が若いほど、その後の認知症発症リスクが高まることも知られています7)。 
こうしたアウトカムは、患者さんのQOLを著しく低下させ、早期死亡につながる要因であるとともに、世界的に大きな医療経済的負担につながることが問題視されています7)

その世界的なインパクトの大きさからも、2型糖尿病では血糖マネジメントを超えて、血圧や脂質レベルも管理することや、早期から定期的に合併症スクリーニングを行うことの重要性が論じられています7)

脂質異常症

WHOのレポートでは、2021年のCVDによる死亡者数は全世界で1900万人にのぼります8)

CVDによる死亡者数は、がん(1000万人)、慢性呼吸器疾患(400万人)、糖尿病(160万人)などによる死亡者数を大きく上回り、非感染性疾患(NCD)による死亡の大部分を占めます8)

脂質異常症は数ある動脈硬化性疾患の危険因子の中でも非常に重要と認識され、動脈硬化を進行させないためには脂質異常症の管理が重要です9)

動脈硬化性疾患の予防のために、久山町研究のスコアに基づくリスク区分別の脂質管理目標を達成することが求められています10)
さらに、年齢の影響を強く受ける将来10年間の絶対リスクだけでなく、相対リスクや生涯リスクの考え方も取り入れていくことが今後の課題です10)

代謝性疾患と肝臓の関連性

日本では、およそBMI 25~30kg/m2の2人に1人、BMI 30kg/m2超の5人に4人、2型糖尿病患者の2人に1人、脂質異常症患者の5人に2人がMASLDを合併していると報告されています11)

肥満は、代謝機能の中枢器官である肝臓に影響を与えます4)
過剰な体脂肪は肝臓への脂肪蓄積につながり、この状態はMASLDとして知られます

肝脂肪や内臓脂肪の蓄積は、代謝性疾患とMASLDの相互連関を根底とした代謝機能障害を引き起こし、両者は互いに悪影響を及ぼし合います12)

代謝性疾患とMASLDの進行は、発がんやCVDなどの心代謝系疾患、さらにMASHへの進展リスクを高めます。12)

† MASLDの診断基準:除外診断でなく5つの心代謝系危険因子(BMIまたはウエスト径、血糖またはHbA1c、血圧、中性脂肪、HDLコレステロール)のうち少なくとも1つ異常値を満たし、飲酒量が女性で140g/週未満、男性で210g/週未満の脂肪肝13)

代謝性疾患と肝臓には密接な関わりがあることが明らかになってきている一方で、それらの診療には課題があり、重要なアンメットニーズであると言えます

代謝機能の鍵を握るホルモン

代謝性疾患には多くのホルモンが関与し、肝臓と代謝機能に影響を与えています

グルカゴンとグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は代謝機能の調節において重要なホルモンです14)

  • グルカゴンは肝臓においてグリコーゲン分解や糖新生を促進し糖代謝を制御している一方、脂肪合成の抑制および脂肪分解の促進にも作用し、肝臓の脂質代謝も制御しています
  • GLP-1はインスリン分泌を刺激するとともに、摂食量の減少や血糖値の改善を介してインスリン感受性を高めます
  • グルカゴンではエネルギー消費の増大による体重減少作用が期待され、GLP-1には食欲抑制による体重減少作用が知られています

GLP-1とグルカゴンの両作用が協調することで、血糖値を安定させながら体重を減少するための鍵となる可能性があります14)

“肝臓の健康”の予防的管理

代謝性疾患を診療する医師は、肝臓の予防的管理において重要な役割を担っています

MASLDは進行してから診断されることも多く、このことが治療選択肢を狭め、患者さんのアウトカムに悪影響を及ぼす可能性があります。
こうした事実は、MASLDの早期発見の必要性を浮き彫りにしています。

肥満症をはじめとした代謝性疾患を診るとき、“肝臓の健康”との関連性に着目することが重要です

【参考文献】

  1. Fujii H, et al.: Hepatol Res. 2023; 53(11): 1059-1072.
  2. World Obesity Federation:Prevalence of Obesity
    https://www.worldobesity.org/about/about-obesity/prevalence-of-obesity(2025年12月閲覧)
  3. Mallik R, et al.: Clin Med (Lond) . 2023; 23(4): 299-303.
  4. Bray GA, et al.: Obes Rev. 2017; 18(7): 715-723.
  5. Blüher M. Nat Rev Endocrinol. 2019; 15(5): 288-298.
  6. Blane DN, et al.: Obes Rev. 2020; 21(4): e12979.
  7. IDF Diabetes Atlas. 11th Edition. 2025
    https://diabetesatlas.org/resources/idf-diabetes-atlas-2025/(2025年12月閲覧)
  8. The Global Health Observatory(GHO):Noncommunicable diseases: Mortality
    https://www.who.int/data/gho/data/themes/topics/topic-details/GHO/ncd-mortality(2025年12月閲覧)
  9. 一般社団法人 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版. 2023.
  10. 一般社団法人 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 2022.
  11. Tobari M, et al.: Gut Liver. 2020; 14(5): 537-545.
  12. Rinella ME, Hepatology. 2023; 77(5): 1797-1835.
  13. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:NAFLD/NASH診療ガイドライン(2020年11月)追補内容
    https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash202310_AR.pdf(2025年12月閲覧)
  14. Hope DCD, et al.: Front Endocrinol (Lausanne). 2021; 12: 735019.
     

この記事はお役に立ちましたか?

本ページは会員限定ページです。
ログインまたは新規会員登録後にご覧いただけます。

会員専用サイト

医療関係者のニーズに応える会員限定のコンテンツを提供します。

会員専用サイトにアクセス​

より良い医療の提供をめざす医療関係者の皆さまに​

  • 国内外の専門家が解説する最新トピック
  • キャリア開発のためのソフトスキル
  • 地域医療と患者さんの日常を支える医療施策情報

などの最新情報を定期的にお届けします。​

P-Mark 作成年月:2026年3月