9月29日「世界心臓Day」に考える 慢性心不全における糖尿病管理の重要性
サイトへ公開:2022年08月30日 (火)
近年、高齢化や生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加などから心不全患者が急増しています。心不全発症において、糖尿病などのリスク因子をコントロールする重要性およびトラゼンタ®のエビデンスについてご紹介します。ぜひご覧ください。
1. 心不全パンデミックの到来
近年、社会の高齢化や生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加などの影響により、心不全患者が急増しています。日本における心不全の患者数は、2020年時点で約120万人と推計され、2030年には130万に達するとされています1)。心不全は高齢になるほど多くなることが知られており、2025年には65歳以上の新規心不全発症患者数は37万人以上になると推定されています(図1)2)。
今後、高齢化の進行にともない心不全患者数が増加していく「心不全パンデミック」の到来が予測されています。日本では、2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が成立し、循環器病対策協議会が策定する循環器病対策推進基本計画を基に、全国レベルでの予防対策が実施されています。

2. 糖尿病は心不全のリスク因子であり悪化因子でもある。
糖尿病は心不全の発症と関連する虚血性心疾患のリスク因子であり、心不全の独立したリスク因子でもあります3)4)。1974年に実施されたFramingham研究では、糖尿病のある方の心不全発症リスクは、非糖尿病のある方と比べて男性で2倍、女性で5倍高くなることが報告されています4)。
さらに、糖尿病は心不全の予後の悪化とも関連しています。心不全入院患者1,659例を対象とした12年間の観察研究では、糖尿病を合併する心不全患者は予後が不良であったことが示されています(図2)5)。また、急性心筋梗塞後の予後と糖尿病の関連性を検討した研究では、糖尿病のある方は非糖尿病のある方と比較して心不全の発症率が高く、死亡率も高かったことが報告されています6)。
日本循環器学会と日本心不全学会の2学会の合同ガイドラインとして作成された「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改定版)」では、心不全の発症・進展をA、B、C、Dの4つのステージに分類しています(図3)。ステージA/Bは心不全発症前の段階、ステージC以降は心不全症状が出現した段階であり、糖尿病や高血圧などを有する患者はステージAに分類されています。ガイドラインでは「心不全発症前のリスク段階での治療介入を、心不全の治療ガイドラインにあえて含めるのは、その予防がきわめて重要であるからにほかならない」と記載されており、心不全症候が出現する前に糖尿病などのリスク因子をコントロールする重要性が示されています7)。


3. トラゼンタ®の有効性と心血管安全性
食事療法、運動療法と並んで糖尿病治療の柱である薬物療法は長期間にわたるため、血糖降下作用に加え、低血糖や血管障害に対する安全性も重要となります。
DPP-4阻害薬のトラゼンタ®は、メトホルミン治療で効果不十分な2型糖尿病のある方を対象に、トラゼンタ®追加投与の長期有効性と安全性をグリメピリド追加投与と比較検討した臨床試験において、104週に渡る有効性が検討されました(図4、図5)8)9)。またトラゼンタ®は、長期の心血管イベントの発生を検証した試験としてCARMELINA試験、およびCAROLINA試験も実施されており、それぞれでアジアサブグループ解析もなされています10)11)。CAROLINA試験は、糖尿病罹病期間が6.3年(中央値)、ベースラインHbA1cが7.2%(平均値)と比較的早期の方を対象としており、試験期間が6年超と長期に渡る試験です12)。一方、CARMELINA試験は糖尿病罹病期間が14.8年(中央値)、腎機能が低下した症例が約60%含まれるなど2型糖尿病が進行した方を対象にした試験です(図6)13)。両試験とも3P-MACE(心血管[CV]死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)を主要評価項目とした試験です(図6)。



4. まとめ
心不全発症前のリスク段階における治療介入という観点からも糖尿病の血糖管理は重要です。また、糖尿病の治療目標は、虚血性心疾患を含む合併症の発症・進展を阻止し、糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLを達成することとされています14)。糖尿病のある方の心不全合併を考慮しつつ糖尿病の治療目標を達成するためには、エビデンスに基づく治療選択がより重要となります。
ここでお示ししたようなトラゼンタ®のエビデンスが、治療選択の一助になれば幸いです。
References
- Okura Y. et al. Circ J. 2008; 72: 489-91.
- Shimokawa H. et al. Eur J Heart Fail. 2015; 17: 884-92.
- 筒井裕之. 糖尿病. 2016; 59: 550-3.
- Nichols GA. et al. Diabetes Care. 2001; 24: 1614-9.
- Varela-Roman A. et al. Eur J Heart Fail. 2005; 7: 859-64.
- Aguilar D. et al. Circulation. 2004; 110: 1572-8.
- 日本循環器学会,日本心不全学会.急性・慢性心不全診療ガイドライン.[https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h_190830.pdf](2024年7月8日閲覧)
- Gallwitz B. et al. Lancet. 2012; 380: 475-83.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました。) - Gallwitz B. et al. Int J Clin Pract. 2013; 67: 317-21.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました。) - Kadowaki T. et al. Diabetology International. 2020; 12: 87-100.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - Inagaki N. et al. Diabetol Int. 2020; 11: 129-41.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - Rosenstock J. et al. JAMA. 2019; 322: 1155-66.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - Rosenstock J. et al. JAMA. 2019; 321: 69-79.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 東京 : 文光堂; 2022.
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