2型糖尿病の病態や表現系における人種差に基づいた治療選択
サイトへ公開:2022年07月28日 (木)
2型糖尿病の病態や表現型は、日本を含む東アジア人と白人では異なることが広く知られています。2型糖尿病の病態や表現型、薬物療法における人種差の影響およびアジア人・日本人の病態を考慮したトラゼンタ®のエビデンスについてご紹介します。ぜひご覧ください。
2型糖尿病の病態や表現型における人種差
2型糖尿病の病態や表現型は、日本を含む東アジア人と白人では異なることが広く知られており、欧米人と比較して東アジア人の2型糖尿病発症にはインスリン抵抗性の増加よりもインスリン分泌能の低下がより影響すると考えられています。
欧米人と日本人の正常耐糖能、耐糖能異常、2型糖尿病のある方を対象に、インスリン抵抗性およびインスリン分泌を検討した疫学研究では、欧米人と比較して、日本人はインスリン抵抗性およびインスリン分泌能が低いことが示されています(図1)1)。
また、静脈内ブドウ糖負荷試験により、インスリン感受性と急性インスリン反応を測定した74のコホート研究の文献調査においても、東アジア人は、アフリカ人、白人と比べて、インスリン感受性は高く、一方でインスリン分泌能は低いことが示されています2)。

2型糖尿病の薬物療法における人種差
2型糖尿病の薬物療法では、一人ひとりの患者さんの病態に基づいた薬剤選択を行い、安全かつ持続的に良好な血糖マネジメントを達成することが求められます。
経口血糖降下薬の一つであるDPP-4阻害薬は、血糖依存的にインスリン分泌を促進させ食後の血糖上昇を抑制する作用機序をもち、単独投与では低血糖を来しにくいという特徴があります3)。日本人やアジア人の2型糖尿病のある方ではインスリン分泌能の低下が発症に影響すると考えられるため、血糖依存的にインスリン分泌を促進するDPP-4阻害薬による血糖降下作用は、日本人やアジア人でより大きいと考えられます。
2型糖尿病患のある方を対象に、アジア人グループと非アジア人グループでDPP-4阻害薬の血糖降下作用を検討したメタ解析では、アジア人2型糖尿病のある方は、非アジア人2型糖尿病のある方と比べて、DPP-4阻害薬による血糖降下作用が高いことが示されています(HbA1c変化量の加重平均差[WMD]:アジア人-0.92%、非アジア人-0.65%、群間差-0.26%[95%信頼区間:-0.36, -0.17]、p<0.001[χ2検定]、名目上のp値)(図2)4)。
また、日本人で2型糖尿病のある方と日本人以外で2型糖尿病のある方のDPP-4阻害薬の効果を検討したメタ解析も実施されており、日本人2型糖尿病のある方におけるDPP-4阻害薬の血糖降下作用は、日本人以外で2型糖尿病のある方と比較して高かったことが示されています(HbA1cの平均変化量:日本人-0.87%、日本人以外-0.68%、p<0.0001[多変量メタ回帰分析]、名目上のp値)(図3)5)。


アジア人・日本人におけるトラゼンタ®のエビデンス
2型糖尿病の病態や表現型は人種による違いがあるため、アジア人・日本人を対象とした臨床研究が実施されているかどうか、という点も薬剤選択の重要な要素となります。
DPP-4阻害薬の一つであるトラゼンタ®では、日本人で2型糖尿病のある方を対象として単独療法の安全性や有効性を検討した3年間の特定使用成績調査(PMS)が実施されています(図4)6)。リナグリプチン単独投与により副作用は10.7%(240例/2,235例)に認められ、主な副作用として、糖尿病(1.6%、35例)、コントロール不良の糖尿病(0.6%、13例)、便秘(0.9%、27例)などが発現しました。重篤な副作用は1.6%(35例)、投与中止に至った副作用は3.3%(74例)に認められ、死亡に至った症例は0.5%(11例)報告されています(図5)。また、リナグリプチン単独療法により、HbA1cと空腹時血糖は図5のとおり推移し、HbA1cの変化量は-0.67% ±1.27%、投与26週時点のHbA1cの変化量は-0.73%±1.20%、投与26週時点の空腹時血糖の変化量は-21.02±44.33mg/dL(いずれも平均±SD)でした6)。
また、トラゼンタ®は、心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある早期2型糖尿病のある方を対象としたCAROLINA試験、心血管や腎イベント、またはその両方のリスクが高い2型糖尿病のある方を対象としたCARMELINA試験において、それぞれアジア人サブグループ解析が実施されています(図6)7)8)。
さらに、日本人2型糖尿病のある方では、罹病期間が長くなるほど糖尿病性腎症の合併率が高まると報告されていますが、トラゼンタ®は主に胆汁から未変化体で排泄されるため、腎機能の程度によらず1日1回5mgの投与量で治療を行うことが可能です(図7)9)10)11)。




おわりに
トラゼンタ®は、2型糖尿病のある方において、1日1回1錠5mgでシンプルな治療が可能な薬剤です(図8)。糖尿病治療の選択肢として、トラゼンタ®をご検討いただければ幸いです。

References
- Fukushima M. et al. Diabetes Res Clin Pract. 2004; 66: S37-43.
- Kodama K. et al. Diabetes Care. 2013; 36: 1789-96.
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 東京 : 文光堂 ; 2020.
- Kim YG. et. al. Diabetologia. 2013; 56: 696-708.
- Ito Y. et al. Clin Transl Sci. 2020;13: 498-508.
- Yamamoto F. et al. Diabetes Ther. 2020; 11: 107-17.
(本論文の著者のうち5名は、日本ベーリンガーインゲルハイム社の社員である。) - Kadowaki T. et al. Diabetology International. 2020; 12: 87-100.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - Inagaki N. et al. Diabetol Int. 2020; 11: 129-41.
(本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。) - Yokoyama H. et al. BMJ Open Diabetes Res Care. 2016; 4: e000294.
- トラゼンタ®錠インタビューフォーム.
- Blech S. et al. 社内資料 ヒトでの代謝物検討試験.
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