Q&Aで基礎からわかる!間質性肺疾患(ILD)第4回紹介を迷う症例、どうすべき?(静止画)
サイトへ公開:2025年12月17日 (水)
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ご監修:佐藤 健夫 先生(自治医科大学 地域臨床教育センター 教授 兼 内科学講座 アレルギー膠原病学部門 教授)
大学の同窓会で再会した一ノ瀬先生と大山先生。昔話もそこそこに、ILDの話題に花が咲きます。ILDのスクリーニングに前向きに取り組もうとする一ノ瀬先生は、専門医へ紹介すべきか迷うケースへの対処を知りたいようです。
一ノ瀬先生:
先生からいろいろとお話を伺って、ILDを早期に発見するために、日常診療でのスクリーニングが大切だとわかりました。でも、ILDかもしれないと思っても、時に紹介を迷うケースもあると思うんです。
大山先生:
なるほど。たとえば、どのようなケースでしょうか?
咳や息切れなどの症状がなくても紹介すべき?
一ノ瀬先生:
実際に症状が出て困っている患者さんであれば早く紹介しようと思うのですが、症状がない場合や軽微な場合も、早く紹介すべきでしょうか?
大山先生:
そうですね。自覚症状がなくてもILDが疑われた時点で紹介してもらいたいです。
その理由は、もしILDがあった場合に肺の組織構造が変化して一度機能が低下してしまうと、その正常化は難しいからです。そのため、早期に介入して進行を遅延・阻止することが現在のILDの治療目標となっています(図1)。
図1

初期のILDでは、無症状で患者さんご自身が気付いておられないことがしばしばあります。まだ症状が現れていない場合や進行が見られていない場合でも、まずは紹介して、その時点での正確な診断や評価を行い、その結果に基づいて管理することが重要です。
一ノ瀬先生:
現状では治療で回復することは難しいので、症状が出てくるまで経過観察をしていると治療機会を逃してしまう可能性があるのですね。
大山先生:
そうなんです。日本呼吸器学会による『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き』でも、問診での詳細な症状の聞き取りや聴診などの身体検査、胸部X線検査、血液検査の結果からILDが疑われた場合、無症状であっても発見時に呼吸器専門医への紹介が望ましいとされています(図2)。
図2

それでも迷う場合には、ILDの合併リスクを上昇させる因子も参考にしてください。男性、60歳以上、過去を含む喫煙歴、胃食道逆流症、心血管疾患、糖尿病などが挙げられます(図3)。
図3

また、関節リウマチなどの膠原病やそのほかの疾患でもILDを合併することがあります。背景にある疾患で治療方針が異なりますのでそのような疾患の鑑別も重要です。
高齢患者さんによくみられる症状だけど、紹介すべき?
一ノ瀬先生:
そう言われてみると、私が診察している患者さんの中にもILDの合併リスクをお持ちの方が多くいらっしゃいます。ILDの症状である乾いた咳や労作時の息切れは、高齢患者さんによくみられる症状だと思うのですが、紹介すべきでしょうか?
大山先生:
はい。60歳以上の高齢はILDのリスク因子のひとつですので(図3)、ILDが疑われるようであれば紹介してください。
ILDのスクリーニングは症状だけでなく、聴診での捻髪音の聴取や胸部画像検査(胸部X線、HRCT※1)、血清マーカー(KL-6※2、SP-D※3)、呼吸機能検査(%FVC※4など)も判断材料となります。
※1 HRCT: 高分解能CT
※2 KL-6:ケーエル6
※3 SP-D:肺サーファクタント蛋白-D
※4 %FVC:対標準努力肺活量
一ノ瀬先生:
高齢患者さんにはよくある症状だから問題ない、と思いこまないことが大切かもしれませんね。
確認できた所見では確信がないが、紹介すべき?
一ノ瀬先生:
高齢患者さんに限りませんが、一通りスクリーニングを行って、確認できた所見では確信がない場合でも、紹介すべきでしょうか?
大山先生:
そうですね。ILDが予後に関わる可能性のある疾患であることを思い出して、迷う場合でも紹介してもらえたらと思います。
ILDは死亡リスクの高い疾患で、死亡数も年々増加傾向にあり、年間2万人を超える方が亡くなっています(図4)。
図4

また、ILDのうち特発性肺線維症(IPF)の5年生存率は20~40%で、各種がんと比べても予後不良の疾患といえます(図5)。
図5

最近はIPFでなくても線維化が進行する、PPF*やPF-ILD**といった病態も明らかになっていて、IPFと同じくらい予後不良だと考えられています1)。PPF*やPF-ILD**には、関節リウマチをはじめとした膠原病、過敏性肺炎、サルコイドーシスなどに合併するILDの一部が含まれます。
このようにILDは予後不良の疾患ですから、できるだけ早期に診断した上で、%FVCの低下抑制を治療目標とすることが予後の改善に大切です。
*PPF:進行性肺線維症
**PF-ILD:進行性線維化を伴う間質性肺疾患
一ノ瀬先生:
患者さんの予後への影響を念頭に置いて、迷う場合には紹介したいと思います。
まとめ
● ILDが疑われた場合は発見時に無症状であっても呼吸器専門医への紹介が望ましい
● 60歳以上の高齢はILDのリスク因子のひとつ
● ILDが予後に関わる可能性のある疾患であることを念頭に置いて、迷う場合は紹介が望ましい
【引用】
- Kondoh Y, Inoue Y. Adv Ther. 2025;42(7):2988-3001.
著者にベーリンガーインゲルハイム社より講演料等を受領している者が含まれる。
その他の関連情報
特発性肺線維症および進行性肺線維症 国際診療ガイドライン2022(静止画)
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