特発性肺線維症および進行性肺線維症 国際診療ガイドライン2022(静止画)
サイトへ公開:2023年01月29日 (日)
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ご監修 : 井上 義一先生(大阪府結核予防会 大阪複十字病院 顧問/独立行政法人 国立病院機構 近畿中央呼吸器センター 客員研究員)

2022年5月に、『特発性肺線維症および進行性肺線維症国際診療ガイドライン2022』がATS/ERS/JRS/ALATから公表されました。
本ガイドラインでは、特発性肺線維症(IPF)の診断や臨床管理に関する記載などが改訂されています。さらに、進行性肺線維症(PPF)が新たに定義されています。
今回は、『特発性肺線維症および進行性肺線維症国際診療ガイドライン2022』のポイントを紹介します。
ATS; American Thoracic Society(米国胸部学会)、ERS; European Respiratory Society(欧州胸部疾患学会)、JRS; Japanese Respiratory Society(日本呼吸器学会)、ALAT; Asociación Latinoamericana de Tórax; ラテンアメリカ胸部医学会
IPFの診断
『特発性肺線維症および進行性肺線維症国際診療ガイドライン2022』では、「IPFの診断アルゴリズム」「IPFの高分解能CT(HRCT)パターン」「HRCTおよび生検パターンに基づくIPFの診断」などの図表が改訂されました。
IPFの診断アルゴリズム(図1)
本ガイドライン掲載のIPFの診断アルゴリズムでは、IPFが疑われる患者さんに対し、まずは可能性のある原因や関連する状況について問診を行うことが示されています。問診の結果、特に原因がない場合、もしくは、原因があっても特定の診断の確認が取れない場合は、胸部HRCTパターンの確認を行います。
HRCTパターン確認後の診断の進め方は、確認されたパターンごとに異なります。今回の改訂では、HRCTパターンがUIP※1パターン・Probable UIPパターンのいずれの場合でも、多分野による集学的検討(MDD)を行いIPFの診断に至るよう、診断の進め方が変更されました。
一方、Indeterminate for UIPまたはAlternate diagnosisパターンの場合は、MDDに加えて、気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支クライオ肺生検(TBLC)、外科的肺生検(SLB)などを実施します。その後、再度MDDを行い、IPFもしくはAlternative diagnosisの診断を行います。
なお、可能性のある原因や関連する状況があり、特定の疾患と確定できる場合はAlternative diagnosisの診断となります。
※1 UIP:通常型間質性肺炎
図1

IPFのHRCTパターン(図2)
IPFで認められるHRCTパターンは、UIP、Probable UIP、Indeterminate for UIP、Alternative diagnosisを示唆するCT所見の4種に分類されます。今回の改訂ではそれぞれの基準が変更され、さらに組織学的なUIPに対する確診度が追記されました。この確診度は、UIPパターンでは90%超、Probable UIPパターンで70~89%、Indeterminate for UIPで51~69%とされています。
UIPパターンは、胸膜下および肺底部優位に分布します。分布はしばしば不均一で、正常肺と線維化のある領域が混在します。時にびまん性の場合や、非対称性の場合もあります。「牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う、または伴わない蜂巣肺」「小葉間隔壁の不整な肥厚 」が特徴となります。通常は網状影パターンであり、軽度のすりガラス影が重なります。また、肺骨化を伴うことがあります。
Probable UIPパターンも胸膜下および肺底部優位に分布しますが、分布はしばしば不均一で、正常肺と網状影、牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う網状影のある領域が混在します。特徴として、牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う網状影パターンが認められます。また、軽度のすりガラス影を認める場合もあります。なお、病変は胸膜直下に認められます 。
Indeterminate for UIPは、胸膜下優位のないびまん性分布を示します。線維化のパターンがどの疾患にも当てはまらないことが特徴となります。
Alternative diagnosisでは、図2に示すとおり、疾患ごとにさまざまな所見が認められます。
図2

HRCTおよび生検パターンに基づくIPFの診断(図3)
IPFの診断は、各HRCTパターンの特徴と、TBLCやSLBの病理組織パターンを組み合わせて行います。これまで、Alternative diagnosisを示唆するHRCTパターンとProbable UIPの病理組織パターンの組み合わせは、「IPF以外の診断」とされていましたが、今回の改訂によって「Indeterminate」の診断に変更されました。
なお、診断アルゴリズムに示されているとおり、HRCT所見で典型的なUIPパターンや、Probable UIPパターンを示す場合はTBLCやSLBを実施せずに診断を確定することも許容されます。
図3

IPF患者の臨床管理の流れ
本ガイドラインでは、図4に示すIPF患者の臨床管理の流れが改訂され、IPF診断後の治療に際しての考慮事項と、疾患進行のモニタリングに関する記載が追加されました。
治療に際しての考慮事項としては、オフェブなどの抗線維化薬による薬物治療と、酸素療法や呼吸リハビリテーションといった非薬物治療の両方を検討するべきであることが示されています。加えて、肺高血圧や胃食道逆流症などの併存疾患や症状コントロールのための緩和ケア、死亡リスクの高い場合は、診断時に肺移植について評価することも示されています。
また、疾患進行のモニタリングについても具体的な期間が提案されており、肺機能検査および6分間歩行試験は4~6ヵ月ごと、あるいは臨床的に必要であればそれより早く検討することが示されています。HRCTについては、臨床的に悪化が疑われる場合または肺癌のリスクがある場合は年1回検討するとされています。また、急性増悪が懸念される場合にも、HRCTの実施が検討されます。CT肺血管造影については、肺塞栓症の臨床的懸念がある場合に検討されます。
図4

進行性肺線維症(PPF)の定義
本ガイドラインでは、PPFが新たに定義されました。PPFとは、原因の判明している間質性肺疾患(ILD)、あるいはIPF以外の原因不明のILDで、画像的に肺線維症の特徴を認める患者において、過去1年以内に「呼吸器症状の悪化」「生理学的な病状の進行」「画像での線維化の進行」の3つの基準のうち少なくとも2つ以上が該当し、他に説明できない場合と定義されています。
「生理学的な病状の進行」や「画像での線維化の進行」の該当要件については、図5のとおりです。
図5

PPFを呈するILDは、特発性非特異性間質性肺炎や分類不能型特発性間質性肺炎などの特発性間質性肺炎、関節リウマチや全身性強皮症などの自己免疫性ILD、過敏性肺炎などの曝露関連、サルコイドーシスなどさまざまです(図6)。各疾患によってPPFを有する患者さんの割合は異なりますが、これらの疾患では線維化の進行をとらえることが重要となります。
IPF以外のILDの場合、線維化の進行パターンは、すりガラス影から網状影への進行や、網状影から蜂巣肺への進行、牽引性気管支拡張の増加などさまざまです。また、NSIP※2パターンからUIPパターンに進行する例もあります1)。
※2 NSIP:非特異性間質性肺炎
図6

PPFを呈するILDの進行例をお示しします。図7は、同じ強皮症患者さんのHRCT画像を並べたもので、BはAの9年後の画像です。AではNSIPパターンに典型的な下肺優位の網状影およびすりガラス影が認められ、胸膜直下は保たれています。9年後のBでは、網状影の範囲が拡大するとともに牽引性気管支拡張が増大し、網状影から蜂巣肺への進展が認められ、線維化が進行しています。また、両側に少量の胸水が存在しています。
図7

PPFの治療
本ガイドラインでは、オフェブを含むPPFに対する治療選択肢に関して、エビデンスに基づく推奨事項が示されています。
オフェブの使用については、「IPF以外の線維性ILDの標準的な管理にもかかわらず進行するPPFの治療に提案する(条件付き推奨、低品質のエビデンス)」とされています。また、注釈として、「標準的な管理は患者ごとに異なること」「多くの患者では、初期症状を安定または改善させるために免疫抑制療法が行われるが、これは前提条件ではなく、一部の患者では抗原回避や経過観察が標準的な管理になる可能性があること」「多くの ILDでは、標準治療に関するエビデンスに基づく指針が欠けていることを認識しておく必要があること」が記載されています。また、「PPFを呈するIPF以外の特定のILDタイプにおけるオフェブの有効性および安全性に関する研究」もあわせて推奨されています1)。ただし、わが国ではオフェブは進行性線維化を伴うILDに対して適応がある事にご注意ください※3。
※3 オフェブの効能又は効果:特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患、進行性線維化を伴う間質性肺疾患
まとめ
今回は、『特発性肺線維症および進行性肺線維症国際診療ガイドライン2022』のポイントとして、IPFの診断と臨床管理およびPPFの定義と治療を紹介しました。
今回紹介したポイントは次のとおりです。
- IPFの診断について、HRCTパターンがUIPパターンの場合に加えてProbable UIPパターンの場合も、初回のMDD後、肺生検を実施せずにIPFの診断を確定することが許容されています。
- Indeterminate for UIPやAlternate diagnosisのMDD後の検査としてBALやSLB、TBLCを実施することが示されています。
- IPFの臨床管理においては、オフェブなどの抗線維化薬による薬物治療を考慮することが示されています。
- 疾患進行のモニタリングについて、検査ごとに実施するタイミングが具体的に提案されています。
- IPF以外の肺線維症を示すILDにおいて、新たにPPFが定義されています。
- オフェブを含むPPFに対する治療選択肢に関して、エビデンスに基づく推奨事項が示されています。
これらの内容は、IPFをはじめとするILDの診療を変える可能性のある重要なものであると考えます。
今回ご紹介した内容を、ILD患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。
その他の関連情報
特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 2022 改訂第4版(静止画)
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