特発性間質性肺炎(IIPs)と新たに診断された患者における予後予測(静止画)
サイトへ公開:2026年01月16日 (金)
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ご監修:奥田 良先生(神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長)
国内の特発性間質性肺炎(IIPs)を対象とした多施設共同前向き観察研究である、Japanese Idiopathic Interstitial Pneumonias(JIPS) レジストリから、IIPsの予後予測因子に関する報告1)が発表されましたので、ご紹介します。
本研究の対象と方法についてご説明します(図1、2)。
2016年12月~2018年3月にJIPSレジストリに登録された、新規の特発性間質性肺炎(IIPs)患者866例を3年間前向きに観察し、予後に影響を及ぼす因子を検討しました。
登録時の中央判定は、呼吸器内科医、放射線科医、病理医のそれぞれ1名ずつからなる集学的検討(MDD)チームを結成し、6つのMDDチームによって、線維性間質性肺疾患に対する標準化された診断オントロジー(standardized diagnostic ontology for fibrotic ILD)2)と2018年の特発性肺線維症(IPF)診断の国際診療ガイドライン3)に基づいて診断が行われました。また、各中央判定医は、日本のILDリーダーから選ばれました。HRCT所見におけるUIPの病理学的確信度はMDD中央判定医の呼吸器内科医と放射線科医が合議し、0~100%の線形アナログ尺度で評価し、50%を閾値としてUIPパターンの有無を判定しました。
全生存(OS)および無増悪生存(PFS)期間について、log-rank検定ならびにCox比例ハザードモデルを用いたハザード比(HR)と95%信頼区間の算出により、Kaplan-Meier曲線の推定と2群間の比較を行いました。また、単変量Cox回帰分析を行い、有意差が認められた説明変数について多変量Cox回帰分析を行いました。観察研究のため、多重性の調整は行われませんでした。
IPFと似た経過をとる病型とされている「進行性線維化を伴う間質性肺疾患(progressive fibrosing ILD:PF-ILD)」4)、「診療ガイドラインで提唱された(proposed)進行性肺線維症(progressive pulmonary fibrosis:PPF)」5) についてもそれぞれの定義に基づき診断を行いました。
図1
図2
患者背景についてご説明します(図3)。
866例全体では、平均年齢70歳、男性73%で、FVC(%予測値)、DLco(%予測値)、PaO2(Torr)、6分間歩行試験中のSpO2最小値(%)の平均値はそれぞれ80%、68%、82 Torr、89%でした。
疾患の内訳は、IPFが469例(54%)、UCIPが272例(31%)、 iNSIPが28例(3%)、COPが17例(2%)、 iPPFEが33例(4%)、その他が47例(5%)でした。
図3
患者構成と追跡状況についてご説明します(図4)。
組み入れられた866例のうち、追跡可能症例は、12ヵ月で97%、24ヵ月で93%、36ヵ月で88%でした。
図4
診断基準による診断割合の相違についてご説明します(図5)。
同じ6つのMDDチームが、2011年のIPF国際診療ガイドライン6)と2013年のATS/ERSによるIIPs分類7)に基づいて診断を行ったところ、UCIPは59%、IPFは36%でした(a)。「患者背景」でご説明した通り、線維性間質性肺疾患に対する標準化された診断オントロジーと2018年のIPF診断の国際診療ガイドラインに基づいた診断では、UCIPは31%、IPFは54%でした(b)。この結果から、診断オントロジーを用いることでUCIPの割合が減少することが示されました。
図5
疾患別のOS期間の結果についてご説明します(図6)。
IPF患者と比較して、UCIP患者ではより長いOS期間が観察されました〔HR=0.67(95% CI:0.47–0.95、Cox比例ハザードモデル)、P=0.022(log-rank検定、名目上のP値)〕。また 、同じくIPF患者と比較して、IPF/UCIP以外のIIPs患者(iNSIP、COP、iPPFEなど)ではより長いOS期間が観察されました〔HR=0.44(95% CI:0.25–0.77、Cox比例ハザードモデル)、P=0.003(log-rank検定、名目上のP値)〕。
図6
FVCで層別化したOS期間の結果についてご説明します(図7)。
FVC(%予測値)80%を超える群において、UCIP患者ではIPF患者より長いOS期間が観察されました〔HR=0.38(95% CI:0.18–0.82、Cox比例ハザードモデル)、P=0.014(log-rank検定、名目上のP値)〕。
図7
疾患別のPFS期間の結果についてご説明します(図8)。
今回の試験において「増悪」の定義は、FVCの10%を超えるベースラインからの絶対的低下、6分間歩行距離の50mを超えるベースラインからの低下、肺移植、急性増悪という4つの基準のうち、1つ以上満たす場合としました。
PFS期間の中央値は、UCIP患者、IPF患者でそれぞれ24.3ヵ月、23.4ヵ月でした〔HR=0.88(95% CI:0.73–1.05、Cox比例ハザードモデル)、P=0.160(log-rank検定、名目上のP値)〕。3年時におけるPFSの割合は、UCIP患者、IPF患者でそれぞれ37%、31%でした。
IPF/UCIP以外のIIPs患者(iNSIP、COP、iPPFEなど)において、IPF患者より長いPFS期間が観察されました〔HR=0.67(95% CI:0.51–0.87、Cox比例ハザードモデル)、P=0.003(log-rank検定、名目上のP値)〕。
図8
主要検査項目や初回急性増悪の発生割合などの経時的推移についてご説明します(図9)。
いずれの群においても、FVC、DLco、6分間歩行距離の著明な経時的悪化は認められず、検査が実施できた症例のみを追跡しても、病態の進行を十分に捉えられない可能性がありました。また、3年以内の初回急性増悪は、全患者で15%、IPF患者で17%、UCIP患者で13%でした。
図9
全866例のIIPsを対象としたHRCT所見におけるUIPパターンの有無別のOS期間の結果についてご説明します(図10)。
UIPパターンが認められた患者では、UIPパターンが認められなかった患者に比べて有意に短いOS期間が観察されました〔HR=2.52(95% CI:1.65–3.86、Cox比例ハザードモデル)、P<0.001(log-rank検定、名目上のP値)〕。
図10
全866例のIIPsを対象とした2018年改訂ATS/ERS/JRS/ALATによるIPF診断ガイドラインのHRCTパターン分類別のOS期間の結果についてご説明します(図11)。
UIP患者において、Probable UIP患者に比べて有意に短いOS期間が観察されました〔HR=2.30(95% CI:1.43–3.69、Cox比例ハザードモデル)、P<0.001(log-rank検定、名目上のP値)〕。
図11
全866例のIIPsを対象としたOSに対するリスク分析の結果についてご説明します(図12)。
多変量Cox回帰分析において、年齢、BMI、FVC、DLco、SGRQ総合スコア、HRCTにおけるUIPパターン(線形アナログ尺度による判定)が、 OSに対する独立したリスク因子であることが示されました(P<0.05、名目上のP値)。
図12
OSに対する1年間の経時的変化のリスク分析についてご説明します(図13)。
多変量Cox回帰分析の結果、診断から1年間の変化量において、FVCの1%低下、DLcoの1%低下、6分間歩行試験における歩行距離の1m減少、mMRC息切れスケールの1点増加が、OSに対する独立したリスク因子であることが示されました(P<0.05、名目上のP値)。
図13
PFの国際ガイドラインでは、proposed PPF(進行性肺線維症)は IPF以外のILDで判定するとされています。今回の研究においても、IPF以外のIIPs(397例)を対象に、proposed PPF診断別のOS(全生存期間)を解析しました(図14)。
proposed PPF患者において、 proposed PPFではない患者より短いOS期間が観察されました〔HR=5.63(95% CI:3.17–10.00、Cox比例ハザードモデル)、P<0.001(log-rank検定、名目上のP値)〕 。
図14
全866例のIIPsを対象とした「PF-ILD」診断別のOS期間の解析結果についてご説明します(図15)。
PF-ILD患者において、 PF-ILDではない患者より短いOS期間が観察されました〔HR=4.49(95% CI:2.94–6.86、Cox比例ハザードモデル)、P<0.001(log-rank検定、名目上のP値)〕 。
図15
全866例のIIPsを対象とした「proposed PPF」と「PF-ILD」のどちらの診断も考慮したOS期間の結果についてご説明します(図16)。
proposed PPFかつPF-ILDである患者において、いずれの診断にも該当しない患者より短いOS期間が観察されました〔HR=6.02(95% CI:3.92–9.26、Cox比例ハザードモデル)、P<0.001(log-rank検定、名目上のP値)〕 。
図16
本研究のまとめです(図17)。
新たにIIPsと診断された患者群において、登録時のHRCT所見におけるUIPパターン(線形アナログ尺度による判定)が予後予測因子になることが示されました。
また、「proposed PPF」と「PF-ILD」の疾患概念は予後予測に有用である可能性が示唆されました。さらに、各検査項目の経時的変化においては、診断から1年後のFVC、 DLco、6分間歩行距離、mMRCの悪化がOSに対するリスク因子であり、これらの検査項目の推移に注目していく必要があります。
図17

本研究の限界についてご説明します(図18)。
診断ガイドラインを厳格に適用することにより、UCIPと診断された患者が増加しました。
JIPSレジストリはIIPs患者に限定されるため、膠原病関連間質性肺疾患や線維性過敏性肺炎など、原因が明らかな間質性肺疾患に含まれる「proposed PPF」や「PF-ILD」の患者の評価は行っておりません。
また、治療薬の選択・治療の開始は、参加施設の担当医の裁量に委ねられていました。
図18
- Okuda R. et al.: Respir Investig 2025; 63(3): 365-372. 本研究のベースとなるJIPSレジストリは日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の資金を受けておりベーリンガーインゲルハイム社の支援を受けています。著者に日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より講演料、研究費、助成金、寄付金を受領している者が含まれます。
- Ryerson CJ. et al.:Am J Respir Crit Care Med 2017; 196(10): 1249–54.
- Raghu G. et al.: Am J Respir Crit Care Med 2018; 198(5): e44–68.
- Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718–27.
- Raghu G. et al.: Am J Respir Crit Care Med 2022; 205(9): e18–47.
- Raghu G. et al.: Am J Respir Crit Care Med 2011; 183(6): 788–824.
- Travis WD. et al.: Am J Respir Crit Care Med. 2013; 188(6): 733–48.
その他の関連情報
特発性肺線維症および進行性肺線維症 国際診療ガイドライン2022(静止画)
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