この検査こそやってほしい RA-ILDなどの膠原病に伴うILDの患者さんの診療(静止画)
サイトへ公開:2026年03月30日 (月)
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ご監修:田中 彩絵 先生(獨協医科大学 リウマチ・膠原病内科 助教)

間質性肺疾患(ILD)の中には、進行性の線維化を伴うものが含まれており、その早期発見と適切な介入が患者さんの予後に影響します。 ILDの疾患挙動の評価において胸部HRCT検査は有用なツールですが、ILDの進行を継続的にモニタリングし、治療開始のタイミングを見逃さないためには、呼吸機能検査も組み合わせた評価が有用と考えられます。そこで今回は、ILD診療における呼吸機能検査の重要性についてご紹介します。
1 「進行性の線維化」という疾患挙動の評価
ILDにおける進行性の線維化は、国際ガイドラインにおける進行性肺線維症(PPF)、INBUILD試験における進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)など、複数の基準によって定義されています(図1)。一見複雑に思えるこれらの定義ですが、いずれも胸部HRCT検査・呼吸器症状・呼吸機能検査の3つが評価に重要である点が共通しています。
図1

2 進行性の線維化を見定める胸部HRCT検査・呼吸器症状・呼吸機能検査
それぞれの検査についてみていきましょう。
膠原病に伴うILD(CTD-ILD)の例として、関節リウマチに伴うILD(RA-ILD)では、胸部HRCT検査でみられる所見はUIPパターンが最も多く、次いでNSIPパターンが多くみられます1)。その他にもOPパターンなど、多彩な所見がみられます(図2)。胸部HRCT検査はILDの診断・分布・進行評価に欠かせません。
1)日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025作成委員会(編). 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025. 東京: メディカルレビュー社; 2025, p.140
図2

また、息切れや咳嗽などの呼吸器症状の評価には、修正版Medical Research Council Scale(mMRC)やCOPDアセスメントテスト(CAT)といった患者報告アウトカムを用いることができます(図3)。特に、初期のILDでは、無症状で患者さんご自身が気付いておられないことがしばしばあるため日々のコミュニケーションだけでなく客観的な指標を用いることも重要です。
図3

そして、呼吸機能検査は、患者さんの主観によらない客観的な評価ができる検査です。ILDの進行を継続的かつ客観的に評価し、適切なタイミングを逃さずに治療介入するために、胸部HRCT検査・呼吸器症状の評価と組み合わせて日常診療に組み込むことが有用と考えられます。
3 予後予測の観点からも重要な呼吸機能検査
呼吸機能検査は、ILDの重症度や進行の評価だけでなく、生命予後を予測する観点でも有用と考えられます。その根拠として、RA-ILD患者さん227例を対象に、生命予後と関節リウマチ及びILDの重症度指標の関連を検討した海外の研究の結果をご紹介します。
本研究では、関節リウマチの疾患活動性(DAS28-ESR寛解または低値vs.中等度または高値)及び/または対標準努力肺活量(%FVC)(80%以上vs. 80%未満)の組み合わせによって、対象を4群に分類しました。
その結果、寛解・低疾患活動性で%FVC 80%以上の群に対して、中等度・高疾患活動性で%FVC 80%以上の群と、寛解・低疾患活動性で%FVC 80%未満の群は、いずれも死亡リスクが約3倍に増加しました(図4)。この結果は、%FVCの低下が、関節リウマチの疾患活動性とは独立したRA-ILDの予後予測因子であることを示しています。
図4

4 呼吸機能検査から分かること
このような%FVCのほか、スパイロメトリーを用いた呼吸機能検査では、フローボリューム曲線や肺気量分画(スパイログラム)から複数の呼吸機能指標を得ることができます(図5)。
図5

得られた%肺活量と1秒率を組み合わせることで、換気障害の有無や種類(拘束性・閉塞性・混合性)の評価、さらには重症度を判定することができます(図6)。
図6

ILDでは、肺胞や間質の硬化・線維化が進行することで、吸気時の肺の拡張が制限されます。その結果として肺活量が減少し、%FVCが低下することで拘束性換気障害を呈します。過去の結果と比較して%FVCの低下がみられた際にはILDの進行や他の原因を疑い、胸部HRCT検査を含めた精査を行うことが重要です。
一方で、気管支などの呼気流速を制限する要因は通常伴わないため、息を吐きだす速度には大きな問題がなく、1秒率は低下しません(図7)。
図7

5 進行のサインをとらえるために継続的な呼吸機能検査の必要性
前述のように、ILDにおける進行性の線維化には複数の定義があり、定義ごとに%FVC低下で定義される疾患進行の基準は異なります(図1)。しかし、図8のデータに示されているように、使用される基準にかかわらず、ILD患者さんにおける%FVC低下の累積発生率は経時的に増加します。また、この研究におけるILD患者さんのうち、ベースライン%FVCの測定日から24ヵ月以内にいずれの基準でも%FVC低下が認められなかった割合は60.3%であり、残りの39.7%ではいずれか、または両方の基準で%FVC低下が認められました(図8)。
図8

さらに診断カテゴリー別での解析では、使用される基準によらず特発性肺線維症における%FVC低下の累積発生率が最も高く、過敏性肺炎、喫煙/薬剤関連肺疾患、CTD-ILDが続きました(図9)。
図9

CTD-ILDでは、原疾患の治療をしていても進行していく症例があります。したがって、呼吸機能検査を含む検査を継続的に実施し、早期に進行のサインをとらえることが、治療介入のタイミングを見極めるために重要と考えられます。
6 RA-ILDにおける呼吸機能検査の位置付け
日本呼吸器学会・日本リウマチ学会によって2025年にアップデートされた『膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025』では、RA-ILDの治療に対する判断には「RAによる関節炎自体の活動性と、ILDの進行性と重症度の両者の評価が必須」と解説され2)、そのILDの評価には呼吸器症状、胸部画像検査だけでなく呼吸機能検査も示されています(図10)。胸部HRCT検査だけでなく、呼吸機能検査も定期的に実施し、総合的に進行の有無を把握することが重要です。
2)日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025作成委員会(編). 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025. 東京: メディカルレビュー社; 2025, p.142
図10

7 まとめ
今回は、ILD診療における呼吸機能検査の重要性についてご紹介しました。まとめはご覧のとおりです。
- CTD-ILDにおける進行性の線維化の評価には、胸部HRCT検査・呼吸器症状・呼吸機能検査の3つが重要である
- CTD-ILDでは、原疾患の治療をしていても進行していく症例があるため、呼吸機能検査を含む検査を継続的に実施して早期に進行のサインを捉えることが、治療介入のタイミングを見極めるために重要と考えられる
- RA-ILDにおいてはRAそのものである関節炎の活動性と、ILDの進行・重症度の両者の評価が必要である
CTD-ILD:膠原病に伴うILD、HRCT:高分解能CT、RA-ILD:関節リウマチに伴う間質性肺疾患、RA:関節リウマチ
今回ご紹介した内容を、ILDを有する患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
- 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025作成委員会(編). 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025. 東京: メディカルレビュー社; 2025, p.140
- 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025作成委員会(編). 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025. 東京: メディカルレビュー社; 2025, p.142
その他の関連情報
特発性肺線維症および進行性肺線維症 国際診療ガイドライン2022(静止画)
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