心腎連関から考える合併症予防のための治療アプローチ
サイトへ公開:2025年11月10日 (月)
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慢性腎臓病(CKD)と心不全・心血管イベントリスクの関連性について、2025年度改訂版の心不全診療ガイドライン・疫学データを通じてご紹介した後、EMPA-KIDNEY試験の結果をご紹介いたします。


今お示ししている患者さんは、高血圧を合併しておりARBで様子は見ているものの、eGFRは47.5mL/min/1.73m2、eGFRスロープは-2.5mL/min/1.73m2/年の、心疾患の既往がある心不全ステージBの慢性腎臓病の患者さんです。
今回は、このような背景を有する患者さんの治療を考える上で、着目すべき点をご紹介いたします。

まず、2025年改訂版の心不全診療ガイドラインより、各心不全ステージの治療目標と病の軌跡についてお示しします。
本改訂では、ステージAの心不全リスク因子として「慢性腎臓病(CKD)」が新たに追記されました。
慢性腎臓病は心不全発症の危険因子であるため、心不全への進展防止や早期治療介入の重要性を考慮して明記されました1)。

ここからは、心不全イベントと腎機能との関連性について示されたデータをいくつか提示いたします。
左側のグラフは心房細動患者における蛋白尿の有無別、およびeGFR別に心不全イベント発生率を検討した観察研究の結果です。
心房細動患者をeGFR値により4つの群に分類したところ、eGFRの低下に伴って心不全イベントの発生率が増加し、蛋白尿の有無別でも、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者群を除き、蛋白尿を有する群において心不全イベントの発生率が有意に増加しました2)。
右側のグラフは、心筋梗塞後に退院した患者を対象にCKDステージ別の心不全発症リスクを検討した海外の疫学研究の結果です。CKDステージG1を基準とした場合、心不全発症のハザード比はG3aおよびG3bで1.43、G4では2.34とステージが進行するにつれてリスクが有意に増加しました3)。
これらの結果から、心不全の発症リスクを抑えるためには、早期CKDへの介入が重要なのではないでしょうか。

昨今注目されている1つの重要な指標としてeGFRの年間変化率を示す、eGFRスロープというものがあります。海外の疫学データによると、eGFRスロープ0mL/min/1.73m2を基準とした場合、eGFRスロープの低下速度が速くなるほど心不全発症リスクが増加し、eGFRが最も低下した群では心不全発症リスクが2倍以上となりました4)。
eGFRスロープを確認いただくことは、心不全の発症リスクを見逃すことなく、慢性腎臓病への治療介入をすることにつながります。

早期CKD患者において、eGFRスロープを緩やかにすることは、末期腎不全の進展抑制のサロゲートエンドポイントにもなりうると提唱されています8)。
治療効果の目安として、治療介入によりeGFRスロープの低下が年間あたり0.5~1.0mL/min/1.73m2緩やかになると、腎疾患進行が抑制される可能性があります9)。
また、右側のイメージ図のように、より早期の治療介入によってeGFRスロープの低下を緩やかにすることで、心臓・腎臓の両方を守ることに繋がる可能性が示唆されています10)。
ジャディアンス試験データ

ここからは、ジャディアンスの臨床試験データをご紹介いたします。
今お示ししているのは、ジャディアンスの主要な臨床試験の患者背景のまとめです。
心血管イベントリスクを有する2型糖尿病患者を対象に標準治療にジャディアンスを上乗せしたときの心血管疾患の罹患および死亡への長期の影響を検討したEMPA-REG OUTCOME試験 11)、慢性心不全の適応根拠となったEMPEROR試験 12) 13)、慢性腎臓病の適応根拠となったEMPA-KIDNEY試験 6)において、ジャディアンスは幅広い腎機能ステージの患者さんを対象に試験を実施してきました。
本日はこの中でも慢性腎臓病患者を対象にしたEMPA-KIDNEY試験を中心にご紹介いたします。

EMPA-KIDNEY試験は腎疾患進行のリスクのある慢性腎臓病患者を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与した時の腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対する有効性および安全性を、プラセボと比較検討した試験です 5) 6)。

有効性・安全性の評価項目、解析計画は記載の通りとなります。

本試験の特性として注目いただきたい点は、慢性腎臓病の適応取得を目的とした大規模臨床試験において初めて蛋白尿区分A1を組み入れ、eGFR値20以上の患者が登録された点です。
こちらにお示しのように、アルブミン尿、糖尿病の有無にかかわらず、幅広いeGFR値の慢性腎臓病患者が組み入れられております。糖尿病の合併無しの患者が54.2%、RAS阻害薬使用中の患者が85.2%でした。

こちらが全体集団とRAS阻害薬使用群における主要評価項目に対する結果です。
全体集団においては、ジャディアンス10mgの投与によって腎疾患進行または心血管死の初回発現リスクが27%低下しました。また、既にRAS阻害薬を投与中の患者においてもジャディアンス10mgの追加投与により、腎疾患進行または心血管死の初回発現リスクが29%低下しました。
腎機能低下に対するSGLT2阻害薬投与による影響

こちらは日本人集団におけるベースラインの糖尿病の有無、RAS阻害薬使用有無別に見た主要評価項目に対する結果です。
日本人においても、ジャディアンス10mgの投与により主要評価項目のリスクが56%低下しました。また、RAS阻害薬使用ありの群においてもジャディアンス群はプラセボ群に対して有意なリスク低下が認められました。

さらに、冒頭で心不全発症との関連性についてお示ししていたeGFRスロープに関するジャディアンスのデータをご紹介いたします。全期間におけるeGFRスロープは、プラセボ群に比べてジャディアンス10mg群で0.74mL/min/1.73m2/年と有意に負の傾きを緩やかにしました。
そして、2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期で見た際には、プラセボ群に比べてジャディアンス10mg群で1.36mL/min/1.73m2/年とeGFRスロープの負の傾きの有意な改善を示しました。
なお、eGFRのベースラインからの変化量の経時推移は、右側の図のとおり、18ヵ月でクロスしておりました。

ジャディアンス10mgのeGFRスロープに対する効果は、日本人集団においても示されました。

ジャディアンス10mg群、プラセボ群の治験薬投与期間中央値21.82ヵ月、21.53ヵ月での有害事象発現割合は、ジャディアンス10mg群で43.9%(1,444/3,292例)、プラセボ群で46.1%(1,516/3,289例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。
重篤な有害事象の発現率は、ジャディアンス10mg群で33.0%(1,086/3,292例)、プラセボ群で35.4%(1,164/3,289例)、投与中止に至った有害事象は、それぞれ7.0%(232/3,292例)、7.3%(240/3,289例)、死亡に至った有害事象は、それぞれ3.8%(126/3,292例)、4.1%(135/3,289例)でした。
今回は心疾患の既往がある慢性腎臓病(心不全ステージB)の患者さんにおけるCKDと心不全発症リスクとの関連性、およびEMPA-KIDNEY試験について解説いたしました。eGFRの継続的な低下は透析導入のリスクを高めるだけではなく、心不全をはじめとした心イベントリスクを増加させます。将来の心不全ステージの進展リスクを考慮したCKDの治療選択肢として、ジャディアンス10mg ※1をぜひご検討ください。
※1 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く
<参考文献>
- 日本循環器学会,日本心不全学会. 2025年改訂版心不全診療ガイドライン. 2025. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf(閲覧日 : 2025年8月15日)
- Ikeda S, et al. Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2023 ; 9 : 758-67. 著者にベーリンガーインゲルハイム社より講演料を受領している者が含まれます。
- Faridi KF, et al. Am J Cardiol. 2021 ; 151 : 70-7.
- Turin TC, et al. Int J Cardiol. 2016 ; 202 : 657-65.
- 社内資料. 腎疾患進行リスクのある慢性腎臓病患者を対象とした国際共同第Ⅲ相・検証試験(承認時評価資料).
- Herrington WG, et al. N Engl J Med. 2023 ; 388 : 117-27. この試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
- ジャディアンス電子添文2025年9月改訂(第8版) .
- 厚生労働省・AMED研究班報告. 早期慢性腎臓病の治療薬開発におけるサロゲートエンドポイントを用いた臨床評価ガイドライン. https://jsn.or.jp/academicinfo/report/surrogate-endpoint_guideline_20230222.pdf(閲覧日 : 2025年8月15日)
- Levey AS, et al. Am J Kidney Dis. 2020 ; 75 : 84-104.
- Levey AS, et al. Am J Kidney. 2014 ; 64 : 821-35.
- Zinman B, et al. N Engl J Med. 2015 ; 373 : 2117-28. この試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
- Packer M, et al. N Engl J Med. 2020 ; 383 : 1413-24. この試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
- Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021 ; 385 : 1451-61. この試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
その他の関連情報
G3aで正常アルブミン尿の2型糖尿病を併発しているCKDのリスクを考える
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