Specialist Interview 第1回 遺伝子検査 神田慎太郎先生
サイトへ公開:2023年06月29日 (木)
ご監修:神田 慎太郎 先生(信州大学医学部附属病院 信州がんセンター 准教授)
(2023年6月時点)
近年、EGFR遺伝子をはじめとするドライバー遺伝子に対する分子標的治療薬が数多く登場してきました。そうした中で、進行再発非小細胞肺癌の初回治療前の治療選択においては、複数のバイオマーカーを同時に検索できるマルチプレックス検査が勧められています1)。複数あるマルチプレックス検査をどのように使い分けるかや、遺伝子検査の結果に応じてどのような治療戦略をとるかについて迷われるといったこともあるかもしれません。
そこで、本シリーズでは、EGFR遺伝子変異の実際や、EGFR遺伝子変異の結果に応じた治療戦略について、肺癌治療のスペシャリストの先生方へ伺います。
今回は、EGFR遺伝子検査の実際と、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC治療におけるジオトリフの位置づけに関して、信州大学医学部附属病院 信州がんセンター 准教授の神田 慎太郎 先生にお伺いします。
進行再発非小細胞肺癌の初回治療前の遺伝子検査をどのように行っていますか?
現在の肺癌治療はドライバー遺伝子変異に基づく個別化医療が主流ですから、遺伝子検査は必須といえます。当院では、患者さんにそのことを説明した上で、ほぼ全例、確定診断時に遺伝子検査を行っています。当院では確定診断にあたり、呼吸器内科医が気管支鏡検査による生検を行っているのですが、その病理学的検査で確定診断が得られれば、同じ生検検体で遺伝子検査を行います。
検査はどのように選択されているのでしょうか?
日本肺癌学会発行の手引きでは、初回治療前の治療選択において複数のバイオマーカーを同時に検索できるマルチプレックス検査が勧められており(図1)1)、当院でも、適切な検体が得られれば基本的にはマルチプレックス検査を行っています。
図1

現在EGFR-TKIのコンパニオン診断に使用できるマルチプレックス検査は複数あります(図2)2)。どのように使い分けていますか?
図2

マルチプレックス検査を選択するポイントは、以下の3つです。
① 検査によって得られる情報量
② 検査に必要な検体量
③ 検査結果が得られるまでにかかる時間
① 検査によって得られる情報量
検査によって得られる情報量は、検査原理によって異なります。現在のマルチプレックス検査では、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法または次世代シークエンサー(NGS)法が用いられています。これらはいずれも高い検出感度が認められていますが、一般的に、予め設計された特定の変異を検出するqPCR法に比べて、NGS法ではより多くの変異を含む複数遺伝子を検出することができます(図3)3)。実際にコンパニオン診断としての両者の情報量に大きな差はないと考えていますが、当院ではコンパニオン診断以外の部分で参考にできる情報に期待して、できる限りNGS法の検査システムを利用する方針としています。
② 検査に必要な検体量
必要な検体量は検査によって異なります。NGS法では腫瘍細胞が豊富なエリアが10mm2未満の場合、それ以上の場合と比較して検査の成功率が低下すること(69% vs 97%以上、*P < 0.001、Kruskal-Wallis順位和検定)が報告されています4)。最近は、クライオバイオプシーや新しいデバイスを気管支鏡検査に用いることで、以前より検体を多く採取できることが増えてきています。しかし、それでも検体量が十分確保できない場合には、その状況に応じて検査システムを選択する必要があります。
③ 検査結果が得られるまでにかかる時間
検査結果が得られるまでにかかる時間、Turn Around Time(TAT)も検査によって異なります。実際にNGS法を利用していると、初診から治療を開始するまでに1ヵ月弱かかることが多いです。一般的に、qPCR法はTATが短く、急速に進行する症例など治療を急ぐ場合に適しています(図3)3)。
図3

図4は、AmoyDx肺癌マルチ遺伝⼦PCRパネルの承認前に作成された当院の遺伝子検査フローチャートです。現在では、オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステムを基本に、それが適さない場合にAmoyDx肺癌マルチ遺伝⼦PCRパネルを使用しています。
図4
結果を見る際には、どのような点に注目していますか?
各ドライバー遺伝子の変異の有無はもちろんですが、EGFR 遺伝子変異が陽性の場合、どの変異かという点に注目し、変異に応じた治療戦略を立てることが重要です。
特にCommon mutation(Exon19欠失やL858R)なのか、それともUncommon mutationなのかがポイントです。私は、Common mutationかUncommon mutationかによって患者さんに勧める治療選択を変えています。また、Common mutationの中でも、Exon19欠失なのかL858Rなのかという点は、予後や治療反応性の観点で意識します。
Common mutation(Exon19欠失やL858R)かUncommon mutationかで患者さんに勧める治療選択を変えているということですが、ジオトリフは先生の治療戦略の中でどのように位置づけられますか?
私は、ジオトリフをEGFR 遺伝子変異陽性肺癌の中でも、特にUncommon mutationにおいて有力な治療選択肢と位置づけています。
さまざまなEGFR遺伝子変異に対するEGFR -TKIの親和性をin vitro で検討した基礎研究では、ジオトリフは幅広いEGFR遺伝子変異に対する親和性が示されています(図5)。
図5

また、基礎研究だけでなく、臨床試験であるLUX-Lung 2,3,6試験の統合解析などにおいてもUncommon mutationに対するジオトリフの有効性は検討されています。
こうしたことから、ジオトリフはUncommon mutationに対する治療選択肢と考えられます。
【LUX-Lung 2,3,6統合解析について】
本解析は、エクソン18-21の点突然変異または重複変異を有するグループ1、T790M変異を有するグループ2、エクソン20挿入変異を有するグループ3に層別して行われました。

グループ1における主な遺伝子変異は、L861Q、G719X、S768Iなどでした。

PFS中央値は、グループ1で10.7ヵ月、グループ2で2.9ヵ月、グループ3で2.7ヵ月でした。

奏効率は、グループ1で71.7%、グループ2で14.3%、グループ3で8.7%であり、グループ1ではCRも認められました。

発現頻度の高かったG719X、L861Q、S768Iにおける奏効率は77.8%、56.3%、100%、PFS中央値は13.8ヵ月、8.2ヵ月、14.7ヵ月でした。

なお、本解析では、安全性情報を収集しておりません。安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください。
まとめ
- マルチプレックス検査を選択するポイントは以下の3つ
① 検査によって得られる情報量
② 検査に必要な検体量
③ 検査結果が得られるまでにかかる時間 - EGFR遺伝子変異が陽性の場合、どの変異かという点に注目し、それに応じた治療戦略を立てることが重要
- ジオトリフはLUX-Lung 2,3,6統合解析の結果などからUncommon mutationに対して治療選択肢のひとつと考えられる
【引用】
- 日本肺癌学会バイオマーカー委員会. 肺癌患者における次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査の手引き. 2021年10月20日 第2.0版. p18.
- PMDA. コンパニオン診断薬等の情報. https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html(2023年4月アクセス) 畑中豊, ほか. 肺癌. 2022;62:15-25.より改変
- Pujol N, et al.: J Pers Med. 2022;12(10):1684.
- Goswami RS, et al. Am J Clin Pathol. 2016;145(2):222-37.
その他の関連情報
Specialist Interview 第2回 (Uncommon)
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