糖尿病治療におけるshared decision makingの重要性
サイトへ公開:2022年05月30日 (月)
田中 永昭 先生(関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター 部長※)
※インタビュー実施当時
近年、糖尿病治療における意思決定プロセスとして、共同意思決定(shared decision making;SDM)が注目を集めています。糖尿病治療におけるSDMの重要性について、関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター 部長の田中 永昭 先生にご解説いただきます。ぜひご覧ください。
はじめに-目標達成支援に不可欠なSDM-
糖尿病はさまざまな職種による多面的なコラボレーションが不可欠な疾患であり、チーム医療が普及した現在では、医師だけでなく、看護師、薬剤師、管理栄養士など複数の医療者が連携した治療計画が行われています。
これまでの糖尿病治療計画の変遷を振り返ると、知識を持つ者から知識のない者への「教える指導」から、教えられる相手がより理解しやすいように行う「伝える指導」に、さらには患者さん本人が持っている答えを引き出す「気付く指導」へと変わってきました。そして現在では、患者さんが持つ目標を医療者と共有し、達成するための方法を一緒に考えていく「共有する治療計画」が行われるようになっています。
このような背景から近年では、「療養指導」という一方向な表現を、「目標達成計画」という患者さん中心の表現に改めようという考えが注目を集めています。「目標達成計画」とは、医療者が患者さんと目標をともに考えて設定し、その目標を達成するために話し合うことであり、この目標達成計画の実践には共同意思決定(shared decision making;SDM)のプロセスが欠かせません(図1)。

1. 糖尿病治療におけるSDMとは
SDMは「患者さんと医師が協力して、患者さん自身の状況を考慮しながら、最適なヘルスケアの選択を決定するプロセス」と定義されます1)。現在、医療現場で用いられている意思決定プロセスとして、インフォームドコンセント(IC)があります。ICは治療選択肢を医療者が提示するもので、医療者の影響が大きいプロセスといえます。確実なエビデンスのある治療が限定される疾患ではICが適しており、逆にエビデンスのある治療が複数あり、患者さんの価値観や好みを治療選択に反映できる疾患にはSDMが適していると考えられます。
SDMの実践には多職種の協働、情報・意識共有が不可欠であり、チーム医療による関与が望まれます。その意味で、多くの患者さんが様々な合併症や依存症を有し、治療薬のプロファイルも多種多様で、かつチーム医療が広く実践されている糖尿病はSDMを行うに適した疾患といえます。
糖尿病治療のSDMプロセスにおいて、医療者は「糖尿病治療の専門家」の視点から患者さんに対して診断や必要な教育と情報、エビデンスに基づく治療選択肢を提供し、患者さんとご家族は「患者さん自身の専門家」として価値観や好み、人生の目標などを医療者に伝えます。そして、これらの情報を基に医療者と患者さんが話し合い治療方針を決定していきます2)。
SDMに用いられるツールの検討も国内外で進んでおり、糖尿病治療における意思決定ツール(decision aids;DA)の有用性に関する米国の検討では、DAの利用によって、意思決定の葛藤の減少、知識やコミュニケーション、意思決定過程への参加の増加などが示されています3)。
2. SDMの観点からみるトラゼンタ®の特徴
2型糖尿病の薬物療法において、日本ではDPP-4阻害薬が多く用いられています4)。DPP-4阻害薬の一つであるトラゼンタ®は主に胆汁から未変化体で排泄されるため、腎機能の程度によらず1日1回1錠5mgの投与で治療を行うことが可能です(図2)5)6)。
また、トラゼンタ®では、これまでに実施された21の二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験における、アジア人全体、また東アジア人サブグループについて、トラゼンタ®単独および併用投与の安全性および忍容性を評価した併合解析の結果が報告されています(図3)7)。
解析対象は、アジア人2型糖尿病患者4,457例(トラゼンタ®群2,712例、プラセボ群1,745例)で、東アジア人の割合はトラゼンタ®群で67.0%、プラセボ群で71.1%でした(表1)。
評価項目は有害事象全体、特に注目すべき有害事象(血管浮腫、類天疱瘡、心不全、肝障害、過敏症、低血糖、間質性肺疾患、腸閉塞、膵癌、膵炎、横紋筋融解症、皮膚病変、腎機能悪化)、臨床検査値を検討しています。
有害事象はトラゼンタ®群で1,510例(55.7%)、プラセボ群で1,032例(59.1%)に認められ、治験担当医師により薬剤関連と判定された有害事象は、それぞれ352例(13.0%)、226例(13.0%)に認められました(表2)。
主な有害事象はトラゼンタ®群で低血糖197例(7.3%)、上咽頭炎174例(6.4%)、上気道感染155例(5.7%)、高血糖103例(3.8%)など、プラセボ群で上咽頭炎127例(7.3%)、上気道感染113例(6.5%)、低血糖104例(6.0%)、高血糖93例(5.3%)などでした。
投与中止に至った有害事象はトラゼンタ®群76例(2.8%)、プラセボ群68例(3.9%)、重篤な有害事象はそれぞれ109例(4.0%)、90例(5.2%)に認められました。死亡に至った有害事象は2例(0.1%)、4例(0.2%)でした。なお、投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象、死亡に至った有害事象について、個別の事象名は論文中に記載がありませんでした。
特に注目すべき有害事象は表3にお示しする通りで、血管浮腫がトラゼンタ®群23例(0.85%)、プラセボ群8例(0.46%)、過敏症がそれぞれ81例(2.99%)、43例(2.46%)、心不全は3例(0.11%)、1例(0.06%)でした。





おわりに
患者さん一人ひとりの人生の目標はそれぞれ異なります。糖尿病であることがその目標達成の妨げにならないように、これからの糖尿病治療では、SDMによる患者さん中心の治療の実践が望まれます。
SDMの実践にあたり、トラゼンタ®の薬剤特性、および東アジア人における安全性エビデンスは、有用な情報の一つと考えられます。
References
- NHS England:Shared decision making. https://www.england.nhs.uk/shared-decision-making/about/
- 田中永昭. 糖尿病治療のニューノーマル. さかえ: 月刊糖尿病ライフ. 2021; 61: 17-21.
- Tamhane S, et al. Curr Diab Rep. 2015; 15: 112.
- Bouchi R, et al. J Diabetes Investig. 2022; 13: 280-291.
- トラゼンタ®錠インタビューフォーム.
- Blech S, et al. 社内資料 ヒトでの代謝物検討試験.
- Kanasaki K. et al. Expert Opin Drug Saf. 2021 Nov 10; 1-10.
その他の関連情報
2型糖尿病治療における腎機能を考慮したトラゼンタ®の位置づけ
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