Effisayil-1試験の試験デザイン
サイトへ公開:2022年09月26日 (月)
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監修:
本間 大 先生
旭川医科大学 国際医療支援センター 教授
はじめに
膿疱性乾癬(GPP)は、急性症状が時に生命を脅かすこともある希少疾患です。「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」に「膿疱性乾癬(汎発型)は症例数が少なく、重症度が高いことから大規模な比較試験などのエビデンスレベルの高い検討は困難である」1)とされているとおり、その疾患特性のため、二重盲検無作為化試験による治療薬の効果検証が困難だと考えられてきました。実際に、従来わが国でGPPの治療に用いられてきた薬剤は、少数例に対する非盲検、単一用量試験の結果に基づいて承認されています。
2022年9月に承認されたGPPの治療薬であるスペビゴ®は、GPPの急性症状が認められる患者を対象に行われた初めての二重盲検無作為化試験であるEffisayilᵀᴹ 1試験において有効性が検証されました2)3)。
Effisayilᵀᴹ1試験の試験デザインの特徴
Effisayilᵀᴹ1試験は、世界12ヵ国(37施設)から登録された中等度から重度の急性症状が認められるGPP患者53例を対象に行われました。GPPは希少疾患であり的確な患者数が限られています。Effisayilᵀᴹ1試験においては、スペビゴ®の安全性に関するデータ集積の向上を実現するために2:1の不均衡割り付けが行われ、内訳はスペビゴ®群35例に対しプラセボ群が18例となっています(図1)。
登録患者のスクリーニング時のGPPの診断は、European Rare And Severe Psoriasis Expert Network(ERASPEN、欧州の希少で重度の乾癬専門家ネットワーク)が定めるコンセンサス診断基準に基づいて行われました(表1)。ERASPENの基準では、GPPの診断にあたって全身の炎症症状の有無は問われていないため、Effisayilᵀᴹ1試験では皮膚症状によって患者登録が選択されました。なお、日本から参加した2例の患者は、ERASPEN診断基準に加えて、日本皮膚科学会「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン」1)の診断基準に基づいて、GPPの既往の有無を確認しています(表1)。


Effisayilᵀᴹ1試験の評価に用いられた指標の特徴
GPP患者を対象に行われた臨床試験であるEffisayilᵀᴹ1試験の特徴の1つに、重症度評価にGPPに特化した指標が用いられていることが挙げられます。
スペビゴ®の臨床試験開始以前には、GPPに特化した重症度評価指標は存在していませんでした。ベーリンガーインゲルハイムが外部のGPP診療の専門家とともに、GPPに特化した新たな重症度評価指標として作成した指標がGPPGA(Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment、表2)とGPPASI(Generalized Pustular Psoriasis Area and Severity Index)*です。GPPGAは乾癬に対する医師の全般的評価(Physician's Global Assessment: PGA)を、GPPASIは乾癬における病巣範囲の程度の評価(Psoriasis Area and Severity Index: PASI)をもとに作成されました。GPPの皮膚病変の特徴をより反映させるため、乾癬の重症度評価における「肥厚」のコンポーネントは、GPPの主な特徴である「膿疱」に書き換えられています。Effisayilᵀᴹ1試験をはじめとするGPPを対象としたスペビゴ®の臨床試験において、GPPGA/GPPASIは一貫して重症度評価の指標として用いられています。

Effisayilᵀᴹ1試験においては、主要評価項目は1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼的に膿疱が見えない)達成率、重要な副次評価項目は1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率、階層型の統計学的手順に含まれる4つの副次評価項目の1つ目は4週時におけるGPPASIが75%以上減少(GPPASI 75)達成率が設定されました(図1)。
*GPPASI:汎発性膿疱性乾癬面積重症度指数。乾癬の重症度と面積の指標として確立されているPASI(Psoriasis Area and Severity Index)をGPP用に改変したもので、病変の状態を0~72でスコア化する。
Effisayilᵀᴹ1試験にエントリーされた患者のベースライン特性
患者の選択基準(図1)に基づき、Effisayilᵀᴹ1試験のすべての登録患者は中等度から重度のGPPの急性症状が認められる患者です。Effisayilᵀᴹ1試験における中等度から重度のGPP急性症状の定義は、「GPPGA合計スコア3以上、GPPGA膿疱サブスコアが2以上、体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を認める」でした。また、登録患者のGPPの罹病期間は初回診断から10年超の割合がスペビゴ®群で48.6%、プラセボ群で33.3%、GPPの急性症状の平均年間発生回数は、スペビゴ®群、プラセボ群両群ともに平均で3回を超えていることが確認されています(表3)。

近年の遺伝学的検討により、GPP発症とIL-36Rを介したシグナル伝達経路の突然変異との関連性が示されており4)5)、GPP患者におけるIL36RN遺伝子変異の有無が注目されていますが、Effisayilᵀᴹ1試験に登録されたGPP患者の約7割においてIL36RN遺伝子変異は認められていません(表4)。主要評価項目、重要な副次評価項目、副次評価項目は、IL36RN遺伝子変異の有無別にサブグループ解析が行われており、臨床の観点からは注目される結果の1つであるといえます。

おわりに
Effisayilᵀᴹ1試験という、急性症状が認められるGPP患者を対象とした初めてのプラセボ対照二重盲検比較試験が実施されたことは、症状に苦しむ患者の身体的・精神的負担の解消を目指したGPP治療の実現に向けて意義あることだと考えられます。Effisayilᵀᴹ1試験の結果が、今後のさらなるGPPの病態解明や治療の充実へとつながっていくことを期待したいと思います。
References
- 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-2257.
- 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayilᵀᴹ 1試験)(CTD 2.7.6.3.2)[承認時評価資料]
- Bachelez H, et al. N Engl J Med. 2021; 385(26): 2431-2440.
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。 - Marrakchi S, et al. N Engl J Med 2011; 365(7): 620-628.
- Onoufriadis A, et al. Am J Hum Genet 2011; 89(3): 432-437.
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