GPPの病態形成におけるIL-36による炎症誘導とは
サイトへ公開:2024年10月30日 (水)
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監修:
澤田 雄宇 先生
産業医科大学医学部 皮膚科学教室 教授
1.はじめに
膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis; GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する疾患で、再発を繰り返すことが特徴です。GPPの臨床症状や急性症状の重症度は多岐にわたりますが、適切な治療がなされなかった場合、敗血症、腎不全、呼吸不全などを併発し、生命を脅かす可能性もあります1)。
GPPは自然免疫の関与が一因として知られている自己炎症疾患で、GPPに特徴的な無菌性膿疱の形成は好中球、T細胞、樹状細胞、単球などの自然免疫系の細胞を活性化させるIL-36を介したシグナル伝達によって引き起こされると考えられています2)3)。
GPPの急性症状は生命に関わる場合もあるため、早期診断・早期治療が重要となります。ここでは、GPPの病態におけるIL-36シグナル伝達経路の役割を解説するとともに、中等度から重度の急性症状*1が認められる患者さんを対象に行われたEffisayilTM 1試験よりヒト化抗ヒトIL-36レセプターモノクローナル抗体製剤であるスペビゴ®の有効性・安全性を紹介します。
*1 EffisayilTM 1試験における中等度から重度のGPP急性症状の定義:
GPPGA合計スコア3(中等度)以上、および/ 新たな膿疱の存在(膿疱の新規形成または増悪)、および/ GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上、および/ 体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を有する
[参考]GPPGA(膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価[Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment])では、すべての病変に対して各構成要素を評価し、各構成要素の重症度は5段階尺度で評価されます(図1)。GPPGA合計スコアは、すべてのGPP病変の膿疱、紅斑、鱗屑/痂皮を0(消失)~4(重度)で評価し、各構成要素のスコア(サブスコア)の平均値[(膿疱サブスコア+紅斑サブスコア+鱗屑/痂皮サブスコア)÷3]から算出します。

2.IL-36による炎症反応の誘導
IL-36シグナル伝達を誘導するIL-36は、IL-1ファミリーに属するサイトカインの一種であり、ケラチノサイトを含む様々な細胞で発現しています。IL-36にはIL-36α、IL-36β、IL-36γという3つの異なるアイソフォームがあり、ストレス、薬物、外傷、喫煙、病原体などの刺激をトリガーとしてケラチノサイトから放出され、細胞外にあるプロテアーゼにより活性化されます4)。活性化されたIL-36がIL-36受容体(IL-36R)に結合すると、MAPキナーゼ(MAPK)やNF-κBを介して炎症性サイトカインやケモカインが誘導され、樹状細胞や好中球などの免疫細胞が活性化します5)。
マウスの末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell; PBMC)を用いて、IL-36α刺激がTh17細胞に関連する遺伝子発現に及ぼす影響を検討した研究が行われました6)。その結果、IL-36α刺激により、Th17細胞の転写因子であるRORγやIL-17の発現増加が認められました(図2)6)。
また、ヒトのPBMCを用いて、IL-36α刺激によるTh17細胞に関連する遺伝子の発現変化を検討した研究では、刺激後2時間でTNF-αおよびIL-6のmRNA量が増加し、刺激後6時間でそれぞれのタンパク量が増加していることが示されました7)。さらにIL-17、TNF-α存在下では、TNF-αおよびIL-6の発現増加が認められました(図3)7)。以上の結果から、IL-36によって誘導されたIL-17AおよびTNF-αは、さらなる炎症反応を誘導すると考えられます7)。


3.GPPの病態形成におけるIL-36シグナル伝達経路の役割
ケラチノサイトはサイトカインなどを介して免疫細胞とクロストークしていることが知られています8)。ヒトケラチノサイトを用いて、IL-17A、IL-36刺激による遺伝子発現の変化を検討した研究が行われました9)。ヒトケラチノサイトをIL-17Aで刺激した結果、IL-36をコードする遺伝子IL36A、IL36B、IL36Gの発現増加が認められました(図4)9)。さらに、IL-36α、β、γ刺激によるIL36Gの発現を検討したところ、活性を示すIL-36α、β、γの切断型変異体を加えたケラチノサイトにおいて、IL36Gの発現増加が認められました(図4)9)。以上の結果から、IL-36はIL-17Aシグナルと協調し、持続的な炎症を促進する増幅メカニズムを有することが示唆されます9)。
また、ヒトケラチノサイトを用いて、IL-36刺激によるケモカイン産生を検討した研究では、IL-36α、β、γを加えたケラチノサイトで白血球の遊走を誘導するCXCL1、CXCL8、CCL3、CCL5、およびCCL20の発現増加が認められました(図5)10)。さらにCXCL1、CXCL8の発現はIL-36濃度依存的に増加したことも示されています(図5)10)。
これらの結果はIL-36で刺激されたケラチノサイトが免疫細胞の遊走を誘導するケモカインを産生することを示唆しており10)、IL-36を介したケモカインの産生によりGPPの病態形成が誘導されると考えられます。


4.急性症状に対するスペビゴ®の臨床成績
4-1)試験デザイン
EffisayilTM 1試験は、急性症状を有するGPP患者さんを対象に行われた初めての二重盲検無作為化比較試験です11)12)。日本人患者2例を含む対象患者53例を、スペビゴ®群2に対しプラセボ群1の割合で割付け(図6)、900mgを単回静脈内投与しました。両群ともGPPが悪化した場合は治験担当医師の選択によるエスケープ治療(標準治療)を実施可とし、エスケープ治療を受けておらず症状が持続する患者(GPPGA合計スコア2以上かつGPPGA膿疱サブスコア2以上)には、8日目にスペビゴ® 900mgを非盲検下で救援投与しました。また、8日目以降、急性症状が再燃(臨床的奏効[GPPGA合計スコア0または1]達成後に、GPPGA合計スコア2以上かつGPPGA膿疱サブスコア2以上増加)した場合は、非盲検下でスペビゴ®救援投与を1回のみ実施可としました。
主要評価項目(検証的な解析項目)は「1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼的に膿疱が見えない)達成率」、重要な副次評価項目(検証的な解析項目)は「1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率」です。なお、EffisayilTM 1試験を含むGPP患者を対象としたすべてのスペビゴ®の臨床試験で、GPPに特化した重症度評価指標として新たに作成されたGPPGA/GPPASI*2が用いられています(図6)。
*2 GPPASI:汎発性膿疱性乾癬面積重症度指数(Generalized Pustular Psoriasis Area and Severity Index)。乾癬の重症度と面積の指標として確立されているPASI(Psoriasis Area and Severity Index)をGPP用に適合させたもの。GPPASI病変の状態を0~72でスコア化している。

4-2)EffisayilTM 1試験の臨床成績
主要評価項目(1週時のGPPGA膿疱サブスコア0達成率:スペビゴ®群54.3%[19/35例]、プラセボ群5.6%[1/18例])、重要な副次評価項目(1週時のGPPGA合計スコア0/1達成率:スペビゴ®群42.9%[15/35例]、プラセボ群11.1%[2/18例])において、スペビゴ®群はプラセボ群に比べて1週時における膿疱および皮膚症状の有意な改善が認められました(それぞれ片側p=0.0004、片側p=0.0118、いずれもSuissa-Shuster Z-pooled検定、検証的な解析項目。図7)。

4-3)EffisayilTM 1試験の安全性
EffisayilTM 1試験では、1週時と12週時に安全性の評価を行っています。
1週時までに、スペビゴ®群12例(34.3%)、プラセボ群6例(33.3%)に副作用が発現しました。主な副作用は、スペビゴ®群では膿疱性乾癬5例(14.3%)、末梢性浮腫2例(5.7%)、プラセボ群では膿疱性乾癬3例(16.7%)、末梢性浮腫1例(5.6%)でした。
1週時までに発現した重篤な有害事象はスペビゴ®群で5例(14.3%)、プラセボ群で3例(16.7%)に発現しました。内訳は、スペビゴ®群が膿疱性乾癬4例(11.4%)、好酸球増加および全身症状を伴う薬物反応、尿路感染、薬剤性肝障害および関節炎が各1例(2.9%)、プラセボ群が膿疱性乾癬3例(16.7%)でした。
投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象は報告されませんでした(表1)。

5.おわりに
本稿ではIL-36シグナル伝達経路により、免疫細胞やケラチノサイトが活性化され、ケラチノサイトにおける炎症性サイトカインや好中球ケモカイン、リンホカインの発現が誘導されることをご紹介しました。
GPPの急性症状は生命を脅かすだけでなく、患者さんのQOLを損なう要因の1つでもあるので、早期診断・早期治療が重要となります。そのためには、患者さんが急性症状の兆候となる症状を我慢してしまったり、急性症状が現れた時に受診を躊躇してしまったりしないようにサポートすることが必要だと考えます。産業医科大学では、GPPと診断した時に、疾患に関する説明に加えて、体調の変化を感じた際は医局もしくは教授宛てに直接ご連絡いただくよう、患者さんやご家族へお伝えしています。
GPPは症状や合併症に多様性があるため、各患者さんの病態に即した治療を選択することが重要です。急性症状を有するGPP患者を対象に行われた初めての二重盲検無作為化比較試験であるEffisayilTM 1試験ではスペビゴ®投与により投与1週時点の膿疱および皮膚症状がプラセボに比べて有意に改善したことが報告されました。EffisayilTM 1試験で示されたデータを踏まえると、GPPの主要炎症経路であるIL-36を直接的に遮断するスペビゴ®は、GPPの急性症状に対する選択肢の1つになると考えられます。
References
- 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-2257.
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(著者にベーリンガーインゲルハイム社より講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれます。) - Samotij D. et al. Int J Mol Sci. 2021; 22(16): 9048.
- Queen D, et al. Front Cell Dev Biol. 2019; 7: 317.
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- Foster AM, et al. J Immunol. 2014; 192(12): 6053-6061.
- 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第Ⅱ相二重盲検比較試験(Effisayil-1試験)(CTD 2.7.6.3.2)[承認時評価資料]
- Bachelez H, et al. N Engl J Med. 2021; 385(26): 2431-2440.
(本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。)
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