指定難病における特発性間質性肺炎の診断基準等のアップデート(静止画)
サイトへ公開:2024年05月30日 (木)
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ご監修:須田 隆文先生(浜松医科大学 内科学第二講座 教授)
このたび、一部の指定難病の医療費助成申請のための診断基準等のアップデートが、最新の医学的知見を踏まえて行われました。特発性間質性肺炎(IIPs)も、診断基準や重症度分類のアップデートが行われた指定難病のひとつに含まれています。
今回は、IIPsの指定難病診断基準等のアップデートについて紹介します。
難病法における難病・指定難病の定義
最初に、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)における難病と指定難病の定義をみていきましょう。
難病とは、「発病の機構が明らかでなく」「治療方法が確立していない」「希少な疾病であって」「長期にわたり療養を必要とするもの」を指します。
指定難病とは、難病のうち、「患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%前後)に達しないこと」「客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること」という2つの要件全てを満たすものを、患者の置かれている状況からみて良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、厚生科学審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定しています(図1)。
図1

指定難病の医療費助成を申請できるのは、原則として①「指定難病」の診断と、②「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の2つの要件を全て満たす場合であることが「難病法」に示されています(図2)。
図2

指定難病としてのIIPs_概要
続いて、指定難病としてのIIPsをみていきましょう。
IIPsは、平成27年(2015年)1月の難病法施行時に第1次疾病として指定難病に追加されました。
指定難病の医療費助成を受けているIIPs患者数は、2016年時点では9,104人でしたが、年々増加し、2022年時点では17,665人となっています(図3)。
図3

今回アップデートされた指定難病としてのIIPsの分類は、主要なIIPsとして「特発性肺線維症(IPF)」「特発性非特異性間質性肺炎(idiopathic NSIP)」を含む6疾患、まれなIIPsとして「特発性リンパ球性間質性肺炎(idiopathic LIP)」「特発性胸膜肺実質線維弾性症(idiopathic PPFE/iPPFE)」の2疾患、さらに「分類不能の特発性間質性肺炎(unclassifiable IIPs)」とあわせて9疾患となっています(図4)。
図4

IIPsの指定難病診断基準等のアップデート内容
アップデートされたIIPsの診断基準と重症度分類について、詳しくみていきましょう。
診断基準
指定難病としてのIIPsの診断基準に関しては、診断のカテゴリーとしてDefinite(組織診断群)とProbable(臨床診断群)が設定されました(図5)。臨床診断群が設定されたことで、外科的肺生検による組織所見がない場合でも、「A.主要所見」、「B.検査所見」の①血清学的検査と②呼吸機能に関する基準のいずれか、③胸部高分解能CT(HRCT)所見のすべてを満たせばIIPsの診断ができるようになりました。
図5

A.主要所見
主要症状及び理学的所見の基準は、「捻髪音(fine crackles)」「乾性咳嗽」「労作時呼吸困難」「ばち指」のうち、2項目以上を満たすことです。従来基準で必須とされていた捻髪音は、一部の症例では聴取されないこともあるため、今回のアップデートにより必須ではなくなりました。
B.検査所見 ①血清学的検査の基準
血清学的検査の基準は、KL-6上昇、SP-D上昇、SP-A上昇の1項目以上を満たすことです。従来基準に含まれていたLDHは非特異的であるため削除されました。SP-Aについて、保険適用で測定できないため削除してもよいのでは、という意見もありましたが、残すことになりました。
B.検査所見 ②呼吸機能に関する基準
呼吸機能に関する基準は、拘束性障害、拡散障害、低酸素血症の1項目以上を満たすことです。従来基準では軽症例が項目を満たさないという意見があったため、従来基準から満たすべき項目数が2つから1つになりました。
B.検査所見 ③胸部HRCT所見の基準
胸部HRCT所見の基準は、網状影、すりガラス影、浸潤影(コンソリデーション)1項目以上を両側性に認めることです。診断ではHRCTが有用であるというコンセンサスが得られたため、従来基準の胸部X線画像所見から胸部HRCT所見に変更となりました。
臨床診断群については、さらにIPFの臨床診断基準及びiPPFEの臨床診断基準を用いて診断を行い、どちらの診断基準も満たさない場合は分類不能のIIPsと診断します。IPFの臨床診断基準及びiPPFEの臨床診断基準は図6にお示しのとおりです。
図6

重症度分類
図7にお示しのとおり、すべてのIIPsにおいて、安静時PaO2※1では重症度Ⅰ度と判定される場合でも、6分間歩行時最低SpO2※2が90%未満の場合は、指定難病の医療費助成の対象となる重症度Ⅲ度とすることが新たに示されました※3。
今回のアップデートにより、従来の基準では安静時PaO2の測定結果が重症度Ⅰ度だったために指定難病の医療費助成の対象外だった患者さんでも、新たな基準では6分間歩行時最低SpO2 90%未満の基準を満たせばⅢ度となり、医療費助成の申請が可能になります。予後不良で治療が必要なIIPs患者さんが適切にサポートされるようになることが期待されます。
※1 PaO2:動脈血酸素分圧
※2 SpO2:経皮酸素飽和度
※3 ただし、症状の程度が疾病ごとの重症度分類等に該当しない軽症者でも、高額な医療を継続することが必要な人は、医療費助成の対象となる(軽症高額)1)
図7

まとめ
今回は、IIPsの指定難病診断基準等のアップデートについて紹介しました。
今回のアップデートによって、今まで申請できなかったIIPs患者さんや、iPPFE患者さんも指定難病の医療費助成の対象となりました。臨床診断群として、主要所見、検査所見などにより指定難病としてのIIPsの診断が可能になりました。このことで、これまで外科的肺生検がハードルとなって組織所見を得られず、診断をつけられなかった患者さんでも、指定難病としてのIIPsの診断ができるようになりますので、指定難病の医療費助成が必要な患者さんが申請できるようになると思います。
さらに、安静時PaO2では重症度Ⅰ度の判定でも、6分間歩行時SpO2 90%未満であれば、指定難病の医療費助成の対象となる重症度Ⅲ度とすることが新たに示されました。これによって、従来の基準では重症度Ⅰ度であったために指定難病の医療費助成の対象外だった患者さんでも、6分間歩行時SpO2の結果、重症度Ⅲ度に該当すれば、医療費助成を申請することができます。
従来の基準では指定難病の医療費助成対象外であったために、抗線維化薬などの高額な治療の開始を躊躇されていた患者さんもいらっしゃったかと思います。アップデートされた診断基準及び重症度分類で指定難病の医療費助成の対象となれば、患者さんの医療費の懸念が軽減され、患者さんにとって必要な治療の開始を検討することができるのではないでしょうか。
今回ご紹介した内容を、治療が必要なIIPs患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。
【引用】
- 難病情報センター. 指定難病患者への医療費助成制度のご案内
(https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460、2023年12月15日アクセス)
その他の関連情報
難病法におけるIIPsの申請基準改訂のポイントと日常診療における留意点(静止画)
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