間質性肺疾患診療における多分野による集学的検討の実施意義(静止画)
サイトへ公開:2023年06月29日 (木)
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ご監修:須田 隆文先生(浜松医科大学 理事・副学長)
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今回は、間質性肺疾患(ILD)診療における多分野による集学的検討(MDD)の実施意義について紹介します。
ILDの種類と予後
ILDには原因不明なものや何らかの原因によるものなど、さまざまな疾患が含まれており、代表的な疾患である特発性肺線維症(IPF)をはじめとして、一部は進行性の肺の線維化を伴うことがあります。
図1は、IPF以外のILDの分類を示したものです。図の青色部分は進行性の肺の線維化を伴う患者さんの推定割合を示しています。その割合は疾患ごとに異なり、特発性間質性肺炎や自己免疫性ILD、曝露関連のILDの一部で高いとされています。
図1

また、生存率についても、疾患ごとに異なるとされています。ご覧のように、各疾患における生存期間中央値について、最短は過敏性肺炎(HP)以外の曝露に関連するILDの2.4年であり、次いで全身性強皮症に伴うILDの3.1年、関節リウマチに伴うILDの3.5年と続いています。最長はサルコイドーシスに伴うILDで7.9年と報告されています(図2)。
図2
ILD診断におけるMDDの位置づけと検討内容
ILDの診療において、MDDは診断精度を高めることに有用とされています。ここから、MDDの位置づけについて、ILDの診断プロセスに沿ってみていきましょう。
ILDの診断の第一歩は、胸部X線写真で間質性陰影を認めた場合が多く、次いで胸部聴診所見にて捻髪音が認められた場合があります。ILDが疑われたら、次にILDの原因となりうる要因の検討を行います。ILDの原因が特定できない場合は、高分解能CT(HRCT)の画像パターンによりさらに診断プロセスを進めます。
MDDは、検査法の選択や診断に際して呼吸器科医、放射線科医を中心に病理医、リウマチ・膠原病内科医も含めたメンバーで行われます(図3)。
図3

MDDを構成するメンバーと検討内容について詳しくみていきましょう。図4はさらに看護師や理学療法士を含めた多職種チームの概念図です。
呼吸器科医
病歴、臨床データ、呼吸機能検査(PET)の解釈とともに、ILDの診断と治療を担います。
放射線科医
HRCTにおいて、肺の線維化の程度とパターンの解釈や診断及び病期分類を行います。また、HRCTでの疾患進行の評価も行います。
病理医
肺生検の病理組織学的特徴を解釈することで診断に関わります。
リウマチ・膠原病内科医
血清学的検査のレビューと、膠原病に伴うILD(CTD-ILD)の診断と治療を担います。
図4

このように、MDDでは多分野の医師が連携し、臨床データや胸部HRCTなどの各検査結果の評価を行います。そして、診断の第一候補や代替の診断、生検の必要性や診断の確診度、疾患進行の可能性や予後を検討します(図5)。
図5
ILDの診断におけるMDDの実施意義
では、ILDの診療において、MDD実施による影響はどれぐらいあるのでしょうか。ここでは診断名を例にみていきましょう。
図6は、呼吸器内科医、放射線科医、病理医、リウマチ・膠原病内科医で構成されたILD専門の集学的検討チームで、MDDを実施した患者さん90例について、MDD実施前後の診断名の変化を調べた結果です。ご覧のようにMDDの実施によって、CTD-ILDは9例から19例に、HPは3例から14例に増加しました。一方、分類不能型ILDは38例から11例に減少しました。また、MDDの結果、ILD以外と診断された患者さんも5例報告されました。IPFについて詳しくみると、紹介時の診断名がIPFだった27例のうち10例の診断名がIPF以外のILDに変更された一方で、IPF以外のILDからIPFに診断名が変更された患者さんも7例報告されました。
図6

このようなMDD実施による影響は、診断名だけでなく、治療選択にも及ぶと考えられます。
図7に示すとおり、ILDではその病態によって推奨される治療選択肢が異なります。細胞性/炎症性を主体とするILDに対しては、副腎皮質ホルモン(ステロイド)や免疫抑制薬、生物学的製剤などによる治療が推奨されています。一方、線維化性を主体とするILDに対しては、抗線維化薬による治療が推奨されています。
患者さんの病態に則した適切な治療を行うためにも、MDDで診断や治療選択肢を検討することが重要であるといえます。
図7
ILDの診断以外のMDDの有用性
ILDの診断に加えて、モニタリングや管理の際にもMDDの実施は有用です。たとえば、MDDを実施することで、ILDの進行が疑われる症例やモニタリングの頻度について検討することができます。また、治療目標や薬物療法及び非薬物療法のベネフィットとリスク、患者さんの状態やニーズ、治療への反応性などを考慮した管理方法の検討にも、MDDを活用することができます(図8)。
図8

さらに、医師だけでなく、看護師や理学療法士、作業療法士が加わった多職種チームを編成することができます1)。ILD患者さんの発症から終末期までのさまざまなニーズに対して、全経過を通じたサポートの提供を目指すうえで、多職種チームの編成は有用だと考えます(図9)。
図9
まとめ
ILDには原因不明なものや何らかの原因によるものなど、さまざまな疾患が含まれており、進行性の肺の線維化を伴う患者さんの割合や生存率がそれぞれ異なります。ILDで推奨される治療選択肢はその病態によって異なるため、呼吸器科医や放射線科医を中心に多分野の医師が連携してMDDを実施し、診断精度を高めることが重要です。
また、MDDはILDの診断だけでなく、モニタリングや管理においても有用です。さらに、医師以外に看護師や理学療法士、作業療法士といった多職種が加わり、チームとなって対応することで、ILD患者さんのさまざまなニーズに対するサポートを、発症から終末期まで提供できると考えられます。
このように、呼吸器内科医、放射線科医、病理医、リウマチ・膠原病内科医などのMDD構成メンバーをはじめとする多職種チームの編成はILD患者さんの診療にさまざまなメリットをもたらすと考えます。
今回ご紹介した内容を、ILD患者さんの診療にお役立ていただけますと幸いです。
【引用】
- Cottin V. et al.: Eur Respir Rev. 2022; 31(165): 220003.
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