IPFを見逃さないための胸部HRCT画像の読影ポイント(静止画)
サイトへ公開:2024年04月25日 (木)
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ご監修:石井 晴之先生(杏林大学医学部 呼吸器内科学 教授)
胸部HRCT検査は特発性肺線維症(IPF)の確定診断につながる所見や、もしくは確定診断につながらずともIPFを疑う所見をとらえるうえで有用です。しかしながら、胸部HRCT画像の読影に難しさを感じられている先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、IPFを見逃さないための胸部HRCT画像の読影ポイントについてご紹介します。
IPFが疑われる場合の胸部HRCT撮影条件
IPFを含む間質性肺疾患(ILD)は、乾性咳嗽や労作時呼吸困難といった症状や、胸部X線検査で見つかった陰影所見、背側肺底部の聴診で聴取された捻髪音によって疑われることが多い疾患です。ILDの中でも、IPFを含む特発性間質性肺炎(IIPs)は、問診や身体所見、血液検査などの各種検査所見によっても原因が特定できない場合に疑われます。
IPFを含むIIPsが疑われる患者さんの診断を確定するために行う検査のひとつとして、胸部HRCT検査があります。HRCTの推奨撮影・出力条件は疾患によって異なりますが、IIPsが疑われる患者さんの場合は2mm以下の画像で観察する必要があります(図1)。異なる疾患の撮影条件では、IIPsで認められるHRCT所見を読影できないおそれがあります。そのため、放射線技師の方へはIIPsの検査としてHRCTの撮影を行うことをあらかじめ伝えることが重要です。
図1

IPFを疑うHRCT所見
IPFを疑うHRCT所見には、①蜂巣肺・蜂窩肺、②網状影、③牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張、④すりガラス影の4つがあります。これら4つの所見はほかの疾患でも認められる可能性がありますが、IPFの場合は背側胸膜直下を中心にみられることが特徴です。各所見は、それぞれ単独で認められることもあれば、複数同時にみられることもあります。
①蜂巣肺・蜂窩肺(図2)
背側胸膜下優位に認められる蜂巣肺・蜂窩肺は、IPFを疑うHRCT所見の中でも、確診度が高いとされる所見です。類円形に拡大した気腔が並んだ様子が蜂の巣状に見えることから、蜂巣肺・蜂窩肺と呼ばれます。
②網状影(図2、3)
網状影は、網目のみられる線状影として認められます。網状影が牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張やすりガラス影とともに背側胸膜直下を中心に広がっている場合、たとえ蜂巣肺・蜂窩肺が認められなくともIPFである可能性が高くなります。
③牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張(図3)
IPFを発症すると小葉間の結合組織(小葉間隔壁・小葉辺縁)において線維化が起こり、線維化した組織に牽引されて気管支/細気管支が拡張します。このため、胸部HRCT検査では境界がごつごつした黒い棒状の気腔として、牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張をとらえることができます。なお、正常肺の胸部HRCT検査では細気管支を確認することはできません1)。
図2

図3

④すりガラス影
すりガラス影は、すりガラス状にみえる病変または濃度の所見を指し、その内部に肺血管影や気管支影がみえる程度の肺野上昇と定義されています2)。すりガラス影が単独で肺の内部に広がっている場合は、IPF以外の疾患の可能性が高くなります。しかしながら、網状影や牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張に伴ってすりガラス影が認められる場合は、IPFである可能性を考える必要があります。
HRCTパターンとIPFの診断
先ほどもご紹介したように、IPFを疑うHRCT所見である蜂巣肺・蜂窩肺、網状影、牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張、すりガラス影は単独でみられることもあれば、複数同時にみられることもあります。国際ガイドライン(ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline 2022)では、これらのHRCT所見の有無や分布によって、組織学的に通常型間質性肺炎(UIP)に対する確診度が高い順に、①UIPパターン、②Probable UIPパターン、③Indeterminate for UIPパターン、④Alternative Diagnosisを示唆するCT所見の4つにIPFのHRCTパターンを分類しています(図4)。
図4

①UIPパターン
分布に「胸膜下及び肺底部優位」、CT像の特徴に「牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う、または伴わない蜂巣肺」とあるように、胸膜下及び肺底部優位に蜂巣肺・蜂窩肺が認められることが、UIPパターンを判断するポイントとして重要です。そのほかに、通常は網状影パターンで、すりガラス影が軽度に重なるという特徴もあります。
蜂巣肺・蜂窩肺は、IPFの病理組織で認められるUIPパターンと一致するHRCT所見であることから、確診度としては90%超とされています。そのため、UIPパターンの場合は、膠原病やアレルギーといったILDの原因となる要素が認められなければ、病理組織学検査を行わずともIPFと診断することができます。
②Probable UIPパターン
Probable UIPパターンは、「胸膜下及び肺底部優位」に「牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う網状影パターン」を認めるHRCTパターンです。分布はしばしば不均一で、正常肺と網状影、牽引性気管支拡張/細気管支拡張が混在してみられることもあります。すりガラス影については軽度に認められる場合もあります。
蜂巣肺・蜂窩肺は認められないことから、Probable UIPパターンの組織学的なUIPに対する確診度は70~89%とされています。UIPパターンと比べると確診度は下がるものの、UIPである可能性を考慮に入れて診療方針を考える必要があります。IPFの臨床像と矛盾がない場合や、IPF以外を想定する所見や経過がなければ多くの場合はIPFと診断できます。
③Indeterminate for UIPパターン
Indeterminate for UIPパターンは、胸膜下優位のないびまん性分布を示すHRCTパターンです。Indeterminate for UIPパターンに当てはまる例としては、網状影や牽引性気管支拡張/牽引性細気管支拡張が背側胸膜下だけでなく内部にもみられるような場合などがあげられます。
Indeterminate for UIPパターンの確診度は低く、51~69%とされています。そのため、IPFが疑われる患者さんでIndeterminate for UIPパターンが認められた場合は、病理組織学検査を行いIPFの可能性を検討する必要があります。
④Alternative Diagnosisを示唆するCT所見
Alternative Diagnosisを示唆するCT所見では、胸膜直下は保たれ気管支血管束優位な分布や、リンパ路に沿った分布がみられます。また、上中肺野への分布や胸膜直下は保たれている様子もみられます。CT像の特徴は疾患によってさまざまです。UIPパターンやProbable UIPパターンでも認められるすりガラス影については、Alternative Diagnosisを示唆するCT所見では主体として認められます。
Alternative Diagnosisを示唆するCT所見がみられた場合の組織学的なUIPに対する確診度は50%以下と低~非常に低いとされています。そのため、IPFを確定診断するためには病理組織学検査が必要となります。
以上を端的にまとめると、
- 胸膜下及び肺底部優位に蜂巣肺・蜂窩肺が認められた場合(UIPパターン)
- 蜂巣肺・蜂窩肺は認められないが、網状影や牽引性気管支拡張/細気管支拡張が胸膜下及び肺底部優位に認められた場合(Probable UIPパターン)
の2パターンはIPFを疑うHRCT所見として確実にとらえることが重要であるといえます。それ以外のIndeterminate for UIPパターンやAlternative Diagnosisを示唆するCT所見については、病理組織検査を含めた各検査結果から総合的にIPFの診断を行う必要があります。
まとめ
胸部HRCT検査を行うことで、外科的肺生検によって組織を得ずとも、肺内部の様子を画像で観察することができます。そして、IPFの確定診断につながる所見、もしくは確定診断につながらずともIPFを疑う所見を見つけることができます。しかしながら、胸部HRCT検査だけですべてのIPFの発見や診断ができるわけではないことには留意が必要です。IPF疑い患者さんに限らず、胸部HRCT検査を重視しすぎると、適切な診断から遠ざかり治療方針を誤ってしまう可能性があります。胸部HRCT検査を行う際には、それ以外の問診や身体所見、血液検査等の各種所見から得られる情報も念頭に置き、総合的に判断することを忘れないようにしてください。
また、胸部HRCT検査は、IPFの確定診断だけでなく疾患進行を観察するうえでも有用な検査です。過去に撮影したHRCT画像との比較読影で所見の変化をとらえるためにも、今回ご紹介したIPFを疑う4つのHRCT所見の特徴を判断できるようにしてください。
今回ご紹介した内容を、IPF疑い患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。
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