進行性線維化を伴う特発性非特異性間質性肺炎患者さんの診断と治療(静止画)
サイトへ公開:2022年07月28日 (木)
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ご監修・ご出演:小倉 髙志 先生(神奈川県立循環器呼吸器病センター 所長/間質性肺炎センター長)

先生が次のような症例をご診療される場合、どのような管理が考えられるでしょうか。


特発性非特異性間質性肺炎(特発性NSIP)の発症頻度と生命予後
間質性肺炎には、膠原病やじん肺などの原因が明らかなものと原因不明のものがあり、後者を特発性間質性肺炎(IIPs)と呼んでいます。
IIPsの中でも、特発性非特異性間質性肺炎(特発性NSIP)は特発性肺線維症(IPF)や特発性器質化肺炎(COP)などとの鑑別が臨床上重要であり、集学的検討(MDD)による診断が必要とされます1)。
日本国内のIIPs患者さんを対象とした調査で特発性NSIPの頻度が調べられています。1990年から2000年までに診断された606例の患者さんにおいては17.2%でした。また、2009年4月から2014年3月までに外科的肺生検を行ったIIPs患者さん465例を対象とした調査では、特発性NSIPの頻度は施設診断では21%、MDDによる診断では9%でした。このことから、特発性NSIPの診断の難しさをおわかりいただけるかと思います。

続いて、線維化性NSIP患者さんの生存率をお示しします。
疾患別の比較では、IPAF※1を伴わない患者さんは、膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)患者さんやIPAFを伴う患者さんよりも予後不良でした。
※1 IPAF:自己免疫性疾患の特徴を有する間質性肺炎

1年後の治療反応性別の比較では生存率に有意差は認めず、一旦治療によって改善しても予後の予測は難しいことがわかりました。線維化性NSIPの疾患挙動別の比較では、安定型よりも進行型の患者さんで予後不良でした。

それでは、特発性NSIPにおいて進行性の線維化はどれくらいの割合でみられるのでしょうか。
IPF以外の間質性肺疾患(ILD)を対象としたオンライン調査の結果、特発性NSIPでは32%の患者さんに進行性の線維化がみられると推定されました。

ここまでで述べたように、特発性NSIPは最近の研究においてIIPsにおけるMDD診断後の頻度は高くない疾患ですが、特発性NSIPの中ではPF-ILD※2が比較的高頻度に認められています。実際に、INBUILD試験では特発性NSIPの頻度はPF-ILD全体の約20%を占めました2)。また、治療で一時的に改善したとしても、呼吸器症状の悪化や呼吸機能の低下、進行性の肺の線維化が認められる場合は予後不良となる可能性が考えられます。したがって、特発性NSIPにおいては疾患挙動に配慮し、進行型の症例に関しては早期に治療介入を検討する必要があるのではないでしょうか。
※2 PF-ILD:進行性線維化を伴う間質性肺疾患

ILDの診断の考え方
ここからは、特発性NSIPを含むILDの診断の考え方をご紹介します。
ILDの診断の第一歩は、胸部X線写真で間質性陰影を認めた場合が大部分で、次いで聴診所見にて捻髪音が認められた場合が想定されます。
ILDが疑われたら、次にILDの原因となりうる要因についての検討を行います。
その後、胸部高分解能CT(HRCT)の画像パターンによりさらに診断プロセスを進めます。
診断の確信度が高くない場合などは、気管支鏡検査や外科的肺生検を考慮します。
MDDの必要性は先ほど述べた通りですが、呼吸器科医、放射線科医を中心に病理医、可能であれば膠原病科医を含めた多分野によるMDDの実施は診断精度を高めることに有用とされています。

特発性NSIPの組織学的所見
次に、特発性NSIPの主要な病理組織学的所見をご紹介します。
線維化性NSIPでは、間質は様々な程度に線維性びまん性肥厚を示しますが、時相は一様で、正常肺胞の介在はみられないという特徴があります。

こちらは線維化性NSIPの病理画像です。びまん性に時相の一致した肺胞壁の線維化が認められます。

特発性NSIPの治療戦略
続いて、特発性NSIPの治療戦略についてお示しします。
図のように、細胞浸潤性NSIPと線維化性NSIPを区別して治療を考えるべきとされています。 線維化性NSIPは、ステロイド単独で治療される場合もありますが、ステロイドと免疫抑制薬との併用や抗線維化薬の適用が考慮されます。
抗線維化剤オフェブは、特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 改訂第4版において、進行性線維化を伴う特発性NSIPの治療例として記載されています。

また、治療戦略は、肺機能やHRCT画像などの情報だけでなく、経気管支クライオ肺生検(TBLC)からの病理情報を含めて検討するのが有用な患者さんがいらっしゃいます。
最近、我々のグループが発表した、PF-ILD患者さん21例を対象に治療再評価時のTBLCの有用性を検討した研究では、進行時に免疫抑制薬を増量するのか、抗線維化薬を追加するのかTBLCを実施することによって治療適応に変化があるかどうかを検討しました。TBLCを実施することによって、70%以上の信頼度をもって治療することができた症例は約75%認められました。このようにTBLCによる病理情報を治療戦略に含めることでより適切に抗炎症治療や抗線維化治療を提供できる可能性があります。

まとめ
特発性NSIPは治療により一時的に改善したとしても、進行性の線維化が認められる場合に予後不良となる可能性があるため、疾患挙動に配慮して、進行型の症例に関しては早期の治療介入を検討することが重要な疾患です。
特発性NSIPの治療戦略はFVCやHRCTによる疾患挙動の評価に加え、TBLCによる病理情報などから、進行性線維化を伴うNSIPに対しては抗炎症治療の強化か抗線維化薬であるオフェブの追加を考慮することも大事になります。
今回ご紹介した内容を、進行性線維化を伴う特発性NSIP患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。
Take Home Message
- 特発性NSIPは疾患挙動に配慮して、進行型の症例に関しては早期の治療介入を検討する
- TBLCによる病理情報などから、進行性線維化を伴うNSIPに対しては抗炎症治療の強化か抗線維化薬であるオフェブの追加を考慮する
【引用】
- 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 改訂第4版. p.84. 2022
- Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727.承認時評価資料
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