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パーキンソン病のアパシーにおける価値に基づく意思決定の障害
サイトへ公開:2024年08月29日 (木)
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Impaired value-based decision-making in Parkinson’s disease apathy
Gilmour W, et al. Brain 2024; 147(4): 1362-1376
ご監修:渡辺 宏久 先生(藤田医科大学医学部 脳神経内科学 教授)
背景
アパシー(apathy:無感情)は、目的を達成するための動機付けが欠如することで、パーキンソン病(PD)患者の30~70%で認められるといわれるが、発現するメカニズムは十分に解明されていない。
アパシーを伴うPD患者を対象とした神経画像を用いた検討では、前頭前皮質-大脳基底核回路における画像異常が一貫して確認されている。このため、アパシーは動機付けられた行動の重要な3つの要素(①行動するかどうかを決定する、②行動を継続する、③行動の結果から実行する価値があるかどうかを学習する)のいずれかを媒介する前頭-線条体回路の機能障害から生じるとの仮説が提唱されている。
また、アパシーには脳内の報酬経路が関与していることが示唆されている。一方で、報酬に関与すると考えられてきた前頭-線条体回路へのドパミン投射が、アパシーにおける動機付け機能には影響しないという報告もある。さらに、セロトニン作動性神経伝達やノルアドレナリン作動性神経伝達の欠乏は、PDにおけるアパシーの重症度と相関することが報告された。これらをふまえ、PDにおけるアパシーは行動の価値を認識できない、または行動の結果から行動する価値があることを学習し、行動するかどうかを決定する際に利用する報酬経路障害のいずれかに起因すると考えられている。
そこで、PDにおけるアパシーは学習した価値に基づく意思決定の障害と関連するという仮説を立て、PDにおけるアパシーの根拠となる前頭前皮質領域の同定を目的として、計算モデルを用いた機能的MRI(fMRI)による検討を行った。
方法
特発性PD患者53例及び年齢と性別をマッチさせた健常対照者22例を対象とし、リールのアパシー評価尺度(LARS)によってPD患者のアパシーの有無を判定しPD-アパシー群、PD-非アパシー群及び健常対照群に分類した。対象は複数の選択肢(アーム)から最も価値の高いものを選択する課題である非定常な多腕バンディット課題を下記2つの状況下で行った。このバンディット課題の結果を基に行動パフォーマンス及び意思決定プロセスを検討した。
① 'out-of-scanner':バンディット課題を実施(fMRI画像撮像なし)
② 'in-scanner':バンディット課題を実施しながらfMRI画像を撮像
さらに、②で得られたfMRI画像を用いて、群内及び群間差における脳活性について全脳解析を行い、クラスターレベルのファミリーワイズエラー(FWE)補正を行った(p<0.05(Pcluster FWE WB で表示)。
統計解析は各群(群間差)を固定効果、バンディット課題のブロック内の変数をランダム効果とした混合計画ANOVAを用いた。
結果
バンディット課題を用いた検討結果及びfMRI解析結果は下記の通りであった。
out-of-scannerにおけるバンディット課題ではPD-アパシー群はPD-非アパシー群及び健常対照群と比較して、最も価値の高いアームを選択する確率が低く(p=0.005)、最も価値の高いアームを選択する確率はLARSで判定されるアパシーの重症度と相関を示した(R=-0.46, p<0.001)。最も価値の高いアームの選択(意思決定)は「探索」と「搾取(情報の利用)」によって成り立つが、PD-アパシー群は他の2群と比較して搾取的選択を行うことが少なく(p=0.002)、指向性がない探索的選択を行う割合が高かった(p<0.001)。つまり、PD-アパシー群は他の2群と比較して学習された価値に注意を払わず、ランダムに意思決定を行っている傾向があることが確認された。
in-scannerにおける非定常多腕バンディット課題で取得したfMRI画像を用いて脳活性と報酬フィードバックについて分析した。その結果、健常対照群では左腹内側前頭前皮質(vmPFC)で活性化が確認されたのに対し(Pcluster FWE WB <0.001)、PD-非アパシー群及びPD-アパシー群の両群ともに活性を認めなかった(図1A-C)。PD-非アパシー群及び健常対照群を組み合わせた群とで分析を行うと、PD-アパシー群で左vmPFC(Pcluster FWE WB =0.01)を含む信号の有意な減少を認めた(図1D)。
さらに、PD-アパシー群の探索的選択による意志決定は、健常対照群と同程度に前頭前野を活性化したが、PD-非アパシー群と健常対照群で認められた視床/中脳及び後頭頂葉の活性化は認められなかった。そのため、PD-アパシー群と、PD-非アパシー群で分析を行った。その結果、両側視床、両側前後中心回、頭頂溝、両側小脳、鳥距溝において活性クラスタが確認された(いずれもPcluster FWE WB <0.001,図2A, B)。各群の各被験者における探索的選択による意思決定時の活性クラスタの信号を検討し、さらにPD-アパシー群においてアパシーの重症度と活性クラスタの信号の関係を検討した結果、探索的選択による意思決定において活性クラスタは、アパシーの重症度と相関していた(Pcluster FWE WB =0.005,図2C, D)。アパシー重症度の予測因子である視床ボクセル間の皮質機能的結合解析を行うと、視床と背側前帯状皮質(dACC)/両側島皮質(AI)に相関のピークが確認された(図2E)。
結論
本研究の結果、PDにおけるアパシーは、学習に基づく搾取的選択ではなく、探索的選択によって意思決定を行うことが確認された。この意思決定時の画像解析によってアパシーが複数の脳回路機能の障害から生じている可能性が示唆された。アパシーを伴わないPD患者では課題遂行能力が健常対照者と変わらなかったことから、視床-皮質ネットワーク全体の活性はアパシーの発現の予防に関連する代償機構である可能性が示唆された。今後さらなる知見が集積することで、代償機構の増強によってPDにおけるアパシーの治療介入へとつながることが期待される。

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