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パーキンソン病のコリン作動性前脳基底部及び脚橋被蓋核の自由水イメージング
サイトへ公開:2022年08月30日 (火)
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Free-water imaging of the cholinergic basal forebrain and pedunculopontine nucleus in Parkinson’s disease
ご監修:武田 篤 先生(独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 院長)
Ray NJ, et al. Brain 2022 Apr 29. doi: 10.1093/brain/awac127. Online ahead of print.
背景
脳の黒質に存在するドパミン作動性神経細胞の変性のほかに,前脳基底部(cBF)及び脚橋被蓋核(PPN)のコリン作動性神経細胞もパーキンソン病(PD)に関与することが示唆されている。また,従来のバイオイメージング法を用いた研究からは,PD患者ではcBF及びPPNのコリン作動性神経細胞の変性が認知機能障害や運動障害に関連していることが報告されている。しかし,cBF及びPPNのコリン作動性神経細胞の変性がPDの病態にどのように関与しているかは明確にされていない。
PDにおけるコリン作動性神経細胞の変性を検討するために,これまで拡散テンソル画像(DTI)における平均拡散率(MD)及び軸方向の拡散率(AD)が使用されてきた。しかし,従来のDTIはボクセルごとに単一組織コンパートメントを想定しているため,脳脊髄液(CSF)などの自由水(FW)による影響を受け,DTIメトリクスの感度が低下する可能性があった。
一方,FWイメージング(FWI)は,FW含有量(FWf)を明確にし,組織の微細な構造を推定する際にFWfを補正することでDTIメトリクスの感度を高めることを可能とするMRI解析手法である。しかし,FWIがPDにおけるcBF及びPPNのコリン作動性神経細胞変性の評価及び認知機能障害の把握に有用であるかについては明らかにされていない。
そこで本研究では,PD患者における認知機能障害の把握にFWIが有用であるかを検討した。
方法
対象はICICLE-GAIT試験の参加者であるPD患者96例及び年齢をマッチさせた対照40例とした。対象者にはベースライン時にDTIスキャンが施行されていた。なお,PD患者はベースライン時のMoCA(Montreal Cognitive Assessment)スコアが26点以上の場合を「認知機能障害なし」,26点未満の場合を「認知機能障害あり」と分類した。
cBFにおける関心領域(ROI)は内側中隔(Ch1)と対角帯の垂直肢(Ch2)を合わせた領域(Ch1-2領域)及びマイネルト基底核(Ch4領域)と設定した。PPNとともにFWI及び体積測定を行い,cBFにおける各ROIからFW補正DT1メトリクスとして4つの構造メトリクス(体積,FWf,FW補正MD[cMD]及びFW補正AD[cAD])を定量した。PPNからは,3つの構造メトリクス(FWf,cMD及びcAD)を定量した。
対象者のcBF及びPPNにおける構造メトリクスと認知機能障害の関係について比較を行った。False Discovery Rate(FDR)補正を行って有意差が認められた場合(p<0.05),年齢,性別及び全脳における構造メトリクスで調整したANCOVAでさらに検討した。
結果
ベースライン時に認知機能障害を認めるPD患者群では,対照群及び認知機能障害を認めないPD患者群と比較して,cBFにおけるCh4領域のFWfが有意に上昇していた(FDR補正後,図1A,p<0.05,One-way ANOVA及びStudent t検定)。同様に認知機能障害を認めるPD患者群では,認知機能障害を認めないPD患者群と比較してCh4領域のcADについても有意に上昇していた。これらの差は年齢,性別及び全脳における構造メトリクスによる調整を行っても有意であった(FWf:F=4.93,p=0.03,cAD:F=6.96,p=0.01,ANCOVA)。認知機能障害を認めないPD患者群におけるCh1-2領域の体積は,対照群及び認知機能障害を認めるPD患者群と比べて有意に上昇していたが(FDR補正後,p<0.05,One-way ANOVA及びStudent t検定),年齢,性別などによる調整を行ったANCOVAでは有意差は認められなかった(図1B)。
PPNにおいて,cADが上昇すると空間的ワーキングメモリ課題に対してより速い速度で反応する傾向が認められた(図2A)。cBFにおける構造メトリクスは様々な認知課題と関連していたが,PPNにおいて認められた傾向とは対照的にCh4領域におけるcADが上昇すると,空間的ワーキングメモリ課題に対してより遅い速度で反応する傾向が認められた(図2B)。
対象者の認知機能については4.5年にわたって追跡を行い,認知機能の経時的な変化と構造メトリクスとの関係について線形混合効果モデル(LMM)を用いて検討した。その結果,ベースラインのCh4領域における体積は,MoCAで評価される認知機能の変化と関連していた(図2C)。Ch1-2領域及びCh4領域のFwf,cMD及びcADについても,実行機能,記憶及び注意課題に対する反応速度の変化と関連していた。PPNにおける構造メトリクスはいずれの認知課題の経時的な変化率とも関連しなかった。
結論
PD患者ではcBF及びPPNのコリン作動性神経細胞の変性が認知機能障害や運動障害に関連していることが報告されているが,本研究の結果,FWIによるFW補正DTIメトリクスはPD患者におけるcBF及びPPNのコリン作動性神経細胞の変性を検出できる可能性が示された。FW補正DTIメトリクスが反映するcBFにおけるコリン作動性神経細胞の変性は様々な認知課題と,PPNにおけるコリン作動性神経細胞の変性は認知課題に対する反応速度(行動の柔軟性)と関連することが示された。PDモデルラットを用いた最近の基礎研究では,PPNは大脳基底核の活動の制御に関与し,黒質線条体のドパミンシグナル伝達を改善する標的となる可能性も示唆されている。今後,FWIを用いた更なる研究結果が集積されることで,認知機能が低下したPD患者を発見する新しいバイオマーカーが確立され,PD患者においてPPNがPDの病態に与える影響の解明に寄与し,PPNを標的とする治療法の開発に繋がることが期待される。


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