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パーキンソン病患者の歩行障害に関与する脳内ネットワークの代償機構
サイトへ公開:2025年02月27日 (木)
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Frontoparietal-Striatal Network and Nucleus Basalis Modulation in Patients With Parkinson Disease and Gait Disturbance Nishida A, et al. Neurology 2024 Aug 13;103(3): e209606.
ご監修:武田 篤 先生(独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 院長)
背景
パーキンソン病(PD)の歩行障害に介在する神経機能メカニズムは複数の因子が関係している。この神経メカニズムの複数の因子として,ドパミン枯渇に起因する自発的運動パターンの発現障害や注意や実行機能などの認知機能による代償機構が関与していると考えられている。しかし,認知の神経処理と歩行の神経処理が同時に起こるため,認知機能による歩行障害の代償性神経ネットワーク機構の解明は困難であった。
そこで,PD患者を対象に認知機能による歩行障害の代償機構,さらに代償機構の破綻による歩行障害の悪化に関与する神経ネットワーク機構を明らかにすることを目的として,本検討を実施した。
方法
2016年9月~2020年3月に京都大学医学部附属病院にて募集されたPD患者を対象とした。
対象者の歩幅や1歩に要する時間などの歩行機能を通常歩行時(単一課題条件)に16項目,認知的課題に注意を向けさせた状態(二重課題条件)に13項目の計29評価項目について評価した。取得した歩行機能の高次元データに対して次元削減を行い,3次元空間に可視化してクラスター解析を実施した。
運動症状は,Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)パートⅢを用いて,認知機能の評価は,神経心理学的検査としてPDにおける軽度認知障害(MCI)の包括的評価版(レベルⅡ)により注意,実行,言語,記憶,視空間認知機能の5領域で実施した。全般的認知機能はミニメンタルステート検査(MMSE)及びモントリオール認知評価(MoCA)を用いて評価した。
3-T頭部磁気共鳴画像法(MRI)構造画像と123 I-Ioflupane SPECTを実施した。また,安静時機能的MRI(rs-fMRI)から安静時空間独立成分分析(ICA)を用いて脳のネットワークを同定し,脳内ネットワーク間の機能的結合を解析した。
結果
クラスター解析によって明らかになった歩行の速度及び変動性に基づき,PD患者56例を下記の3つのサブグループに分類した。
① 歩行機能保持群
単一課題条件及び二重課題条件ともに歩行機能が保持されていた群で23例が該当した。
② 軽度歩行障害群
二重課題条件において歩行状態の悪化を認める群で,16例が該当した。
③ 重度歩行障害群
両課題条件ともに歩行状態の悪化を認める群で,17例が該当した。
各群の認知機能を比較すると,重度歩行障害群では歩行機能保持群及び軽度歩行障害群と比較して注意,記憶,実行(ただし,TMT-Bの結果のみ)の低下が認められた(表)。
rs-fMRIを使用した脳内ネットワークの機能結合解析では,歩行機能保持群,軽度歩行障害群及び重度歩行障害群の機能的結合は密度の降順でほぼ同様のパターンを示した(図)。
群間比較では,歩行機能保持群は重度歩行障害群と比較して左及び右の前頭頭頂ネットワーク(FPN)と尾状核,左FPNと被殻後部との機能的結合が高いことが示された(左FPN-尾状核:d=1.21,p<0.001/右FPN-尾状核:d=1.05,p=0.004/左FPN-被殻後部:d=0.98,p=0.003,多変量パラメトリック一般線形モデル)。
FPNの皮質厚及び線条体の123 I-ioflupane取り込み比を評価したが,3群間で差はみられなかった。一方,注意に関連するとされる前脳基底部のアセチルコリン作動性神経Ch4(マイネルト基底核)の灰白質密度解析を行うと,Ch4の灰白質密度の減少の程度は左FPNと尾状核または被殻後部との機能的結合の低下と有意な正の相関が認められた(左FPN-尾状核:r=0.27,p=0.04,左FPN-被殻後部:r=0.30,p=0.03,多変量パラメトリック一般線形モデル)。
結論
前脳基底部のアセチルコリン作動性神経のCh4投射系を介したFPNと線条体(尾状核)との機能的結合がPD患者の歩行障害を調整し,これは注意及び実行の代償機構に関与することが示唆された。今回の研究の限界として,PD患者の歩行障害には他の神経伝達物質システムや皮質下の構造も関与している可能性があるが,皮質領域のアセチルコリンの評価を主に行ったこと,歩行時ではなく安静時のfMRIを用いたことなどが挙げられる。今後,歩行機能及び認知機能の低下をPD発症前と比較し,PD患者のみならず健常者のFPNと線条体(尾状核)の機能的結合が歩行機能に影響するかを評価する必要があると考えられるが,本研究で得られた知見は,PDの歩行障害に対する新たな治療介入の確立につながる可能性を示すものである。


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