ジャスケイドの使い方 適正使用ガイドより解説(静止画)

サイトへ公開:2026年05月27日 (水)

2026年5月、ジャスケイド®錠(一般名:ネランドミラスト)が「特発性肺線維症」(IPF)及び「進行性肺線維症」(PPF)の効能又は効果で承認されました。

ジャスケイドは、抗線維化作用及び免疫調整作用を持つホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)に対する選択性の高い阻害剤です。

今回は、実際にジャスケイドを処方する際にご利用いただける「治療の流れと注意事項」(図1)に従って、適正使用情報をご紹介します。

 

図1

 

本剤の投与開始にあたっては、治療の流れと警告及び禁忌を含む注意事項をご確認いただき、本剤の有効性及び安全性について患者に十分にご説明のうえ、投与開始をお願いします。

まずは、開始にあたり、警告をご確認ください。

警告:
本剤の使用は、本剤についての十分な知識と適応疾患の治療に十分な知識・経験をもつ医師のもとで行うこと。

 

次に、「効能又は効果」をご確認ください。

■効能又は効果

ジャスケイドの効能又は効果は、「特発性肺線維症」(IPF)及び「進行性肺線維症」(PPF)です。

PPFは、進行性線維化の疾患挙動を示すILD患者集団(IPFを除く)を指します。これまでに進行性線維化の疾患挙動を示すILD集団に関して、類似かつ大きく重なりのある複数の基準が用いられてきましたが、「PPF」はこれらの複数の基準により特定された進行性線維化の疾患挙動を示すILD患者集団(IPFを除く)の総称です。

基準として代表的なものに、『ATS/ERS/JRS/ALAT診療ガイドライン(2022年)』の基準及びニンテダニブの国際共同第Ⅲ相試験INBUILD試験で用いられたILDの進行性の基準があります(図2)。

図2

実臨床では、本剤についての十分な知識と適応疾患の治療に十分な知識・経験をもつ医師のもとで、肺機能、呼吸器症状及び胸部画像所見の総合的な評価を行い、本剤の投与対象を判断することが重要です。
また、PPFについては、FIBRONEERTM-ILD試験の臨床成績を熟知し、投与患者を判断してください。

なお、禁忌(次の患者には投与しないこと)として「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が挙げられています。該当する場合には他の治療法を検討してください。

■用法及び用量

ジャスケイドは経口錠剤として18mgと9mgの2つの規格を有しており、用法及び用量は次のとおりです。

用法及び用量:
通常、成人にはネランドミラストとして1回18mgを1日2回経口投与する。
なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg 1日2回に減量することができる。

 

■用量設定の背景

「1回18mgを1日2回」の用量は、国際共同試験であるFIBRONEERTM-ILD試験やFIBRONEERTM-IPF試験の結果から、肺機能低下抑制効果のみならず死亡リスク低下傾向を含めた有効性及び安全性を検討し設定されています。

PPF患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験であるFIBRONEERTM-ILD試験では、1,176例が1:1:1の割合でプラセボ群、ジャスケイド18mg群、ジャスケイド9mg群にランダム化して割り当てられました。

その結果、主要評価項目である、52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量のプラセボ群との群間差は、ジャスケイド18mg群で67.2mL、ジャスケイド9mg群で81.1mLであり、いずれの群においても統計学的な有意差が認められ(それぞれp=0.0002、p<0.0001、MMRM)、ジャスケイドのプラセボに対する優越性が示されました(検証的な解析結果)(図3)。

図3

重要な副次評価項目である、治験期間中のILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院又は死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間(複合評価項目)のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド18mg群で0.77、ジャスケイド9mg群で0.88であり、いずれの群においても有意差が認められず、優越性は示されませんでした(検証的な解析結果)(図4)。

図4

一方、個別の臨床イベントの解析において死亡までの期間のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド9mg群では0.60でした。また、ジャスケイド18mg群では0.48で、52%のリスク低下がみられました(図5)。

図5

※本試験における安全性について後段でご紹介いたします。また、本試験の試験概要及びFIBRONEERTM-IPF試験の試験概要・結果を本コンテンツ末尾でご紹介いたします。あわせてご参照ください。

続いて、以下の特定の背景を有する患者に該当しないかご確認ください。

■特定の背景を有する患者

●腎機能障害患者[末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)の患者]
末期腎不全の患者を対象とした臨床試験並びに薬物動態試験は実施していません。

●肝機能障害患者[重度の肝機能障害(Child-Pugh C)のある患者]
重度の肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験並びに薬物動態試験は実施していません。本剤の曝露量が上昇する可能性は否定できないため、本剤による治療は推奨されません。

●生殖能を有する者
動物試験(ラット)の結果に基づくと、本剤は流産を引き起こす可能性があります。妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後4日間における避妊の必要性と適切な避妊法について説明してください。

●妊婦
動物試験(ラット)の結果に基づくと、本剤は流産を引き起こす可能性があります。本剤投与中に妊娠又は妊娠が疑われる場合は、医師に知らせるように指導し、流産の可能性があることを説明してください。妊婦及び妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいとされます。

●授乳婦
動物試験(ラット)において乳汁中への移行が認められています。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討してください。

●小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していません。

続いて、服用中の他剤との相互作用をご確認ください。

■相互作用

ジャスケイドは、CYP3A及びP-糖蛋白(P-gp)の基質となっています(in vitro データ)。併用禁忌はありませんが、次の薬剤との併用にご注意ください。

●ピルフェニドン
本剤の作用が減弱するおそれがあります。ピルフェニドンを併用する場合は、本剤の投与量は1回18mg 1日2回とし、1回9mg 1日2回に減量しないでください。

●強い又は中程度のCYP3A誘導剤(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、ボセンタン等)、セイヨウオトギリソウ(St. John’s wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
本剤の主な代謝酵素であるCYP3Aが誘導され、本剤の曝露量が低下する可能性があります。これらの薬剤と併用する場合は、本剤の投与量を1回9mg 1日2回に減量しないでください。

●強いCYP3A阻害剤(クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビル等)
本剤の主な代謝酵素であるCYP3Aが阻害され、本剤の曝露量が上昇する可能性があります。強いCYP3A阻害剤と併用する場合は、本剤の投与量を1回9mg 1日2回投与に減量してください。

■ピルフェニドン併用中のジャスケイドの血漿中濃度

IPF患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験であるFIBRONEERTM-IPF試験には、対象にベースライン時に抗線維化薬を使用している患者と使用していない患者の両方が含まれました。

本試験の結果、ベースライン時にピルフェニドンを使用していた患者では、ベースライン時に抗線維化薬を使用していなかった患者と比較して、本剤のトラフ血漿中濃度がジャスケイド18mg群で48%、9mg群で55%低下しました(図6)。

図6

ピルフェニドンを併用する患者では、ジャスケイドの投与量を1回18mg 1日2回としてください。

投与期間中は次の副作用が現れることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

■副作用

重大な副作用として重度の下痢(1.3%)が認められています。その他の副作用として、下痢(30.8%)が一番多く、1%以上10%未満では悪心、体重減少、食欲減退が、1%未満では背部痛、心房細動が報告されています。

■下痢のマネジメント

下痢は、本剤の投与期間中に最も多く認められた副作用です。下痢の発現時は、脱水の慎重なモニタリングを行い、十分な水分補給を維持してください。また、カウンセリングを行い、必要に応じて食事指導や止瀉薬(ロペラミドなど)の投与を行ってください。

上記の対応を行っても下痢症状が変わらない場合や悪化する場合には、1回9mg 1日2回投与への減量や投与中断を検討してください。

減量や投与中断により回復又は軽快が得られた場合、医師の判断により再増量又は投与再開を検討してください。再増量又は投与再開の場合は慎重に投与し、投与後は患者の状態を十分に観察してください(図7)。

図7

本剤とニンテダニブを併用投与する場合の投与開始の順序や投与方法は、各薬剤の添付文書をご参照のうえ、医師の判断によりご検討ください。また、本剤とニンテダニブのどちらを先に減量又は投与中断するかは、投与開始の順序などを加味して臨床判断してください。

■FIBRONEERTM-ILD試験における有害事象発現率

FIBRONEERTM-ILD試験において、有害事象の発現割合は、ジャスケイド18mg群で93.1%、ジャスケイド9mg群で93.9%、プラセボ群で94.1%でした。
また、投与中止に至った有害事象の発現割合は、ジャスケイド18mg群で11.3%、ジャスケイド9mg群で9.9%、プラセボ群で11.7%でした(図8)。

図8

最もよくみられた有害事象は、下痢(ジャスケイド18mg群36.6%、ジャスケイド9mg群30.8%、プラセボ群25.0%;以下同順)、次いで咳嗽(15.6%、13.5%、15.3%)及び上気道感染(13.0%、10.7%、16.1%)でした(図9)。

図9

また、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象はそれぞれ図10~12のとおりでした。
その他、投与の際は以下の点にもご留意ください。

図10

図11

図12

●一包化又は分包について
本剤は光に対して不安定なため、服用直前にPTPシートから取り出すようにしてください。

●飲み忘れた場合の対応
次の服用時間に通常用量を服用するようにご指導ください。
飲み忘れた場合であっても決して2回分を一度に飲むことはせず、気がついたときに1回分の用量を飲んでください。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分をとばし、次の服用時間に1回分の用量を飲んでください。

今回は、ジャスケイドのご使用にあたってご確認いただきたい適正使用情報をご紹介しました。今回ご紹介した内容を、先生方の日常診療にお役立ていただけますと幸いです。

本コンテンツでご紹介した、FIBRONEERTM-ILD試験及びFIBRONEERTM-IPF試験の概要はこちらのとおりです。

【FIBRONEERTM-ILD試験の概要】

図13

図14

【FIBRONEERTM-IPF試験の概要及び結果】

図15

図16

図17

図18

図19

図20

図21

図22

図23

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