FIBRONEER™-ILD試験、FIBRONEER™-IPF試験の有用性

サイトへ公開:2026年07月03日 (金)

ジャスケイド®錠(一般名:ネランドミラスト)は「特発性肺線維症」(IPF)及び「進行性肺線維症」(PPF)に適応を有するホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)に対する選択性の高い阻害剤です。

ジャスケイドは、IPFの適応としては10年ぶり、PPFにおいても5年ぶりとなる新たな治療薬です。今回は、ジャスケイドの承認根拠となった2つの臨床試験についてご紹介します。

国際共同第Ⅲ相試験 FIBRONEERTM-ILD試験

 

■試験概要

FIBRONEERTM-ILD試験は、日本を含む44ヵ国403施設で実施された二重盲検ランダム化プラセボ対照試験です。

PPFと診断された患者1,176例を対象に、ジャスケイド18mgを1日2回投与する群、ジャスケイド9mgを1日2回投与する群、またはプラセボを投与する群に1:1:1の比率で無作為に割り付け、試験薬を52週間以上にわたって投与しました(図1)。

図1

■患者背景

本試験の平均年齢は約66歳、男性が約55%を占めていました(図2)。

図2

また、ベースライン時にニンテダニブを使用していた患者が約44%組み入れられました(図3)。

図3

スクリーニング時にシクロホスファミド、トシリズマブ、リツキシマブ、ミコフェノール酸及びプレドニゾン(15mg/日超)の使用は許可されませんでしたが、これらの薬剤は試験開始6ヵ月以降は原疾患の増悪管理等に対して処方可能でした。なお、プレドニゾン15mg/日超については、ILDの急性増悪が疑われた場合にも使用が許容されました(図4)。

図4

一方、アザチオプリンやメトトレキサート、タクロリムスなどの免疫抑制薬の使用は許可されていました。いずれかの免疫抑制療法がなされていた患者の割合は全体集団では22.8~24.7%であり、膠原病に伴うILD(CTD-ILD)では52.2~57.0%でした(図5)。

図5

ここがポイント:
本試験の対象には、ベースラインでニンテダニブを使用していた患者さんと、使用していなかった患者さんが含まれています。また、自己免疫性間質性肺疾患における原疾患(関節リウマチなど)の治療として免疫抑制療法を行っている患者さんも含まれました。

■FVCのベースラインからの絶対変化量

本試験の結果、主要評価項目である52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量は、ジャスケイド18mg群 -98.6mL、9mg群 -84.6mLであり、いずれもプラセボ群に対する統計学的有意差が認められ、ジャスケイドのプラセボに対する優越性が検証されました(検証的な解析結果)(図6左)。
また、2週目から52週目までの各群におけるFVCの絶対変化量は、図6右のグラフのように推移しました。

図6

ニンテダニブ使用状況別の解析において、プラセボ群との調整済み平均値の差(95%CI)は、ニンテダニブ使用ありでジャスケイド18mg群78.0mL(24.2, 131.8)、9mg群93.1mL(39.9, 146.3)、ニンテダニブ使用なしでジャスケイド18mg群58.9mL(12.1, 105.8)、9mg群71.8mL(24.9, 118.8)であり、FVC低下抑制はニンテダニブ使用状況別の両部分集団で認められました(探索的解析結果)(図7)。

図7

ここがポイント:
ジャスケイドは、プラセボに対して有意なFVC低下抑制効果を示しました(検証的な解析結果)。さらに、その効果はニンテダニブの使用の有無によらず認められました(探索的解析結果)。

■死亡までの期間

本試験では重要な副次評価項目(検証的な解析項目)として、治験期間中のILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院又は死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間(複合評価項目)が解析されましたが、ジャスケイドのいずれの群においてもプラセボ群との統計学的有意差が認められず、優越性は示されませんでした(ジャスケイド18mg群p=0.0602、9mg群p=0.3398、Wald検定)(図8)。

図8

一方で、複合評価項目を構成する個別項目の解析において、死亡までの期間のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド18mg群で0.48(95%CI: 0.30, 0.79)、9mg群で0.60(0.38, 0.95)であり、ジャスケイド群におけるリスク低下が示唆されました。ニンテダニブ使用状況別の解析結果は、それぞれ図のとおりでした(探索的解析結果)(図9)。

図9

ここがポイント:
ジャスケイド18mg,9mg群ともにプラセボ群に対する名目上有意な死亡リスクの低下が示されました。(ジャスケイド18mg群 プラセボ群に対するハザード比(95%CI)0.48 (0.30 0.79), P値0.0036 9mg群 プラセボ群に対するハザード比(95%CI)0.60 (0.38 0.95), P値0.0284)(DBL1)(探索的解析結果)。

■安全性

有害事象はジャスケイド18mg群364例(93.1%)、9mg群369例(93.9%)、プラセボ群369例(94.1%)に認められました(図10)。

図10

ジャスケイド群における主な有害事象は、下痢 18mg群36.6%及び9mg群30.8%、咳嗽 15.6%及び13.5%、上気道感染13.0%及び10.7%などでした(図11)。

図11

投与中止に至った有害事象は、ジャスケイド18mg群44例(11.3%)、9mg群39例(9.9%)、プラセボ群46例(11.7%)に認められました。ジャスケイド群における事象として下痢がジャスケイド18mg群10例(2.6%)、9mg群6例(1.5%)、プラセボ群2例(0.5%)、状態悪化がそれぞれジャスケイド群で6例(1.5%)、プラセボ群で12例(3.1%)と報告されました(図12)。

図12

また、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象は図13、14のとおりでした。

図13

図14

図15はニンテダニブの使用状況別の安全性です。有害事象は、ニンテダニブ使用ありでは、ジャスケイド18mg群161例(94.2%)、9mg群163例(94.2%)、プラセボ群162例(95.3%)に認められ、ニンテダニブ使用なしではそれぞれ、203例(92.3%)、206例(93.6%)、207例(93.2%)に認められました。

図15

ここがポイント:
投与中止に至った有害事象の発現割合は、プラセボ群11.7%に対し、ジャスケイド18mg群11.3%、9mg群9.9%でした(図12)。

国際共同第Ⅲ相試験 FIBRONEERTM-IPF試験

■試験概要

FIBRONEERTM-IPF試験は、日本を含む36ヵ国332施設で実施された二重盲検ランダム化プラセボ対照試験です。

IPFと診断された患者1,177例を対象に、ジャスケイド18mgを1日2回投与する群、ジャスケイド9mgを1日2回投与する群、またはプラセボを投与する群に1:1:1の比率で無作為に割り付け、試験薬を52週間以上にわたって投与しました(図16)。

図16

■患者背景

各群における平均年齢は69.9~70.5歳であり、男性の割合は80.9~85.8%でした(図17)。

図17

努力肺活量の予測値に対する割合(%FVC)の平均値は77.3~79.0%、一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する割合(%DLco)の平均値は49.4~51.7%でした。また、抗線維化薬(ニンテダニブ、ピルフェニドン)を使用している患者の割合は77.6~77.9%でした(図18)。

図18

ここがポイント:
各群のベースラインの患者背景に明確な差は見られませんでした。また、ベースラインで抗線維化薬を使用している患者さんが約78%含まれました。

■FVCのベースラインからの絶対変化量

本試験の結果、主要評価項目である52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量は、ジャスケイド18mg群 -114.7mL 、9mg群 -138.6mLであり、いずれもプラセボ群に対する統計学的な有意差が認められ、ジャスケイドのプラセボに対する優越性が検証されました(検証的な解析結果)(図19左)。
また、2週目から52週目までの各群におけるFVCの絶対変化量は、図19右のグラフのように推移しました。

図19

抗線維化薬使用状況別の解析では、52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量のプラセボ群との調整済み平均値の差は、ニンテダニブ使用ありではジャスケイド18mg群73.0mL、9mg群60.9mL、ピルフェニドン使用ありではジャスケイド18mg群63.4mL、抗線維化薬使用なしではそれぞれ69.6mL、78.4mLでした(図20)。

図20

ここがポイント:
52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量について、ジャスケイド群のいずれにおいてもプラセボ群に対する有意なFVC低下抑制が検証されました(検証的解析結果)。

■死亡までの期間

本試験では重要な副次評価項目(検証的な解析項目)として、治験期間中のIPFの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院又は死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間(複合評価項目)が解析されましたが、ジャスケイドのいずれの群においてもプラセボ群との統計学的有意差が認められず、優越性は示されませんでした(ジャスケイド18mg群p=0.3102、9mg群p=0.8568、Wald検定)(図21)。

図21

複合評価項目を構成する個別項目の解析において、死亡までの期間のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド18mg群で0.66(95%CI: 0.41, 1.08)、9mg群で0.95(0.61, 1.49)でした。抗線維化薬使用状況別の解析結果は、それぞれ図のとおりでした(図22)。

図22

ここがポイント:
ベースライン時の抗線維化薬使用状況別の死亡までの期間のハザード比(95%CI)は、ジャスケイド18mg群において全体集団0.66(0.41,1.08)、ニンテダニブ使用あり群0.64(0.30,1.37)、ピルフェニドン使用あり群1.12(0.51,2.47)、抗線維化薬使用なし群ではイベント数3例で0.26(0.07,0.91)でした(探索的解析結果)。

■安全性

有害事象はジャスケイド18mg群379例(96.7%)、9mg群371例(94.6%)、プラセボ群386例(98.2%)に認められました(図23)。

図23

ジャスケイド群における主な有害事象は、下痢ジャスケイド18mg群42.4%及び9mg群32.1%、咳嗽 17.4%及び18.4%などでした(図24)。

図24

投与中止に至った有害事象は、ジャスケイド18mg群63例(16.1%)、9mg群53例(13.5%)、プラセボ群51例(13.0%)に認められました。ジャスケイド群における有害事象として下痢は、ジャスケイド18mg群24例(6.1%)、9mg群7例(1.8%)、プラセボ群2例(0.5%)などが報告されました(図25)。

図25

また、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象は図26、27のとおりでした。

図26

図27

図28は抗線維化薬の使用状況別の安全性です。有害事象は、ニンテダニブ使用ありでは、ジャスケイド18mg群175例(98.3%)、9mg群178例(96.7%)、プラセボ群170例(98.3%)に認められ、ピルフェニドン使用ありでは、それぞれ123例(96.9%)、114例(95.0%)、129例(97.0%)、抗線維化薬使用なしではそれぞれ81例(93.1%)、79例(89.8%)、87例(100%)に認められました。

図28

ここがポイント:
投与中止に至った有害事象の発現割合は、プラセボ群13.0%に対し、ジャスケイド18mg群16.1%、9mg群13.5%でした。

今回は、ジャスケイドの承認根拠となった2つの臨床試験についてご紹介しました。このうちFIBRONEERTM-ILD試験では、ジャスケイドによるFVC低下抑制効果に加えて、死亡リスクの低下への寄与が観察されました。また、有害事象による投与中止率は、FIBRONEERTM-ILD試験ではプラセボ群11.7%に対し、ジャスケイド18mg群11.3%、9mg群9.9%であり、FIBRONEERTM-IPF試験ではプラセボ群13.0%に対し、ジャスケイド18mg群16.1%、9mg群13.5%でした。

ジャスケイドを、これからのIPF・PPF治療における選択肢のひとつとしてお役立ていただけますと幸いです。

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P-Mark 作成年月:2026年6月