IPF/PPFにおける服薬継続と患者サポートプログラムへの期待(静止画)
サイトへ公開:2026年08月31日 (月)
クイックリンク
ご監修:杉野 圭史 先生(一般社団法人慈山会医学研究所付属 坪井病院 院長)
取材日:2026年3月11日
取材場所:一般社団法人慈山会医学研究所付属 坪井病院 ご施設内
特発性肺線維症(IPF)の治療において、抗線維化薬の服薬継続率は「1年で約5割」という厳しい現実があります1, 2)。国内のデータによると、平均継続期間は約14.6ヵ月、開始1~2ヵ月間で4人に1人が脱落しているという現状があります1)。脱落理由の多くは下痢や悪心などの副作用に起因するものです。
一般社団法人慈山会医学研究所付属 坪井病院の杉野圭史先生は、「副作用だから仕方がない」と治療継続を諦めてしまう、医療従事者側の関わり方や治療に対する姿勢を見直すことにこそ、現状を改善するためのヒントがあると指摘します。
治療成功のために医師が持つべき熱量とは何か。そして、「患者サポートプログラム」の活用が、医療従事者にとってどのようなメリットとなるのか。杉野先生のご経験や知見から紐解きます。
服薬継続を阻む壁――「副作用だから仕方がない」という諦めと医療従事者の役割
Q:抗線維化薬の服薬継続率は「1年で約5割」という厳しいデータがありますが、先生はこの現状をどのようにご覧になっていますか?
服薬継続率を向上させるためには、患者さんを説得したり、疾患や病態の理解を深めてもらったりすることが重要だと思われがちです。しかし私は、それ以上に医療従事者側の「意識」を見直す必要もあると感じています(図1)。副作用の発現自体は、治療を進める上で避けられない一面もあります。ですが、それを理由に医師側が「副作用が出たから仕方がないね」「服薬をやめましょうか?」と、安易に治療継続を諦めてしまうような姿勢が少なからず見受けられます。処方する側の医師が諦めてしまっては、服薬継続率が向上するはずもありません。
図1

Q:副作用が出た段階でそのまま治療が中止になってしまうケースは多いのでしょうか?
全国的にみても、副作用によって一度「休薬」という判断を下したまま、処方を再開させずに「中止」へと至ってしまう症例が少なくない印象です。これは、再開できないのではなく、医師側が再開「しない」のです。副作用が発現した際、肝心の医療従事者が先に諦めてしまっては、患者さんが服薬を継続するモチベーションを保てるはずがありません。
当院では、治療開始から1年が経っても、7割の患者さんが服薬を継続できています。患者さんへのサポートを心がけていることはもちろんですが、私たち医療従事者側が服薬中止を選択せず、粘り強く治療に向き合っているからだと考えています。そのためには、処方する医師が「この薬は本当に有効なんだ」「患者さんにとってベネフィットがあるんだ」という認識を正しく持たない限り、いつまでも「効果があまり感じられない」「意味がないんじゃないか」という誤った解釈で対応し続けることになってしまいます。まずは医療従事者側が、治療の効果や副作用に対して適切に理解をすることが大切だと考えています。
「低下速度を遅らせる」治療目標の共有と医師の熱量
Q:医師が治療の継続を諦めやすくなってしまう背景には、どのような要因があるとお考えですか?
薬剤の有効性に対する誤解も要因のひとつだと思います(図2)。抗線維化薬の有効性は、呼吸機能を「回復」させることではなく、呼吸機能の低下速度を遅らせる(低下抑制)ことにあります。ここをしっかりと認識しなければ、目に見える回復がないために「効いていないのではないか」という誤解に繋がってしまいます。また、IPFの自然経過として、1年間でFVCが約150~200mL低下するという前提への理解不足も少なくありません。そのため、100mLの低下にもかかわらず、患者さんに「呼吸機能が落ちたね」と説明して、不必要に不安にさせてしまったり、逆に300~500mLの大幅な低下が起きているにもかかわらず、「仕方がない」と見過ごしてしまったりといった、対応の二極化が生じています。
患者さんは、信頼する医師からの丁寧な説明や励ましの言葉があるからこそ、「頑張って服薬を継続しよう」と思えるものです。まずは、処方医自身が熱意を持って患者さんと対話し、服薬継続のための高いモチベーションを付与する「第1段階」の介入が不可欠だと思います。
図2

医師の初期介入と患者サポートプログラム――「二段構え」で患者さんをサポートする
Q:医師が熱量を持つことが大前提である上で、「患者サポートプログラム」にどのような期待がありますか?
どんなに質の高い患者サポートプログラムであっても、医療従事者側の認識や対応方法に問題があると、効果は十分に発揮されません。臨床現場に急にプログラムだけを導入しても、本当の意味で生かすのは難しいでしょう。重要なのは、まず医師自身が直接説明して患者さんのモチベーションを上げ、その上で患者サポートプログラムを組み合わせるという「二段構え」のサポート体制の構築です(図3)。これは、患者さんに服薬を継続させることが困難な医師を、強力にバックアップする視点でも重要です。
服薬継続率の向上が期待できるサポートプログラムは、医療従事者にとっても大きなメリットをもたらしてくれます。
図3

Q:服薬継続率の向上が期待できるサポートプログラムは、医療従事者(医師)側にとって具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?
服薬継続率の向上が期待できるサポートプログラムは、医療従事者にとっても大きなメリットをもたらしてくれます。具体的には、大きく3つのポイント(機能)が挙げられます(図4)。
図4

第一に、看護師への電話相談です。当院の例を挙げますと、抗線維化薬を開始した後は、必ず2週間後に外来に来てもらうようにしています。それは、最初の2週間、そして副作用が多く発現する最初の3ヵ月を継続できるかどうかが非常に大切なポイントだからです。この期間、私たちは患者さんに「何かあればいつでも病院に電話してね」と伝えています。しかし、患者さんとしては「こんな些細なことで電話してよいのだろうか」という高い心理的ハードルがあるのも事実です。そこを、病院ではない「電話相談窓口」が受け皿となり、患者さんの不安や悩み事を拾い上げてくれるのであれば、非常にメリットが大きいといえます。そして、その情報が適切に病院へフィードバックされる仕組みがあれば、自施設の対応負担を軽減でき私たち医師側も楽になると思います。
第二に、精査された疾患・治療情報です。多くの患者さんは、診断された後にさまざまな情報を調べます。しかし、情報が多すぎてどれを信じていいか判断がつかなくなり、混乱して見るのをやめてしまうケースが多々あります。特にweb上にあふれる品質の低い情報ばかりに触れてしまうリスクを防ぐためにも、専門医により精査された正しい情報源を紹介することが非常に良いと思います。診察室での説明負担や混乱を回避でき、医師側としてもコミュニケーションがしやすくなると思います。
第三に、検査結果の時系列グラフ化です。健康成人や未治療者のデータを同じグラフ上に並べるような比較は、患者さんにとって情報量が多すぎて、かえって誤った情報を読み取る懸念があります。情報量はできるだけ少なく、シンプルにFVC(呼吸機能検査)やKL-6の数値のみを可視化することが、最も分かりやすいと思います。数値をシンプルに可視化することで、「低下が少しでも抑制できていること」を患者さん自身が視覚的に実感できるようになり、治療継続のモチベーションへと繋がります。データをもとに、医師側からも適切なコミュニケーションをとりやすくなるため、医療従事者にとって心強いメリットだと思います。
私たちは今「過渡期」にいる――ブレイクスルーを信じて
Q:最後に、ILD治療の最前線で治療継続に取り組む先生方へメッセージをお願いします。
現在のILD治療を取り巻く状況は、私が研修医だった約30年前の「肺がんの暗黒時代」に本当によく似ていると感じています。当時は肺がんに対する有効な治療法に乏しく、余命半年や1年がほとんどで、肺がんの診療に携わることは若い先生も含めてみんな嫌がるような時代でした。
私たちは今、歴史が動く「過渡期」に生きているのだと認識して、この治療に飛び込むしかありません。かつての肺がんの暗黒時代に比べれば、現在のILD治療は生命予後の改善や急性増悪の抑制など、薬剤のメリットを示唆する報告もあります。医師として、十分にモチベーションを高めてILD診療に取り組める時代です。治療に粘り強く向き合い、患者サポートプログラムのような強力なツールを自らの診療の武器として最大限に活用し、熱意を持って治療に向き合うことが重要です。
図5

【参考文献】
- Ogura T. et al.: Adv Ther 2023; 40(4): 1474-1493. 著者に日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の社員が含まれます。
- Kato M. et al.: Drug Des Devel Ther 2021; 15: 223-230. 著者にベーリンガーインゲルハイム社より講演料を受領している者が含まれます。
この記事はお役に立ちましたか?
その他の関連情報
日本ベーリンガーインゲルハイム
メディカルチャット 利用規約
当社の「日本ベーリンガーインゲルハイム メディカルチャット」(以下「本サービス」といいます)のご利用に際しては、本利用規約が適用されますので、必ず以下の記載事項をご確認下さい。
利用規約
- 本サービスは、当社所定のウェブページから文字によりお問い合わせいただくことにより、当社医薬品等に関する一般的な情報を、人工知能あるいは当社担当者により、文字及び図表により回答するサービスです(以下、人工知能による回答サービスを「AIチャット」、当社担当者による回答サービスを「有人チャット」といいます。)。ただし、AIチャットによる回答を原則とし、有人チャットは、AIチャットでの回答に対し、有人チャットでの回答も希望された場合に、提供させていただきます。
- 本サービスをご利用いただくことができるのは、当社医薬品等を扱いかつ国内に在住する医療関係者の方に限られます。当該医療関係者以外の方は、ご利用いただくことができません。
- 本利用規約に同意いただけない場合、本サービスを利用いただくことができません。本利用規約を最後までお読みいただき、「同意して利用する」ボタンを押した上で、本サービスをご利用下さい。
- 本サービスは、当社医薬品等に関する一般的なお問い合わせに対して回答するものとし、次の各号に掲げるお問い合わせについては、回答しないものとします。
- 当社医薬品等と関係のないお問い合わせ、または本サービスの回答範囲を逸脱したお問い合わせ
- 具体的な症状や治療方法に関するお問合せ
- 当社に適用される法令、ガイドラインまたは行政上の指導、当社自主規制その他当社が遵守すべきルールにより回答できないお問い合わせ
- 文字化け等により入力内容が判断できないお問い合わせ
- 前各号に掲げるほか、本サービスにより、適切な回答をすることができないと当社が判断した事項に関するお問い合わせ
- 本サービスは、日本語のみに対応しています。
- 本サービスは、当社医薬品の副作用、不具合及び有害事象の報告を受け付けていません。
- お問い合わせの内容によっては、本サービスでは十分に回答できない場合もございます。予めご了承下さい。
- 本サービスの利用可能時間は、以下のとおりです。
- AIチャット
24時間365日 - 有人チャット
平日9:00~17:00
- AIチャット
- 前項に関わらず、メンテナンス及び障害等のため一時的に本サービスを中断する場合がございます。
本サービスのご利用の際には、原則として、個人情報(お名前、ご住所、電話番号、メールアドレス等)を入力しないようお願いします。ただし、AIチャット及び有人チャットを問わず、当社医薬品の適用外使用に関するお問い合わせについては、コンプライアンス上の理由により、当社より、氏名及び施設名の入力を求める場合がございます。この場合には、当社プライバシーポリシーの内容を確認いただき、同意いただける場合に限り、入力して下さい(プライバシーポリシーについては「VIII 利用規約、プライバシーポリシー」に記載のURLからアクセス下さい)。その他の場合に、当社より個人情報の入力を求めることは一切ございません。
- 当社医薬品のご使用にあたっては、最新の添付文書等をご確認下さい。
- 当社は、本サービスまたは本サービスにより提供される情報の利用に際し生じた結果については、一切責任を負いません。
本サービスの利用にあたり、以下の各号の行為を禁止します。
- 本サービスにより提供される情報を複製、複写、転載、改変等する行為
- 第三者または当社の知的財産権その他の権利を侵害する行為
- 第三者または当社を誹謗中傷し、または名誉・信用を毀損する行為
- 本サービスの利用による営利目的の行為
- 本サービスの運営又は他の利用者による本サービスの利用の妨げとなる行為
- 前各号のほか、当社が不適当であると判断する行為
当社は、いつでも本サービスの提供を終了、またはその内容を変更することができるものとします。
本サービスの利用に関しては、以下の利用規約及びプライバシーポリシーが併せて適用されますので、ご確認下さい。