2型糖尿病と診断された患者さんにおける将来の不安に寄り添う薬物療法(静止画)

サイトへ公開:2026年05月15日 (金)

糖尿病治療においては、糖尿病に伴う身体的な合併症の抑制だけでなく、心理面での負担軽減に努め、糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLを保つことも目標の1つとされています。1)
糖尿病と診断された方は、どのようなことに不安を感じているのか?そしてその不安に寄り添った薬物治療を行うには何を重視すべきかについて考えてみましょう。1) 
1) 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.

こちらの患者さんはBMIが25kg/m2の60歳男性で、高血圧と脂質異常症に対しそれぞれアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、スタチンで治療を行っていましたが、新たに2型糖尿病と診断されました。eGFRは71mL/min/1.73m2なので、腎機能はまだ保たれています。
今回は、このような背景を有する患者さんにおいて薬物治療を開始する際に考慮したい点をご紹介します。 

2型糖尿病に併存する高血圧症と脂質異常症のリスクについて調査した疫学データです。
それぞれの病態に介入を行い、HbA1c、収縮期血圧、non-HDLコレステロール:HDLコレステロール比の改善状況ごとに冠動脈疾患、心血管疾患、全死亡などのイベント発生率を見ると、2型糖尿病に高血圧症と脂質異常症が併存することにより、心血管イベントおよび全死亡の発生率が上昇すると報告されています。
2型糖尿病を有する方では高血圧症や脂質異常症が高率に併存する注)ことを踏まえると、将来のイベントリスクを考慮した薬剤選択を行うことが重要であると考えられます。
注)Arnold SV, et al. Diabetes Obes Metab. 2018 ; 20(8) : 2000-3.
利益相反:著者にベーリンガーインゲルハイム社より研究助成金等を受領している者が含まれる。

2型糖尿病の診断時年齢と心不全による入院リスクの影響について調査した疫学データです。
若年(40歳未満)で2型糖尿病を有する方は、糖尿病を有さない方に比べて心不全による入院率が増加する(0.88[95%CI 0.82-0.95] vs 0.12[95%CI 0.11-0.14]/1,000患者年)ことが示されています。そのため、治療期間が長期化する若年で糖尿病と診断された方には、将来の心不全リスクを考慮した治療を行うことが重要であると考えられます。

心腎疾患がない2型糖尿病を有する方における初発心腎疾患の発生率に関する国際共同コホート研究の日本人集団データでは、心腎疾患のない方であっても、追跡期間が長くなるほど初発のCKDまたは心不全発生の累積発現率が上昇し、初発イベントの約4割がCKD、約3割が心不全であったと報告されています。

日本糖尿病協会が2021~2022年に実施したアンケートにおける糖尿病患者2,535例の回答によると、糖尿病のことで将来に不安を感じておられる方は58.4%おられ、不安の原因として最も多いのは合併症の進行で66.8%を占めていました。
この結果を踏まえると、2型糖尿病と初めて診断され、薬物療法を開始される方に対しては、適切に将来の合併症リスクに関する情報を共有し、感情面での負担や不安を少しでも軽減するよう配慮することが求められます。

ここからは2型糖尿病に対する初めての薬物療法としてジャディアンスを使用した際の有効性と安全性について、プラセボあるいはシタグリプチン100mgと比較検討した国際共同第Ⅲ相検証試験EMPA-REG MONO試験の結果をご紹介します。
本試験では、食事療法・運動療法で十分な血糖コントロールが得られない、薬物治療を受けていない2型糖尿病患者947例が登録されました(うち日本人は180例)。主要評価項目(検証的な解析項目)は投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの調整平均変化量が設定されました。
さらに24週間の投与を完了した被験者899例を対象として、最初に割り付けられた試験薬を52週間延長投与し、長期的な有用性が検討されました(EMPA-REG EXTEND MONO試験)。

主要評価項目である投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群-0.65%、25mg群-0.76%、シタグリプチン100mg群-0.65%、プラセボ群0.08%であり、プラセボ群に対する差は、10mg群-0.74%、25mg群-0.85%で、いずれも優越性が検証されました(p<0.0001、ANCOVA、検証的な解析結果)。
ジャディアンス群、シタグリプチン100mg群では、投与12週時までにHbA1cが7.0%前後に改善、ジャディアンス群ではHbA1c改善効果は投与76週時まで持続しました。
また、投与76週後のHbA1cのベースラインからの平均変化量は、プラセボ群では0.13%、ジャディアンス10㎎群では-0.65%、ジャディアンス25㎎群では-0.76%*†、シタグリプチン100㎎群では-0.53%で、プラセボ群に比べ、ジャディアンス10㎎群、25㎎群、シタグリプチン100㎎群では有意な低下を示しました(*p<0.001 vs プラセボ、†p<0.005 vs シタグリプチン10mg、ANCOVA、いずれも名目上のp値)。

52週間延長投与における有害事象の発現割合は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)でした。
また、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25例)、7.2%(16例)、10.0%(23例)、8.1%(18例)に発現しました。
こちらの概要に記載はありませんが、これまで同様、低血糖や性器感染症、尿路感染症に対する注意も必要です。

EMPA-REG OUTCOME試験は、心血管イベントリスクの高い日本人を含む2型糖尿病患者7,020例を対象として、標準治療にジャディアンスを上乗せしたときの心血管リスクへの影響を検討することを目的に実施されました。
ジャディアンス10mg群2,345例、25mg群2,342例またはプラセボ群2,333例に割り付けられ、中央値で3.1年間追跡調査されました。主要評価項目(検証的な解析項目)には、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合心血管イベント(3-point MACE)の発現が設定されました。
主な患者背景は、平均年齢約63歳、男性約72%、白人約72%、アジア人約21%、平均BMI約31kg/m2、平均HbA1c約8.1%、平均eGFR約74mL/分/1.73m2でした。また、登録患者の約95%がなんらかの降圧薬、約80%がなんらかの脂質降下薬を服用していました。

主要評価項目である3-point MACEのリスクが14%有意に低下し、プラセボ群に対する優越性が検証されました(ハザード比0.86、95.02%CI 0.74-0.99、p=0.04(有意水準:両側0.0498)、Cox比例ハザードモデル、検証的な解析結果)。本試験は、糖尿病治療薬として心血管イベントリスクの減少を初めて示しました。
その他の評価項目(探索的)については、ジャディアンス群はプラセボ群に対して心血管死で38%(ハザード比0.62、95%CI 0.49-0.77、p<0.001)、全死亡で32%(ハザード比0.68、95%CI 0.57-0.82、p<0.001)と、いずれも有意なリスク低下を示しました(いずれも名目上のp値、Cox比例ハザードモデル)。

同じくその他の評価項目(探索的)である心不全による入院においても、ジャディアンス群はプラセボ群に対して35%の有意なリスク低下を示しました(ハザード比0.65、95%CI 0.50-0.85、p=0.002、名目上のp値、Cox比例ハザードモデル)。

顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニン値の倍化、腎代替療法(透析など)の開始、腎疾患による死亡などからなる、腎症の初回発現もしくは悪化に関する腎複合イベントでは、ジャディアンス群はプラセボ群に対して39%の有意なリスク低下を示しました(ハザード比0.61、95%CI 0.53-0.70、p<0.001、名目上のp値、Cox回帰分析)。 

本試験における有害事象発現割合は、ジャディアンス10mg群90.1%(2,112/2,345例)、ジャディアンス25mg群90.4%(2,118/2,342例)、プラセボ群91.7%(2,139/2,333例)でした。重篤な有害事象は、それぞれ37.4%(876/2,345例)、39.0%(913/2,342例)、42.3%(988/2,333例)に認められました。
主な有害事象は、低血糖がジャディアンス10mg群29.7%、ジャディアンス25mg群28.8%、プラセボ群29.4%、尿路感染がそれぞれ14.8%、14.8%、15.1%、高血糖がそれぞれ9.4%、8.8%、18.5%、高血圧がそれぞれ6.7%、7.8%、9.3%などでした。

ジャディアンスは、EMPA-REG OUTCOME試験において心血管リスクの高い2型糖尿病患者の心血管イベントや心不全による入院のリスク、腎イベントのリスクを低減させるエビデンスを示しました。その後、2型糖尿病の効能及び効果に加え、EMPEROR-Reduced/Preserved試験の結果により慢性心不全※1、EMPA-KIDNEY試験の結果により慢性腎臓病※2の効能及び効果が追加承認された薬剤です。
2型糖尿病のある方のほぼ半分は、合併症などの将来不安を抱いているという国内の調査結果があります。そのため、初めて2型糖尿病と診断され薬物療法の開始が検討される際には、心血管イベントのリスク因子である高血圧や脂質異常症などの併存状況も考慮し、将来の心腎イベントリスク抑制を踏まえた薬剤選択を行うことが重要であると考えられます。
※1:ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
※2:ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

ジャディアンスの電子添文はこちら

ジャディアンスには汎用されているDPP-4阻害薬トラゼンタとの配合錠トラディアンスAPとBPがあります。
ジャディアンス10mgとトラゼンタ5mgの配合錠がAP、ジャディアンス25mgとトラゼンタ5mgの配合錠がBPです。トラディアンス、ジャディアンスのいずれから切り替えても1日1回1錠のまま投与可能です。
さらなる血糖コントロールと服薬アドヒアランスが求められている患者への選択肢として、トラディアンス配合錠AP・BPを是非ご検討ください。

トラディアンス配合錠AP・BPの電子添文はこちら

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