CKD診療における腎予後予測マーカーeGFRスロープの重要性 第2回
サイトへ公開:2025年02月27日 (木)
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EMPA-KIDNEY試験とリアルワールドデータで示されたSGLT2阻害薬のeGFRスロープ改善効果
ご監修:
久留米大学内科学講座 腎臓内科部門 主任教授 深水 圭 先生
腎予後予測マーカーとして注目されているeGFRスロープの重要性について、第2回ではEMPA-KIDNEY試験の結果とリアルワールドデータを示しながら、SGLT2阻害薬のeGFRスロープ改善効果について久留米大学内科学講座腎臓内科部門の深水 圭先生にご解説いただきます。
EMPA-KIDNEY試験で示されたジャディアンスのeGFRスロープ改善効果
2024年2月、ジャディアンスに慢性腎臓病※の適応が追加される根拠となったEMPA-KIDNEY試験において、腎保護効果の指標としてのeGFRスロープがその他の評価項目(探索的)として検討されました。eGFRスロープを中心に、有効性および安全性の概要をご紹介します。
※ ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
EMPA-KIDNEY試験の概要
本試験は、腎疾患進行リスクのある慢性腎臓病患者を対象に、ジャディアンス10mgを投与した場合の、腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間におけるプラセボに対する優越性を検証するとともに安全性を検討することを目的に実施されました。
本試験では、その他の評価項目としてeGFRスロープも検討されています。

腎疾患進行または心血管死の初回発現(主要評価項目[検証的な解析結果])
主要評価項目の腎疾患進行または心血管死の初回発現リスクは27%低下し、ジャディアンス10mg群のプラセボ群に対する優越性が検証されました※。
※ HR=0.73、99.83%CI:0.59~0.89、p<0.0001、Cox回帰モデル、検証的な解析結果

eGFRスロープ(その他の評価項目[探索的])
こちらにeGFRスロープの解析結果をお示しします。
ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間の解析では、プラセボ群と比べ、ジャディアンス10mg群ではeGFRスロープの傾きを緩やかにしていることが示されました※ (図左上) 。
※推定されたeGFRスロープの群間差:0.74mL/分/1.73m2/年[95%CI 0.53-0.95]、p<0.0001[名目上のp値]、shared parameterモデル
投与初期のeGFRの急性変化が生じやすい期間を除外した、2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期の解析においても、プラセボ群と比べ、ジャディアンス10mg群ではeGFRスロープの傾きを緩やかにしていることが示されました※(図左下)。
※推定されたeGFRスロープの群間差:1.36mL/分/1.73m2/年[95%CI 1.14-1.58]、p<0.0001[名目上のp値]、shared parameterモデル
次に、eGFRのベースラインからの変化量の経時的な推移をお示しします。
eGFRのベースラインからの変化量は、ジャディアンス10mg群とプラセボ群でグラフのような推移を示しました(図右)。

ベースラインのUACR別のeGFRスロープ(2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院まで)(その他の評価項目[探索的])(全体集団解析、サブグループ解析)
eGFRスロープについてベースラインのUACR別のサブグループ解析が行われていますので、その結果もご紹介します。
慢性期において、推定されたeGFRスロープの差は、正常群では0.78、微量アルブミン尿群では1.18、顕性アルブミン尿群では1.74でした。そのため、ジャディアンス10mg群はUACR値によらず、プラセボ群に対してeGFRスロープの傾きを緩やかにすることが示されました※。
※正常群:p=0.0008、微量および顕性アルブミン尿群:各p<0.0001、いずれも名目上のp値、shared parameterモデル

安全性
最後に、本試験の安全性についてご説明します。
ジャディアンス10mg群、プラセボ群の治験薬投与期間中央値21.82ヵ月、21.53ヵ月での有害事象発現割合は、ジャディアンス10mg群で43.9%、プラセボ群で46.1%でした。
3%以上の頻度で認められた主な有害事象はジャディアンス10mg群で痛風7.0%、コロナウイルス感染3.0%、プラセボ群で痛風8.1%、急性腎障害3.6%、コロナウイルス感染3.3%でした。

SGLT2阻害薬のeGFRスロープ低下抑制効果―国内リアルワールドデータ―

日本人CKD患者の大規模なレジストリーであるJapan Chronic Kidney Disease Database(J-CKD-DB)を用いて、SGLT2阻害薬の腎保護効果を検討した研究においても、SGLT2阻害薬のeGFRスロープ低下抑制効果が報告されています1)。
Nagasu H, et al. Diabetes Care. 2021 ; 44 : 2542-51.
著者にベーリンガーインゲルハイム社およびイーライリリー社より研究助成金等を受領している者が含まれる。
解析対象者の臨床的特徴
本試験はJ-CKD-DBに登録された糖尿病患者を対象としており、対象者のeGFRは、両群とも≧60mL/分/1.73m2が70%以上と最も多く、尿蛋白陽性の割合は、27.5~28.5%でした。
血圧降下薬については、ARBやCaチャネル拮抗薬の使用率が最も多く、いずれも40%程度でした。
SGLT2阻害薬によるeGFRスロープ低下の改善効果(主要評価項目)
投与開始からのeGFRの変化量の推移は、下図のようになりました。

Reprinted with permission from Nagasu H, Yano Y, Kanegae H, et al: Kidney Outcomes Associated With SGLT2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs in Real-world Clinical Practice: The Japan Chronic Kidney Disease Database, Diabetes Care 2021;44:2542–2551 (doi.org/10.2337/dc21-1081). Copyright 2021 by the American Diabetes Association.
eGFRスロープのサブグループ解析 ―蛋白尿有無別―(主要評価項目のサブグループ解析)
投与開始後のeGFRスロープはSGLT2阻害薬群で-0.47mL/分/1.73m2/年、その他の糖尿病治療薬群で-1.22mL/分/1.73m2/年でした。群間差は、0.75mL/分/1.73m2/年(95%CI:0.51-1.00)であり、SGLT2阻害薬群でeGFRスロープの低下が有意に抑制されていました(p<0.001[名目上のp値]、線形混合回帰モデル)。
尿蛋白の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬はその他の糖尿病治療薬に比べ、eGFRスロープの低下を有意に抑制しました※。
※蛋白尿あり:群間差0.65mL/分/1.73m2/年[95%CI 0.13-1.16]、p=0.014[名目上のp値]、蛋白尿なし:群間差0.80mL/分/1.73m2/年[95%CI 0.52-1.07]、p<0.001[名目上のp値][線形混合回帰モデル]

Adapted with permission from Nagasu H, Yano Y, Kanegae H, et al: Kidney Outcomes Associated With SGLT2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs in Real-world Clinical Practice: The Japan Chronic Kidney Disease Database, Diabetes Care 2021;44:2542–2551 (doi.org/10.2337/dc21-1081). Copyright 2021 by the American Diabetes Association.
eGFRスロープのサブグループ解析 ―RAS阻害薬有無別―(主要評価項目のサブグループ解析)
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の使用の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬はその他の糖尿病治療薬に比べ、eGFRスロープの低下を有意に抑制しました※。
※RAS阻害薬あり:群間差0.99mL/分/1.73m2/年[95%CI 0.63-1.35]、p<0.001[名目上のp値]、RAS阻害薬なし:群間差0.51mL/分/1.73m2/年[95%CI 0.18-0.85]、p=0.003[名目上のp値][線形混合回帰モデル]

Adapted with permission from Nagasu H, Yano Y, Kanegae H, et al: Kidney Outcomes Associated With SGLT2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs in Real-world Clinical Practice: The Japan Chronic Kidney Disease Database, Diabetes Care 2021;44:2542–2551 (doi.org/10.2337/dc21-1081). Copyright 2021 by the American Diabetes Association.
おわりに
CKD診療におけるeGFRスロープの重要性を2回にわたってご紹介しました。
これまで、腎保護効果を検討した臨床試験のエンドポイントの達成には、多数の症例と長期のフォローアップが必要でしたが、 eGFRスロープはそれに代わりうるサロゲートエンドポイントとして注目されています。日常診療では早期CKD患者の腎機能を確認し、eGFRスロープを活用して腎機能の急峻な低下を早期にとらえ、速やかな治療介入によりスロープの傾きを緩やかにし、透析リスクや心血管イベントリスクを抑えることが重要と考えられます。
近年、EMPA-KIDNEY試験において主要評価項目の腎疾患進行または心血管死の初回発現リスク低下が示されました。また、SGLT2阻害薬が、eGFRスロープの傾きを緩やかにすることがリアルワールドのデータからも明らかになってきました1)-3)。eGFRスロープのエビデンスも有するジャディアンスを、CKD治療における選択肢の1つとしてご検討ください。
References
- Nagasu H, et al. Diabetes Care. 2021 ; 44 : 2542-51.
- Heerspink HJL, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 ; 8 : 27-35.
著者にベーリンガーインゲルハイム社およびイーライリリー社より助成金等を受領している者が含まれる。 - Nakhleh A, et al. Diabetes Obes Metab. 2024 ; 26 : 3058-67.
その他の関連情報
eGFR計算ツール・eGFRスロープ計算ツール・CKDイベントリスクシミュレーションツール
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