代謝性疾患

MASLD診療ガイドライン2026から読み解くMASLDの最前線

サイトへ公開:2026年06月10日 (水)

2023年の病名変更を経て、2026年4月に代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の診療ガイドラインが刊行されました。
本コンテンツでは、『MASLD診療ガイドライン2026 改訂第3版』に基づき、MASLDの定義・イベントリスクから、
かかりつけ医および専門医によるフォローまで整理してご紹介します。

Topics

1.MASLD/MASHへの病名変更
2.MASLDのイベントリスク
3.MASLDと代謝性疾患との関連
4.かかりつけ医と消化器専門医によるハイリスク症例の絞り込み

1.MASLD/MASHへの病名変更

MASLDは、2023年に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の名称変更と新たな診断基準の策定に伴い導入された疾患概念で、「画像診断または組織学的に5%以上の脂肪変性を認める脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD)のうち、心代謝系危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF)を1つ以上有すること」と定義されます。また、エタノール換算で飲酒量が女性で140g/週未満、男性で210g/週未満と少なく、薬物、単一遺伝子病といった他のSLDの原因が除外された場合にMASLDと診断されます1)
MASLDのうち「病理組織学的に脂肪肝炎[脂肪変性、炎症、肝細胞傷害(風船様変性)]を認める症例」は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)と診断されます1)

Point
MASLDの定義:
・画像診断または組織学的に5%以上の脂肪変性を認める
・心代謝系危険因子を1つ以上有する
・飲酒量がエタノール換算で女性<140g/週、男性<210g/週

図1

2.MASLDのイベントリスク

MASLDは肝線維化の進展や、将来的には肝硬変、肝癌の発症を来しうる疾患です。さらに、心血管イベントや肝外悪性腫瘍の発生リスクも知られ、ガイドラインでは、これらのリスクを踏まえた包括的なフォローアップが求められています2)

肝臓関連のイベントリスク

日本人を対象とした多施設共同研究では、肝臓関連イベント(肝細胞癌、静脈瘤破裂、肝不全)の発生率は、F0–1の2.8/1,000人年に対し、F2、F3、F4でそれぞれ5.4、21.5、90.1/1,000人年、肝細胞癌発症率はそれぞれ1.7、4.5、14.2、16.9/1,000人年で、線維化進行に伴うリスク上昇が示されています3)
また、ガイドラインでは、「肝線維化進展および肝発癌のリスク因子としては、高齢、2型糖尿病、肝硬変の家族歴などが報告されており、リスク層別化において考慮する必要がある」とされています4)

Point
・MASLDは一般人口に比べ、肝臓関連イベント(肝細胞癌、静脈瘤破裂、肝不全)のリスクが高い
・肝臓関連イベントリスクは病期が進むにしたがい増加する

肝臓関連以外のイベントリスク

日本のコホート研究では、BMI高値(BMI≧23kg/m2)の場合、肝疾患のない群と比較してMASLDがある群では、心血管イベントリスク(虚血性心疾患、脳血管障害およびそれに伴う死亡)の増加がハザード比1.35と報告されています5)
肝外悪性腫瘍については、特に大腸癌の発症リスクが上昇することが知られており、メタアナリシスにおいて、ハザード比は1.64と報告されています6)。ガイドラインでは、そのほかに胃癌、食道癌、婦人科癌のリスク増加も指摘されています。

Point
MASLDでは心血管イベントリスクが増加する

図2

3.MASLDと代謝性疾患との関連

さらに、MASLDは、2型糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧といった併存疾患と密接に関連しています。

2型糖尿病

「肝臓はインスリンの重要な標的臓器であり、肝内の過剰な脂肪蓄積はインスリン抵抗性を惹起」します7)。SLDは糖尿病の発症に加え、心血管疾患および全死亡のリスクとなることが知られ8,9)、日本のMASLDを併発した糖尿病のある人を対象とした研究では、MASLDの改善が糖尿病のある人における心血管疾患のリスク低減につながったことが報告されています10)

Point
・MASLDと2型糖尿病は密接に関係し、互いに発症・病期進展・イベントの発症や患者予後に関わる

肥満

国内の健診受診者を対象とした検討では、BMIごとのMASLD有病率はBMI<23kg/m2で8.9%、23~25kg/m2で34.0%、25~28kg/m2で55.3%、≧28kg/m2で76.7%であり、BMIが上昇するごとにMASLDの有病率は高くなることが示唆されています11)。また、肥満を定義するBMIのカットオフ値は、MASLDの長期予後の予測に有用であるとするメタアナリシスも報告されています12)

Point
肥満およびその重症度はMASLDの疾患の進展と関連している

脂質異常症

MASLDの病態進展は脂質プロファイルの悪化をもたらし、逆にMASLDの改善は脂質プロファイルの改善をもたらすことで、動脈硬化性疾患リスクを減少させる可能性が示唆されます。ガイドラインでは、「このようにMASLDと脂質異常症は相互に影響を及ぼし合う関係にあり、両疾患に対して適切な対応を行うことが重要である」とされています13)

Point
MASLDと脂質異常症は相互に影響を及ぼし合う関係にあり、両疾患に対する適切な対応が重要

高血圧

海外のメタアナリシスでは、MASLDが高血圧の新規発症リスクを約1.6倍増加させることが報告されています14)。一方、高血圧のある人では、そうでない人に比べてMASLDの発症率が高かったとする報告や、「高血圧はMASLDの線維化進展の独立した寄与因子」であることなども報告されています15,16)

Point
高血圧は線維化ステージ進展の独立した寄与因子である

4.かかりつけ医と消化器専門医によるハイリスク症例の絞り込み

ガイドラインでは、「肝硬変や肝癌はMASLD患者の予後に関わる重要なイベントであり、これらのイベントのリスクが高い肝線維化が進展した患者には消化器科へのコンサルテーションが望ましい」とされ17)、肝疾患高リスク症例の絞り込みについてご覧のフローチャートが示されています。

図3

かかりつけ医では、SLDが疑われた場合、画像検査による脂肪化診断および心代謝系危険因子(CMRF)の有無と飲酒量の評価を行い、MASLDを診断します。MASLDに対する一次リスク評価には、ALT、AST、血小板、年齢から算出可能なFIB-4 indexが有用とされ、中間リスクや高リスク群の場合に消化器科へのコンサルテーションが推奨されています。また、そのほかに消化器科へのコンサルテーションが望ましいケースとして、「血小板数20万/μL未満」、「AST値・ALT値が持続高値」の場合も挙げられます17)
なお、高リスクが否定された場合も、FIB-4 indexや血小板の再評価を1年ごとに行います。

Point
MASLDに対する一次リスク評価には、ALT、AST、血小板、年齢から算出可能なFIB-4 indexが有用
・FIB-4 indexリスク分類:
 高リスク:>2.67
 中間リスク:65歳以下 1.3~2.67
       66歳以上 2.0~2.67
・「血小板数<20万/μL」、「AST値・ALT値持続高値」も消化器科へのコンサルテーションが望ましい

図4

FIB-4 indexや血小板が中間リスクの場合、Mac-2結合蛋白質糖鎖修飾異性体(M2BPGi)、Ⅳ型コラーゲン・7S、オートタキシン等による二次リスク評価が有用とされています。enhanced liver fibrosis(ELF)テストは3種のマーカーを用いたスコアで、「海外ガイドラインではFIB-4 indexが1.3以上の症例に追加して使用することが推奨」されています18)

専門医では、紹介された症例に対し、超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィ(MRE)を用いて肝線維化進行度を評価します。従来は肝生検が診断のgold standardでしたが、非侵襲的診断法の進歩に伴い、現在では肝生検は必須とされず19)、ガイドラインでは「バイオマーカーやスコアリングシステム、加えてvibration-controlled transient elastography(VCTE)やtwo-dimensional shear wave elastography(2D-SWE)、MRエラストグラフィ(MRE)などの画像診断を組み合わせることで肝線維化を正確に分類し、必要な症例に肝生検を施行することが推奨される」とされています18)

なお、近年では疾患進展(肝臓関連イベントや死亡)リスクの高い群としてat-risk MASH(NAFLD activity score(NAS)≧4かつ線維化がF2以上を満たすMASLD)が治療の主要なターゲットと考えられており、「肝硬度に複数の因子を組み合わせたコンビネーションスコアは、MASLDにおけるリスク層別化や治療介入の判断に有用」とされています20)

Point
他の慢性疾患との鑑別が必要な場合を除き、肝生検は必須ではない
・MASLDの肝線維化や炎症は予後に関連し、血液学的バイオマーカーやスコアリングシステムを用いて、線維化進展、炎症、at-risk MASHの診断を行うことは有用であり、検査を行うことが推奨される

おわりに

2026年4月に刊行された『MASLD診療ガイドライン2026 改訂第3版』から、4つのトピックスを整理してご紹介しました。
日々の代謝性疾患の診療にぜひお役立てください。
 

  1. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p2【概念・定義】
  2. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p9【BQ1-3】
  3. Fujii H, Clin Gastroenterol Hepatol. 2023; 21(2): 370-379.
  4. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p7【BQ1-2】
  5. Wakabayashi SI, et al.: J Gastroenterol. 2024; 59(6): 494-503.
  6. Mantovani A, et al.: Gut. 2022; 71(4): 778-788.
  7. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p30【BQ3-1】
  8. Mantovani A, et al.: Gut. 2021; 70(5): 962-969.
  9. Kim KS, et al.: BMJ. 2024; 384: e076388.
  10. Matsubayashi Y, et al.: Diabetes Obes Metab. 2025; 27(4): 2035-2043.
  11. Fujii H, et al.: Hepatol Res. 2023; 53(11): 1059-1072.
  12. Lu FB, et al.: Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2018; 12(5): 491-502.
  13. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p34【BQ3-3】
  14. Ciardullo S, et al.: Eur J Gastroenterol Hepatol. 2022; 34(4): 365-371.
  15. Ma J, et al.: J Hepatol. 2017; 66(2): 390-397.
  16. Singh S, et al.: Clin Gastroenterol Hepatol. 2015; 13(4): 643-54.e1-9
  17. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p60【BQ4-2】
  18. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p50-51【CQ4-1】
  19. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p48【BQ4-1】
  20. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編:MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂, 2026. p59【FRQ4-1】

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P-Mark 作成年月:2026年6月